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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
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ーー第5話 「お兄ちゃんへの贈り物」ーー

 お兄ちゃんと過ごす日々はとても穏やかだった。


 二人でお買い物に行って、二人でご飯を作って、二人で毎日過ごす。

……本当に幸せな時間が流れていく。



 でも、私の中に生まれた『怒り』は消えなかった。


 ーーお兄ちゃんも私の異変に気付いたみたい。



「……リリー、何かあった?」


「えっ……お兄ちゃん? 急にどうしたの?」


「いや、僕の勘違いだったらいいんだけど……

 ……リリーが何か変わった気がして」


「……私、が……?」


「……うん。

 いつも街を歩くときは怯えていたのに、今は平気そうだし……」


「街の人に対しても、

 今までの怯える感じじゃなくて……時々、怒ってるみたいに冷たい目で見てる」


「…………っ! ……ごめんなさい」


「……! 

 大丈夫だよ、ただ……心配になって」


「…………ありがとう、お兄ちゃん。ごめんね、心配かけちゃって」


「ううん、良いんだ。

 ……でも、リリーのために僕ができることがあったら言って欲しい」


「リリーには笑顔でいて欲しいから。ーー君の笑顔に僕も救われているから」


「……っ! お兄ちゃんっ!」



 お兄ちゃんの言葉に、私は嬉しくなって抱き着いてしまった。

やっぱりお兄ちゃんは優しいし、暖かいな。……大好きだよ、お兄ちゃん。



「……お兄ちゃん……」


「なんだい、リリー」


「今一つだけ思いついたお願いがあるの」


「うん、話してみて」


「……久しぶりに、お兄ちゃんとあの森に行きたい」


「……だめ、かな」


「……! 駄目じゃないよ。

 僕も、リリーと一緒にあの場所でのんびりしたいな」


「……っ! お兄ちゃんっっ!」


「ふふっ! 

 良かった、少しでも元気になってくれて」


「なら、さっそく明日二人で森へ行こうか」


「……うんっ!」



 ーーーーそうして、あなたと救世主はあの森へ行く。

そこで待っている『存在』を知らずに……。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そしてお願いをした次の日、お兄ちゃんと私はあの森に来ていた。

……私がお兄ちゃんをこの森へ誘ったのには、理由があったんだ。


 それは帽子のお返しをしたかったから。

私もお兄ちゃんに何か贈り物をしたかったから。



 ……悩んだ私が考え付いた贈り物。それは、花冠だった。

他の人じゃなくて、私が作った帽子のようなものをあげたかったんだ。


 ”私は頑張った。

でも最後にはお兄ちゃんに手伝ってもらっちゃった……それでもできた!”



「……っ! できたっ!」


「ふふっ! 

 頑張ったね、リリー」


「……うんっ! ……お兄ちゃん」


「……? リリー?」


「はいっ! これあげる!

 ……帽子をくれたお兄ちゃんへのお返し! 私からの贈り物だよっ!」


「…………っ! ……リリーっ!」


「わわっ! お兄ちゃん……?」



 ”お兄ちゃんが急に私を抱きしめてくれた。嬉しい!”

……でもお兄ちゃんは、泣いていた。



「……お兄ちゃん……? 大丈夫?」


「……うん、大丈夫だよ……ごめんね」


「…………

 一つお願いをしていいかい?」


「うん! 何でも言って、お兄ちゃん!」


「ありがとう。

 ……じゃあ、その花冠をリリーの手で僕にかぶせて欲しいな」


「……! ……うん、いいよっ!」



 そして花冠をお兄ちゃんの頭にかぶせる。

……お兄ちゃんは変わらず泣いてた。でもそれは、嬉し涙だったんだ。


 ーーだって、お兄ちゃんは微笑みながら泣いていたから。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーお兄ちゃんに贈り物をした直後、激しい雷が鳴った。


 その雷は一度ではなく、何度も何度も鳴り続け、

そしてお兄ちゃんと私の近くに落ちた。……森が、燃え始めた。



 明らかに異常だった。

この森の上空にだけ、雷雲ができていたから。


 ……これは自然のものじゃない。私は直感的にそう思った。


 同じことを思っていたのか、

とっさに握ったお兄ちゃんの手も私と同じように震えていた。



「……リリー、街に……僕たちの家に帰っててくれ」


「……! ……お兄ちゃん、は……?」


「……大丈夫。

 少し様子を見て、すぐに僕も帰るよ」


「……お兄ちゃん……」


「大丈夫だよ、リリー。

 ……僕を信じて待っていて」


「……っ。……うん」



 そして、お兄ちゃんと私は真逆の方向へ走る。

お兄ちゃんは森の奥へ、私は街の方へ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー雷が鳴り響き、激しい風も吹き荒れる中、私は森の出口へ辿り着いた。

その瞬間、ひときわ大きな雷が落ちた。……森の奥に落ちたんだ。


 私は不安になる。その時、あの声が聞こえる。


 ーー色欲さんの、声が。



「……行かなくていいの? また死んじゃうわよ」



 色欲さんは言った。淡々と何の感情も込めずに。



 ”ーーっ”

私はその言葉を無視できなかった。


 体を翻し、森の奥へと……お兄ちゃんのもとへと走った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーそして、森の奥で新たな悪夢を見る。


 お兄ちゃんは雷に焼かれていた。

私が贈った花冠も、焼け焦げて見る影もなくなっていた。



「……っ

 ……ゃ……だっ……」


「……い、やっ……」


「ーーーーいやぁぁぁぁっっっ」



 ーーまた私は叫び、繰り返す。


 ……涙で滲む視界で私は見た。

黒く変色したお兄ちゃんの前に立つ、男の人を。


 ”両手に剣を持ち、頭から角が生えた男の魔族”の姿をーー確かに見たんだ。

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