第123話 東部司令官
「真っ二つに斬り裂いてやるよ」
これが運命の分かれ道。エリザベート次第で俺は加勢する。迫る魔国の軍勢に対処するためにも、いち早い決断を期待したいところだ。
「まことか……?」
背を向けたまま返答がある。
どこまで俺は信用されていないのだろうな。勇者であることは既に聞いているだろうに。
「くどい。魔国に対抗する準備時間を与えてやる。早く俺に謝罪しろ……」
もう二度と上から命じることなく、俺の指示を聞いてくれるように。俺は明確に立場や力量差を示さねばならない。
「お前の兵たちは俺が守ってやる」
流石に返事には時間を要している。しかし、一瞬のあとエリザベートは謝罪を口にするのだった。
「妾では力不足だった。すまぬ……。貴殿の力を貸してくれないか?」
上出来だよ。やればできるじゃないか?
お前がプライドを捨てた代償はキチンと返してやるよ。俺が結果でもって、それを示してやる。
「いくぞ、プテラ! 飛竜めがけて突っ込んでいけぇぇ!」
急浮上するプテラ。加えて俺はアイテムボックスから竜殺しを取り出す。
飛竜よ、よく見ておけ。この大剣はお前を斬り刻むためだけにあるような武器なんだぜ?
「ぶった斬れろぉぉっ!!」
力の限りに竜殺しを振る。
かつてサンクティア侯爵家にいたというドラゴンスレイヤーと同じように、俺は飛竜を真っ二つにすべく大剣を振り切っていた。
その手応えは抜群だ。
何の抵抗もなく振り切れている。刀身の重さも相まって、プテラから転がり落ちそうになってしまうけれど、俺は結果を確信していた。
確実に仕留めた。少なくとも狙った頭部くらいは分断できたはず。真円を描いた切っ先は途中にあった障害物をものともせずに一周していたのだから。
「プテラ、上昇しろ!」
勢いのまま突っ込んでくる飛竜を回避。横目で確認するも、やはり頭部から首元にかけてが真っ二つになっていた。
よもや、その状態で生きている魔物がいるとは思えない。ゆっくりと落下する飛竜を俺は眺めていた。
眼下では巨大な竜種が落ちてくるものだから大騒ぎとなっている。けれど、流石にそこまでは責任を持てないし、火球を撃ち込まれるよりもずっとマシなはず。
俺はプテラを操り、再びエリザベートの元へと。とりあえず、俺は彼女の要求に応えることができたと思う。
「こんなもんでいいか?」
飛竜が落下するのまでは防ぎようがないからな。二次被害は俺の責任じゃない。
それはエリザベートも分かっていたようで、彼女は笑みを浮かべながら頭を上下させるだけだ。
「感服した。入り婿などと罵り申し訳ない。妾は弱者であり、其方こそが真の強者であった。兵たちを守ってくれたこと感謝している」
俺は再び謝罪を受けることに。
まあ、魔女は良くやったと思う。エリザベートには長槍という武器もあっただろうが、此度の飛竜はずっと宙に浮いていたのだ。彼女としては実力を出し切れなかったことだろう。
「構わない。それよりも次のお客さんだ。どうする?」
まだ終わったわけじゃない。これより数時間後、ここは再び戦場となる。魔国による侵攻に遭うのは明らかなのだ。
「それは妾に聞く話ではないな……」
ところが、エリザベートは無策であるらしい。
何の手立てもないってことかよ?
嘆息する俺であったが、エリザベートの返答は俺の予想と違ったようだ。
彼女は俺の誤解を解くように続けるのだった。
「東部司令官ルカ殿、ご指示を――」




