ーー第43話 「終わったものと進むもの」ーー
ーーーー『白く淡い光』は止まらない。
近づいてくる光を前にして、揺らぐ『彼』は叫んでいる。
「……僕に似ている、お前なんかっっ……」
「……嫌い、なんだっ!!
大嫌いなんだっっ!!!」
「だからその目をやめろっ!!
そんな目で僕を見るなっっ!!!」
「みるなっっーーーー!!!」
揺らいで滲む『彼の瞳』には映り続ける。
……拒絶の叫びと共に激しく降り注ぎ続ける『剣の雨』にも負けず、
ただひたすらに『大切なあの子』のもとへと進み続ける『救世主の姿』が。
……大切な存在を救おうとする『真っ直ぐな瞳』が。
……大切な存在を心配そうに見つめる『救世主の瞳』が。
静かに降り続く雨に滲んだ『視界の先』で、
向かってくる瞳に宿る『確かな光』を見てしまっていた。
「やめ、ろっ……」
崩れ落ち、両膝を地面についた『彼』が呟く。
激しい叫びの後とは思えないほどの小さな声で呟く。
「やめて、くれっ……」
……黒い炎が燃え続ける『涙に滲んだ瞳の奥』を大きく揺らがせながら。
……静かな雨に打たれ、冷え切ったように震え続ける自身の身体を抱きながら。
「……その目はっ……」
「その、瞳は……だめなんだっ……」
……小さな『拒絶の呟き』は止まらない。
「……っ……
……もう、いないんだっ……!」
「『弱い僕』もっ……!
……心配してくれた『色欲』、もっ……!!」
「なにもかも、終わったんだっっ……!!!」
泣きながら、唇をかみしめながら、
手のひらを強く握りしめながら……彼は下を向く。
……終わったものを拒絶するように。
終わってしまった存在を『瞳』から消すように……
下を向いて、『救世主という光』を否定した。
「……だからっ……」
「もう……きえて、くれっ……!」
否定の願いが世界に響いた時、
『救世主』は『黒い炎の渦』に呑み込まれたーー。
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ーー『色欲の瞳』には映る。
激しくうねる『黒い炎の渦』が。
突然現れた炎の渦に構うことなく降り続ける『黒い剣の雨』が。
……どれだけ揺らいでも決して消えることのない『黒い怨念』が見えていた。
黒い怨念は燃え続ける。
その形を変えながら、消えることなく『救世主』を否定する。
天は真っ黒に染まり『怒りの雷』が落ちてくる。
雷だけでなく、闇を纏った黒い『断罪の大剣』も落ちていく。
……『彼の怨念』に呼応したかのように世界が変わっていく。
……激しい拒絶が『救世主』だけでなく、世界の全てを壊していく。
その光景はまるで……『世界の終わり』のようだったーーーー。
ーーーー世界が終わっていく。
映りゆく『終わりの景色』を前にしても『私』は冷静に予想していた。
”救世主が終わることはない”
それは揺ぎ無い確信だった。
”過去の救世主を何度も見てきたから……分かってしまう”
『癒しの力』を完全に凌駕することは出来ない。
私の力で、『色欲の力』で止めることでしか『白い光』は消せない。
……”他の『大罪の力』ではだめなの”
たとえ『彼』でも……『傲慢の力』でも、
傷を与えることしかできない戦い方では『救世主』を殺せない。
……私が思考する間にも『瞳に映る景色』は変わっていく。
『彼の攻撃』は終わることなく、次第に激しくなっていく。
それでも……
私の予想した通り、終わりゆく世界の中で『白い癒しの光』は消えていなかった。
”やっぱり、ね……”
分かっていた事実を目にしながら、私は変わらず耐え続ける。
深い青を帯びた『暗い闇の底』で震える体を強く抱きしめながら、耐え続ける。
”もう私は決めたの。
『彼』と『あの子』……今度こそ二人とも救うって”
決意を胸に抱き、世界をじっと見続ける。
激しい攻撃を受け続けても、
白い光に包まれた『救世主』は止まらない。
……愛しいあの子の隣に行くために、進み続ける。
あの子の身体を奪った『彼の耳』にも近づいてくる足音は聞こえている。
だからこそ拒絶する攻撃は激しくなっていく。……それでも足音は向かってくる。
そうして止まることのない力強い足音に耐えかねた『彼』は呟く。
「……もう、止まってくれっ……」
耳を塞ぎうずくまりながら、小さく呟いた。
……その弱弱しい嘆きが地面に落ちた時、
全てを拒絶する彼を『闇』が包んでいく。
ーー『怠惰の土の壁』が泣き崩れた彼を守るように覆っていくーー。




