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第104話 女神に愛されて

「全て叩き斬るだけだが?」


「いや、あの影であれば二万以上おります! 砦に入ってください!」


「必要ない。俺を信じられないのであれば、早々にスノールを発て。二万だろうが五万だろうが俺の敵ではない!」


 正直にキツいけどな。もう、ここまで来たらやるしかない。

 幸いにも俺は回復魔法まで持っている。三つのジョブを切り替えながら戦えば、何とかなるはずだ。


「走れ! 等間隔で弓を射る準備だ! 砦の扉は閉じておけよ? 少しの心配も必要ない!」


 俺の声に兵たちが戸惑いながらも走って行く。元より彼らではどうしようもない。無駄に兵を失うよりも、俺が最前線にて戦うだけだぜ。


 降りしきる雨の中、魔国の軍勢がその姿を露わにしていく。

 急な雨の原因。それはきっとリヴァイアのせいだ。ゲームでもリヴァイアが現れた折には雨のエフェクトが入っていた。


 兵には伝えなかったけれど、まず確実にリヴァイアが侵攻軍の指揮を執っていることだろう。


「やっぱ雑兵はゴブリンだけか」


 できる限り魔法は温存したい。

 ゴブリンは純粋な剣術だけで倒すべきだ。予想通りにリヴァイアがそこにいるのならば。


「かかってこい!」


 相対するや、俺は斬りかかっていく。不思議と漲る力を全開にして。


「うおぉおおおっ!!」


 どうしてか大剣が軽い。サンクティア侯爵家で振ったときよりも随分と。

 水平に振った俺の剣は、ゴブリン共を一度に十体くらいは斬り裂いていたことだろう。


 流石は剣聖が使ったという業物。斬った感触すらなく、まるで綿雲でも斬っているかのようだった。


「いける!」


 俺は大剣を振り続けた。

 一振り十体という計算なら、二千回振ればゲームクリア。そこまで上手くは運ばないだろうけど、終わりが見えるってのはありがたい。


「雑魚が群がるんじゃねぇ!」


 何度も剣を振る。今のところは何の問題もない。

 片手で振り切れるのだ。これなら本当に俺は、この危機を乗り越えられるのかもしれない。


「クソッ!」


 不意に鉄矢が俺の腕をかすめる。どうやらゴブリン共は遠距離攻撃も用意しているらしい。


「ブレイブシールド!」


 魔力は温存したいところだけど仕方がない。延々と鉄矢を射られてしまえば、流石に俺の体力が先に尽きてしまう。


「チッ……、毒矢かよ。浄化!」


 ご丁寧に毒が塗ってあったようだ。しかし、俺は瞬時に神職者へとジョブチェンジをし、浄化を唱えて事なきを得た。


 あの司教様に感謝だ。リィナがいない戦場において、俺は一人で全てをこなすことができる。彼の運命を背負ったおかげで、無双できるってものだ。


「ゴブリン共、うぜえんだよォォッ!!」


 ブレイブシールドを使用しつつ、俺は戦闘を続けた。


 どうしてだろう?

 二万以上の敵が押し寄せていたというのに、俺はこんな今も余裕を感じている。果てしない戦いが予想されたというのに、なぜか笑みさえ浮かべていたんだ。


「俺って戦闘狂だったっけな?」


 何だか笑ってしまう。

 ゲームとは違ってやり直しができないというのに、勝利を疑わない自分自身が何だかおかしい。


 何の抵抗もできずに蹂躙されていくゴブリンがゲーム感を醸し出しており、緊張感よりも無双している事実が俺を高揚させた。


 何時間が経過しただろうか。

 降りしきる雨は体温を奪うよりも、血気盛んに剣を振る俺をクールダウンしてくれるかのようだ。


 緩い足場であったけれど、今の俺は背丈よりも長い大剣を振りきったとして、その両足を大地に貼り付けたままである。


「ひょっとして俺は……強いのか?」


 ゲームでは絶対に不可能だ。

 前線基地に攻め入られ、雑兵が五百しかいない。加えて英雄を一人しか配置していないなんて即リセットという状況なんだ。


 だというのに、余裕がある。その理由はレベル以上の強さを発揮している自分自身にあると思う。


「原初三女神の加護……」


 その原因は加護にあるような気がする。

 通常は一柱の加護があるだけだが、俺には原初の三女神全員の加護があった。

 もしも彼女たちが仕事をしたのなら、俺には考えられないほどの力が注がれているんじゃないのか?


「駄女神ばっかだが助かる!」


 きっと俺が考える通りだ。

 この尋常じゃない強さ。ゲームでいうならばレベル100どころか、200くらいに達していそう。


 この大軍を相手に互角以上に渡り合う俺は想像よりもずっと強いのだろう。


 笑っちまうよな。今頃はアークライトが青ざめているに違いない。

 俺を西部司令官に任命したところまでは奴の狙い通り。しかし、俺が生き延びたあとで、五百しか兵を残していなかった事実がバレたとすれば……。


「ま、俺の暗殺未遂だと考えられるだろうな……」


 弟を死地に追いやった事実は少なからず判明するだろう。

 恐らく詳細がバレることはアークライトも承知の上だろうが、事を成した後でなら王子殿下はアークライトだけだ。一人しかいない王子の立場は安泰だと考えていたことだろう。


「ここは生き残って、絶対に弁明を聞きたいところだな?」


 俄然、やる気が出た。加えて負けそうな気配などない。俺は逆にアークライトが窮地に立つ姿を想像してはほくそ笑んでいる。


「やっぱ俺は女神に愛されてるな!!」

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