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第119話 イステリア皇国

 十日が過ぎ、俺はリィナをレザルの元騎士学校へと預け、プテラに乗ってイステリア皇国へと来ていた。次の標的になる確率はレザルが一番低かったからだ。


 前線基地としたレザルには既に二万という兵が集められ、防御面に不安はない。しかし、万が一のときリィナには戦闘回避の徹底を指示している。


 久しぶりの皇都ミラグレイス。俺は葬儀の前に皇王城へと招かれていた。


「おおルカ! 待っておったぞ。明日は盛大にフィオナを見送ろうじゃないか」


「父上、お久しぶりです。一緒に居られたら良かったのですが、魔国の動きが気になりまして」


「ああよい! フィオナもそれを望んでおるはず。世界の救済を第一に考えておったからの」


 どうやら俺とのわだかまりは少しも残ってない感じだ。フィオナが橋渡ししてくれたおかげで、関係は良好だと言える。


「それで皇王陛下、俺は一つ聞きたいことがあったのです」


「何でも言ってくれ。既にルカは我が息子。無理難題だとして応えてみせよう」


 有り難い話だ。けれど、俺の話は別に難しい内容を含んでいない。


「フィン・クロノリアという者をご存じありませんか? クロノリア伯爵家の嫡男であるはずなんですけど」


 伯爵家は上位貴族に入る。皇王陛下であれば、フィンの居場所について知っているかもしれない。


 視線を一周させる様子には焦りを覚えたけれど、陛下は頷いてから俺への返答を始めている。


「クロノリア伯爵家のフィンならば知っておるぞ」


 やはり皇国内の上位貴族。皇陛下は知っているみたいだ。

 割と行き詰まっていたフィンの捜索であったが、ようやく前世界線の呪縛から切り離されるのかもしれない。


 フィンの力さえあれば、アークライトを簡単に暗殺できるのだ。俺を十七歳まで生かそうとするアークライトの呪縛から俺は解放されるはずだ。


「教えてください。フィンという男はどこにいるのです?」


 女神様でさえも見失ったこと。世界は一体どこにフィンを隠したというのだろう。


「いや、もういないぞ……」


 予想とは異なる返答があった。


 もういないって何だ?

 俺にはフィンが持つ時空術士が必要だったというのに、皇国もまたフィンの足取りを見失ってしまったのか?


「どういうことです?」


「フィン・クロノリアはな、国際指名手配されておったのだ。シルヴェスタ王に詐欺を働いたらしい。まあそれで捕縛されたのだよ」


 やはりフィンは犯罪者として、新たな改変を受けていた。まあでも、それはシエラの予想通りだ。俺を巻き込んだ罪が改変に見逃されるはずもないのだと。


「それなら、シルヴェスタ王国に捕らわれているのですか?」


 もういないということは王国に引き渡されているということ。どうやら改変を受けた瞬間から、フィンは王国内にいたらしい。


「いや、そうではない……」


 ところが、話は難解な方向へと進んでいく。

 皇国にはもういないというのに、捕らえられたフィンは王国にもいないって、どうなっているんだ?


 このあと俺は衝撃の事実を聞かされることに。時空術士フィンの行方は考えもしない展開になっていた。


「既に処刑された――」


 嘘だろ? 時空術士だぞ?

 世界は何を考えているんだ?

 大戦に必須ともいえるジョブを排除してしまうなんて。


「本当ですか? 間違いないのでしょうか?」


「我が国の貴族だからな。処刑して、その首をシルヴェスタ王国に送った。謝罪としての金品と共にな」


 聞けば皇王陛下自ら、処刑を命じたらしい。それによりクロノリア伯爵家は廃爵を免れ、降格処分となったようだ。


「あの者がどうかしたのか?」


 既にこの問答に意味はなくなった。

 俺は時空術士を得て、アークライトを暗殺するつもりだったのだ。しかし、フィンが輪廻に還った今、その計画が遂げられることはない。


「実は稀有なジョブを持っていたのです。時空術士という英雄に匹敵するジョブを……」


「まことか? しかし、同盟国である王国の犯罪者を断罪処分以外にできなかった。申し訳ないが、彼が生き残る可能性は存在しなかったな」


「いえ、承知しております。会って話がしたかっただけなのです。女神様が会うようにと仰っていたので……」


 困ったことになった。シエラ曰くアークライトは直ぐにでも殺すべき存在だという。


 こんなことなら父上に断罪を願うべきだったな。勢いに任せて斬首刑を求めるべきであった。


(計画の練り直しが必要か……)


 アークライトは放っておけば二年後の十八歳まで生きる。

 彼は前世界線の産物であり、その存在理由は俺がリィナのためにあの呪文を使うことだった。更には俺の死期を十七歳に設定しているままだ。


 あと一年もリィナは生きられない。

 最後のとき、俺は俺の意志であの呪文を唱えたい。だが、十七歳までディヴィニタス・アルマを使用させないために、アークライトの存在は俺とリィナを引き離すことだろう。


「ルカは志半ばで失われてはならない。魔国を滅ぼし、必ずや世界を救って欲しい」


 それには異論などない。最早、世界の救済はリィナを救うことと同じくらい重要な使命になっていたんだ。


 俺は頭を悩ますしかない。

 フィンに使う予定だったシエラの神力。今も伸び悩んでいる錬金術士ミリアに使用すべきかどうかと……。

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