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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<後編>~約束が灯す明日~
40/51

ーー第40話 「決意の炎と黒の揺らぎ」ーー

 ーーーー『色欲』は二人を見つめている。


 深い青を帯びた『暗い闇の底』から、見つめ続ける。



 ……「死ね」。


 そう冷たく呟く『彼』。

しかし……何も起こらない。


 『救世主』は変わらず迫ってくる。

『あの子との約束』を胸に抱き、落ちてくる。


 薄く笑っていた『彼』が一瞬固まった。


 そして目を見開いていく。

信じられないというように、驚愕の表情に変わっていく。



 驚く『彼』。


  ……叫びながら迫る『救世主』。



 瞳に残り続ける白い光を前に『彼』は嘆くーー。



「……っ

  ……な、ぜだ……」


「なぜだっ!!

  なぜなんだっ!! 『色欲』っーーーー!!!」



 ーー『嘆きの叫び』が世界を染める。


    黒く、染めていく。……『時を刻む針』が再び戻っていくーー。




 時が戻る中で『色欲』を包む闇は変わらない。

変わらずに、深い青を帯びた『暗い闇の底』から世界を見続ける。


 だから……彼女の耳にも『彼の嘆き』は届いている。


 ……しかし、彼女の呟きは『彼』には届かない。

唇をかみしめるように、拳を握り締めるように……ただ耐える。


 耐えながらも……届かないと分かっていても、思わず呟いてしまう。



 ”ごめん、なさい……”


 ”でも……今はだめなの……”


 ”あの子の旅が終わるまでは駄目……。

あなたに私の力を使わせるわけには……いかないの”



 闇の中で色欲は苦しそうに呟く。



 ”本当に、ごめんなさい”


 ”もうすぐだから。

最後だけは必ず、あなたのために……”



 静かに燃える『決意の炎』を瞳の奥に宿しながら、

『大切な存在』を……『大切な二人』を、今度はどちらも救うために耐え続ける。



 ーー耐える彼女に構うことなく、世界の時は戻っていくーー



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー真っ黒な世界から色が戻っていく。

前と同じように世界の輪郭は形を取り戻していく。


 再び『雨降る荒野』に立つ二人。


 しかし……。



「……なぜ、なんだっ……」


「色欲っ……

     ……どう、してっ……」



 ……『彼』は崩れ落ち、両膝を地面について茫然としていた。

白く淡い光に包まれた『救世主』は荒々しい光を大剣で薙ぎ払い、前を見る。


 ……静かな雨の中、茫然としている『あの子の姿』を見る。


 そして『あの子』を心配し、近づこうと走り出す。



 自身に向かってくる救世主の姿が、茫然とする『彼の瞳の中』に映った。


 その瞬間ーー



「うぁあぁぁぁぁっぁぁーーーーーー!!!」



 ーー『彼』は壊れたように叫んだーーーー。




 ーーーー『色欲』のもとにも『彼の叫び』は届く。


 深い青を帯びた闇の中から『色欲』が二人を見ている。

じっと耐えるように……一瞬たりとも見逃さぬように目を凝らして見続ける。



 壊れたように叫びながら、

背後に『黒い雷を帯びた光の束』を生み出す『彼』。


 生み出された光の束は天と地を繋ぎ、

無数の『黒い雷を纏った光の剣』へと変わっていく。


 ……癒しの力を一時でも凌駕した『破壊の細剣』へと変わっていく。



「くるなっ! くるなっ!!」


「我に、僕にっっ!

   近づいてくるなっっ!!!」



 瞳に映る『救世主』に向けて、

狂ったように叫びながら……『細剣』を放っていく。


 目の前を満たす『黒い光』にも動じることなく、

あの子に向けて迷わず走ってくる『救世主』を恐れるように。


 …………近づかせないように。



「近づいてくるなっ!」


「お前なんかに来てほしくないっ!!」



 叫ぶ彼は泣いていた。

狂ったように泣いて、叫んでいた。


 ……だから『救世主』は来る。


 泣き叫ぶ『大切なあの子』を見て、心配している。

……たとえ中身が違っても、『大切な存在』が悲しんでいる姿を放っておけない。


 だからこそ……

進みを阻む『黒い剣』に貫かれながらも『救世主の足』は止まらなかった。



「いつもいつも苦しそうなお前にっ!!

  いつもいつも我慢してるお前にっっ!!!」


「何のために生きているのか分からない、お前なんかっ……」



 未だ、彼の瞳の奥には『黒い炎』が燃え続けている。

しかし……涙に滲む瞳に宿る『その炎』は大きく揺らいでいる。


 ……もはや、形を保てない。


 …………『彼』が揺らいでいる。



「……僕に似ている、お前なんかっっ……」


「……嫌い、なんだっ!!

    大嫌いなんだっっ!!!」


「だからその目をやめろっ!!

  そんな目で僕を見るなっっ!!!」


「みるなっっーーーー!!!」



 ……揺らぐ『彼の瞳』には映っていた。

心配そうに自身を見つめ続ける『救世主の真っ直ぐな瞳』が。


 拒絶の叫びと共に激しく降り注ぎ続ける『剣の雨』にも負けず、

ただひたすらに『大切なあの子』のもとへと進み続ける『救世主の姿』が。


 ……『黒い雨』の中、確かに輝き続ける『白く淡い光』が映っていたーーーー。

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