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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<後編>~約束が灯す明日~
45/51

ーー第45話 「忘れ去られた赤と黒」ーー

 ーーーー灰は黒に染まった。


  黒い光の中で絶叫は響き渡る。



「……ぅ…………ぁ……」


「ぐぅぁぁっっっーーーーーーーーー!!!!」



 目の前に『過去の景色』が映っている。

月明りの下で赤い血に濡れた大剣を握る『お兄ちゃん』が映っている。


 冷たい瞳をしているお兄ちゃん。


 その姿が滲んでいく。『傲慢の涙』で景色は滲む。

『瞳の奥で燃え上がる黒い炎』が私を包む光を揺らがせていく。


 ……揺らぐ黒の中で『映る景色』は瞬く間に変わっていった。


  ……暗い夜の森を『漆黒の光』が一瞬で塗りつぶす。


 黒く染まった光の中から『傲慢』は剣を生み出した。

生み出した『大剣』を強く握り、お兄ちゃんに切りかかる。


 『傲慢』に続くように森を包む漆黒から『光の剣』は生まれる。

……生み出され続ける『無数の黒い細剣』がお兄ちゃんに降り注いでいく。



「あぁぁっっっーーーーーーー!!!!」



 揺らいでいる光の中で、

悲痛な嘆きと剣が交わる激しい戦いの音が響き渡る。


 それでも私は見続ける。

目を逸らすことはしない。……決意の炎を燃やして『怯える身体』を強く抱く。



 ……滲んだ黒い景色の中でも『私の瞳』は逃さない。

暗闇に慣れた瞳の中で、お兄ちゃんは激しい攻撃を受け続けている。


 反撃する間もない猛攻に徐々に押され、後ずさっていく。

……しかし傷つく身体は『白い光』に癒されて倒れることはない。


 そうして後ずさるお兄ちゃんが辿り着いたのは……『あの洞窟』だった。


  私とお兄ちゃんが出会った『あの暗い洞窟』だったんだーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー洞窟の前には『人』がいた。


 角が生えていない『ただの人』が、

たくさんの人が……黒い景色の中で怯え震えている。


 激しい猛攻に押され、洞窟の入り口へと後ずさっていくお兄ちゃん。


 ……やがてお兄ちゃんもその人たちの存在に気付く。

気付いて、驚き……反射的に背中に感じる『命の息吹』を守ろうとする。


 もはや『傲慢』は暴走していたから。

……『黒い光の剣』は存在するもの全てを破壊しようとしていたから。



 …………でも、遅かったんだ。


 命を守ろうと後ろを振り向いたお兄ちゃんが固まる。


 私の瞳は映していた。

固まったお兄ちゃんの背中と、その先に見える『赤黒い地獄』を映し出していた。


  洞窟の前に咲く『白い花々』が返り血を浴びている。

地獄を彩る『深紅に染まった美しい花』に囲まれ、命の灯は散っていく。


 ……震えてうずくまる人たちに『黒い剣』が刺さっていく。


 剣に刺され倒れた人から『綺麗な赤い血』が広がっていく。

……倒れた人の『瞳』は黒くなる。赤が失われた『身体』には黒しか残らない。


 『死』という、目を背けたくなる『醜い黒』しか残らない。



 ーー『地獄』を前にして固まっていた『お兄ちゃんの背中』が震え始める。


 震えが止まらない背中から掠れた声が聞こえた。



「……角が生えてない……?」


「…………にん、げん…………?」



 その呟き声は目の前に広がる『赤い血だまり』に溶けていく……。

  小さな声が溶け切った時、再び『光の剣』がお兄ちゃんを襲った。



「アハハッッッーーーーーーーーー!!!!

  死ねっ! 死ねっ!! 死んでしまえっっ!!!」



 震えるお兄ちゃんは反応できない。

森を包む漆黒の光から『剣』は現れ、放たれ続ける。



「消えろっ!! 消えろっっ!!!

  我の前から消えてなくなれっっ!!!」



 刺さっていく『無数の黒い剣』。

その重さに耐えられず『お兄ちゃん』は地に伏せる。……磔にされる。



「お前だけは必ず殺してやるっっ!!!」



 ……『傲慢』の怨嗟によって『磔』にされたお兄ちゃん。


 地に伏したお兄ちゃんはそれでも『右手』を伸ばしている。

何かを掴もうと手の平を広げている。……しかし『剣』が刺さり、動かせない。



 何も掴めず、動きを封じられた『右手』。


  『私の瞳』はその先を追ってしまう。

お兄ちゃんが掴もうとしたものが気になってしまう。


 ……映る景色の中に『その答え』はあった。



   ーー『私』が、答えだった。




 ーー右手の先には『私』がいた。

赤い血だまりの先に『黒い瞳をした私』が立っていた。


 その瞳は光を失い、底が見えない。


 ”人形……”

思わず、そう呟いていた。


 呆然と立ち尽くす私の足元に向けて『血』が伝っていく。


 池のように広がった血だまりから瑞々しい『赤』が流れていく。

……地面を伝っていく。……黒く濁りながら『洞窟の奥』に流れ落ちていく。



 落ちる『赤黒い血』が足元に届いたとき……


  ……黒い瞳は光を取り戻す。

   『見ている私』と同じ姿をした存在が震えていく。



 そして現実を映す瞳は揺らぎ、叫びが響いた。

全てを拒絶するような震える叫びと共に『過去の景色』は一瞬で黒くなる。


 周りを包む色が『黒』だけになっていく。


 ”違う、『真っ黒』に染まるだけじゃない”

染まる色が滲んでいく。……滲んで薄くなり『灰色』へと戻っていった。


 ーー私を包む光が『黒』から『灰』へと戻っていったーー。

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