ーー第8話 「私の力で出来ること」ーー
ーーお兄ちゃんと私は『憤怒』との戦いの後、
いつも通りの日常を過ごしていく。……表面上は何も変わらなかった、けどーー。
「……お兄ちゃん、大丈夫?」
「……リリー……? どうしたんだい……?」
「ううん……
なんか、お兄ちゃん……辛そうだから」
「……っ!
……大丈夫。僕は、元気だよ」
……お兄ちゃんはそんな風に言うけれど、
私には『嘘』だってわかるんだよ。ーーだって、大好きなお兄ちゃんのことだもん。
お兄ちゃんが辛そうな理由……
おそらく原因は、埋め込まれた『憤怒』だ。
感情を抑えようとして、苦しんでいるんじゃないかな……。
でも、お兄ちゃんと私の未来のためには必要なこと。
……だから、それはどうにもできないんだ。
”ーーそのかわり、私が支える!
お兄ちゃんが苦しんでいる時は、私が代わりに頑張るっ!”
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ーーその後、私は色々と挑戦をした。
一人で買い物に行ったり、ご飯を作ったり……
……今までお兄ちゃんとしていたことを『一人』でやってみたんだ。
…………でも、なかなか上手くはいかなかった。
……お買い物では、
人間相手に湧いてくる怯えや怒りの感情を抑えるのに必死で、何も買えなかった。
……ご飯を作ることは、
お買い物が上手くできなかったから、そもそも材料がない。
それでも……森に行ければ何とかなったけれど、
お兄ちゃんは危険だからって一人では行かせてくれなかった。
…………結局最後には、お兄ちゃんに手伝ってもらうことになる。
お兄ちゃんは微笑んで慰めてくれる……
”リリーの気持ちだけで嬉しいよ”って言いながら。
……でも私は……お兄ちゃんを、支えたいんだっ……。
”なんで私はこんなにも、『一人』で何もできないんだろうーー”
「ーーそれはね、あなたに『力』がないから」
「……!
色欲さん……? いたんだ」
「…………いつでもいるわよ。ちゃんとあなたの中にね」
「ごめんね。
最近、あんまり話しかけてこなかったから……つい」
「……ふぅ。まあ、いいわ」
「それよりも今回のことで、よく分かったでしょう。
……力がないと、この世界では何もできないの」
そして色欲さんは、
今の私にとって痛いところを突き付けてくる。
「力があれば、あなたは『一人』で何でも出来るの」
「……あなたの大切な人を支えることだって出来るのよ」
「……っ。
それは……そう、だね」
「大切な人を支えるためには……
……まずはあなたが一人で生きられないとダメなの」
「……っ!」
「そして一人で生きるためには、力がいる」
「ーー圧倒的な力が。
何もかもを手に入れられる『力』がね」
…………お兄ちゃんを支えるための、力…………。
”力が、欲しい。
……お兄ちゃんと一緒に生きていくための『圧倒的な力』がーー”
「ーーふふっ。次は『強欲』ね」
「さて……後は待ちましょう。
……次の大罪が現れるのを」
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ーー私の中に『強欲』が生まれて以降、
私は常に何か満たされない渇きを感じていて、ムカムカすることが増えたんだ。
「……リリー、最近また何かあったかい?」
「……!
……お兄ちゃん、どうしてっ……私、おかしい?」
「……っ。
ううん、リリー自身が大丈夫なら良いんだ」
「ただ……少し、
笑顔が減っちゃったかな……って、思っただけだから」
「…………っ。
……ごめん、お兄ちゃん。……お兄ちゃんも大変なのに」
「…………!
気にしないで。僕は大丈夫だから」
「リリーが元気でいてくれるなら、それだけで良いんだ」
「……お兄、ちゃん……」
…………こんな風にお兄ちゃんと、
微妙な空気になる時も……多くなっちゃった。
でも頑張るんだっ……! ……これは、必要なことだから。
……お兄ちゃんも、分かってくれる……はずだから。




