第107話 ルカの想い
父上と話をしたあと、俺はクリステラ大聖堂へと来ていた。
スノール前線基地が侵攻に遭った事実。ゲームによると次はレザルの街が狙われるはず。よって俺は女神たちの意見を聞きたく思って祈りを捧げている。
「おはよう、愛しき青の君……」
まあ、シエラだと思ったけど、やっぱこいつなんだな。
「お前はおはようしか知らんのか? もう夕暮だぞ?」
「仕方ないでしょう? 貴方が戦っていたとき、私は柄にもなく力を注ぎまくっていたのよ? こんなにも使徒を愛したのは初めて。疲れましたわ……」
そういや、俺は想定以上の強さを発揮していたな。
やっぱあの無双は三柱の女神たちが俺に力を注いでいたから実現したようだ。
「やっぱ悲運以外にも力を注げるんじゃないか。それで他の二柱は寝てんのか? よろしく言ってやってくれ……」
「必要ないわ。なぜなら私が一番多く愛を注いだのです。私こそが尊ばれるべきですの」
誰に聞いても同じ台詞が返ってきそうだ。とはいえ、感謝しかない。少しの被害もなく退けられたのは女神たちが尽力してくれたおかげだし。
「現状の世界線はどうなっている? やはり前倒しで進んでいるのか?」
「必然とそうなりますわね。キーとなる者たちが動き始めた。世界は記憶を辿るようにして、早巻きで動いております」
「じゃあさ、アークライトの処分はあれで良かったのか?」
ここまでは考えていた通りだ。しかし、イレギュラーであるアークライトの扱いが俺には分からない。
「いえ、死罪を求めるべきでしたわ。どうして温情をかけるのか分かりません。アレは貴方が望む未来の障害でしかありませんのよ?」
アークライトが生きている限り、俺はリィナを救えないのだ。彼女の死に目に居合わせることができないのだという。
「分かってるさ。だけど、急に死罪を求めたとして、受理されるはずがないだろ? あいつは第一王子なんだ。それこそ俺が疑われると思う」
「近い内に殺しなさい。これは使徒としての使命です。アレは魂の重さだけは超一流。何しろ三柱の女神が生み出したモノですから」
バランスを取るために配置されたというアークライト。シエラ曰く彼の魂は重かったらしい。
「アレはただの重り。北と南の重さから中央に生じた歪みを相殺するための。従って、かなり重い。その重さ故に世界への影響力を持ってしまう」
そういや以前も聞いたっけな。コーネルも北の配置だし、北と南が重くなるのは明らかだ。もし仮にフィンが使徒であれば、アークライトは必要なかったのかもしれない。
「あれ? 俺が知る並行世界にもアークライトがいたぞ? フィンが使徒だったけど?」
「その並行世界は常に変動しているはず。非常に弱く脆い世界みたいね。きっとエクシリア世界を模倣した世界。ルカが夢に見た時期も関係しているはずよ」
そういうことか。てか、エクシリア世界を模倣していて、常に変動しているとか現状はクソゲー化してそうだな。何しろ俺が無双しているわけだし。
「そういやフィンについての続報はないのか?」
「何も分かっていない。ニルスを締め上げたけれど、あの子は完全に見失っている。世界の改変は女神の監視範囲外だから仕方ないのだけど」
どうやらニルス様でも見失っているようだ。
確実に犯罪者となったフィン。類い希なジョブを持つ彼はどこで何をしているのやら。
「ま、とりあえずは並行世界の記憶通りに動く。構わないな?」
「私はルカの決定に従う。身も心もルカのものよ? 愛してるわ……」
「やめろ。俺を殺すつもりだったくせに……」
「違うわ。愛の方向性よ。殺したいほど愛しているの。死んでくれる?」
「怖えよ。頼むからお前は大人しくしてくれ……」
ま、分からないでもない。手に入らないならば、殺してしまいたいって気持ちも。
だけど、逆に俺は思うんだ。
手に入らないならば、死んでしまいたいって──。




