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第105話 無双

「やっぱ俺は女神に愛されてるな!」


 声を張ると、気分がスカッとする。アークライトに嵌められたと知ったときとは比べものにならない。


 周囲は一層暗くなっていた。

 恐らくもう夕暮前だろう。しかし、魔国の雑兵であるゴブリンたちは極端に数を減らしており、次第に向かって来る気力を失っている感じだ。


「てめぇら、来ないのか?」


 大剣を肩に乗せて聞いてみる。通じているのか分からなかったけれど、ゴブリンたちは遠巻きに俺を見ているだけだった。


 圧勝確定。俺がそう思った矢先のこと。


「うふふ! あらやだ……。兵が少ないかと思えば、強者を配置していたのですね? 困りますわぁん。この雑魚共は魔王様より預かったものですのに……」


 戦闘が始まってから俺は初めて声を聞く。

 それは確実に魔将軍だ。この雨の原因である水竜魔リヴァイアに他ならない。


「よう、火照る身体を冷やしてくれて助かるぜ……」


「貴方、お名前は? ワタシは六魔将が一人リヴァイアですのよ。尊い強さをお持ちでキュンキュンしちゃいますわぁん。思わず惚れてしまいそうですわ、ぐふふふ……」


 リヴァイアは俺を格下と見ているのか竜化していない。また完全な男にしか見えないが、お姉言葉を操っている。


「男に好かれても嬉しくない。それに女も間に合っている」


「いやぁぁん! でも確かに強者は独り占めできますわねぇ? ワタシも強者でありますから、貴方を手に入れようと思いますわ。手足をもいで、その身体を食らい尽くしたい。骨の一本までしゃぶりつくしたいですわん!」


「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ? 戦うんだろ?」


 会話しながら、俺は戦いの準備を始める。

 まずはマルシェの加護である一騎当千の鼓舞を勇者に使う。加護についてはジョブチェンジの必要がない。よって、あとは烈火無双を使用するだけだ。


「あふーん、勇ましき貴方に慈悲を。ワタシはこのまま戦ってあげますわ。竜化をして爪の先すら消し去っては楽しめませんもの。ぐふふふふぅ……」


「言ってろ……。こねぇなら俺からいくぞ!!」


 大洪水を起こされては厄介だ。油断している間に動けなくしてやるよ。

 俺は大剣を握り締め、リヴァイアを斬り裂いてやろうと駆け出している。


「烈火無双ォォオオオ!!」


 瞬時に大剣が炎を帯びた。

 明らかに属性的不利はあったけれど、使わないよりは絶対にマシだろうと。


「セラフィックレイ!!」


 接近するまでの時間稼ぎとばかりにセラフィックレイを撃ち放つ。防御されたとして、そのあとで俺は大剣にて追撃するだけだ。


「いけぇぇえええ!」


 果敢に突っ込んで行く。今にも俺はリヴァイアに斬りかかる寸前だった。

 だが、しかし……。


「ごふっ……」


 どうしてかセラフィックレイをリヴァイアは防御しきれなかった。


 光の矢はリヴァイアの胸を貫き、地平線の先まで届くかの勢いだ。

 淡い輝きを発したそれは雨靄を突き抜けるかの如く、何の抵抗もなくリヴァイアの身体に風穴を開けていた。


「誠の……強者であったのね……」


 俺は大剣を振り上げたまま、リヴァイアへと接触している。

 思わず大丈夫かと声をかけそうになるほど、リヴァイアの生命力が失われていた。


 静かに目を瞑るリヴァイア。断末魔の雄叫びを上げることも許されず、彼はこの世を去ってしまったらしい。


「嘘だろ……?」


 正直に余力がありすぎていた。二万以上の大軍と魔将軍を相手にしたというのに。


 まるで俺たちの軍勢が二万以上あり、リヴァイア側が五百と考えるよりも簡単な結末に終わっている。


 どうにも信じられないが、やはり俺はレベル以上の強さがあるはずだ。あの駄女神たちによって、我こそが一番という愛を注ぎ込まれた結果なのだろう。


「馬鹿女神共が……。圧勝だと、語り継がれる伝説にならねぇじゃん」


 魔将軍リヴァイアが討たれたからか、ゴブリンたちが敗走を始めた。


 まあでも、追いかける気にもならない。俺は肩透かしに終わった魔将軍戦で緊張の糸が切れてしまったのだし。


『レベル71になりました』

『【エレメントバスター】を習得しました』


 うん、もう負ける気がしない。

 レベル50から何も覚えなかったのだが、それは想定内のこと。強スキルを覚えるレベル70までが苦行であり、俺はその期間を一戦にてすっ飛ばしてしまったらしい。


「やっぱ無双ってやつだよな?」


 属性剣技エレメントバスターを覚えた今となっては残りの魔将軍も敵じゃない。

 こうなってくると世界の救済よりも、リィナやアークライトの方が問題だと思えてくる。


「ま、楽勝であるのに文句はない」


 俺はクルリと砦を振り返った。


 もう敵はいないのだ。いたとして序盤である現状で俺を悩ます敵がいるとは思えない。


 徐に歩き始めるや、砦から大きな声が俺を迎えてくれる。


『ルカ殿下、バンザイ!』

『ルカ殿下に女神様の加護あり!』


 思い思いに感情を吐き出している感じだ。


 まあでも、そうか。

 俺的には楽勝だったけど、彼らからすれば九死に一生を得たのと同義だ。俺が無双した事実よりも、生を残した現実がより大きかったのだろう。


「ルカ殿下、お見それしました! よもや、お一人で全滅させてしまうなど……」


 副官のリーズベルが駆け寄って来た。

 それは俺も同じ意見だ。ここまで圧勝してしまうのなら、もう魔王だって倒せそうだし。


「いや、全員の戦果として陛下には報告する」


「我々は何もしておりませんよ!?」


「構わない。よく逃げることなく残ってくれた。俺は感謝を形にしたいだけだ」


 前線基地に誰もいなければ、途方に暮れただろうからな。残ってくれた兵たちにはそれなりの報酬が必要となる。


「ありがとうございます。して、王陛下にはどう報告するのです? アークライト殿下の思惑は明らかですけれど……」


 まあ、それな。俺は明確に宣戦布告されたんだ。普通に対処していては面白くないよな。


「俺が瀕死の状態とか噂を流すか?」


「我らとしては殿下の偉業を曇らせたくありませんけれど……」


 俺としては問題ないのだが、兵たちは将の評判を気にするのかね。


 ま、確かに難癖つけられるのは癪だ。つまるところ圧倒的な戦果を報告し、ありのままを伝えるべきかもしれん。


「リヴァイアの亡骸を王城に送りつけてやるか。兄上は罰を受ける必要がある」


「失礼ながら、私どもも同じ意見です」


 となると、俺が直々に向かうべきだろうな。

 しばらく侵攻はないだろうし、アークライトの横暴を許すわけにはならない。


 おいたが過ぎる兄上を懲らしめてやるか。

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