表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
4/51

ーー第4話 「始まりの場所」ーー

 そうか、そう……だったんだ。


 ……人間の恐れが、お兄ちゃんを殺す。

あの人たちが、私の大切なお兄ちゃんを殺すんだ。


 …………今まで助けてもらったのに、いらなくなったら捨てるんだ。



 私のお兄ちゃんを……

たった一人しかいない『私の大事な人』を。



「……っ」


「…………どう、してっ…………!」


「……どうして、そんなことできるのっっ……!」



 私は思わず叫んでいた。

私の心に生まれていたもの、それはーー。



「ーー『憤怒』、それは怒りの感情よ」


「……! 憤怒……?」


「…………ふぅ。

 これで一つ目の舞台は整ったわ」


「あとは、待つだけ」



 色欲さんはそう呟く。

でも、まだ私は何をしたらいいのか分からない。



「……それで、

 お兄ちゃんを救うために、私は何をしたらいいの?」


「今は何もしなくていいわ。すぐに分かるから」


「……? 何も?」


「そう、何も。

 ……何も考えず今はただ、あなたにとって大切な時間を過ごしなさい」


「焦ることはないの。

 この世界は、あなたが望む限り永遠に続くから」



 そして色欲さんは、明るい調子で驚くことを話し始めた。



「あっ、言い忘れていたけれど」


「この世界は、

 一回目の時から見て『数年前』に戻っているから」


「……っ!? 数年前……?」


「うん。

 今のあなたは人間の街で、救世主と暮らし始めた頃の幼いあなた」


「……何もかもに怯えて、

 救世主から離れられなかった……昔のあなたなの」


「……! 

 森から離れて、人間の街に……来たばかりの、頃……」


「そうよ。

 ーーあっ、でも救世主から離れられないのは今も同じだったわね~」


「……っ! 

 ……そう、だけど……駄目なの?」


「いいえ、駄目じゃないわ。

 それだけ彼が大切な存在なんでしょう」


「……それは、

 この世界の始まりが『この時』だったことから伝わってくるわ」


「この時は、あなたが救世主と共に生き始めた頃。

 ーーそして『この場所』はあなたが初めて、誰かからの貰い物を受け取った場所」



 色欲さんの言葉で、ようやく私は気付いた。


 ”ーーそうだ、この森でお兄ちゃんから帽子を貰った。

そして私はお兄ちゃんに連れられて、人間の街で暮らし始めたんだ”



 ……それまでお兄ちゃんと私は、森の中で暮らしていた。


 魔族である私が、

そして『人形』だった私が……人間の街で暮らしていけるか分からなかったから。


 そんなある日、私はお兄ちゃんから帽子を貰った。



 ”君に似合うと思って僕が選んだんだ。君のために、人前では必ずかぶるんだよ。

大丈夫、リリーは『人』だ。誰が何と言おうと、僕にとって『大切な人』なんだ”


 ……私にそう言いながら、お兄ちゃんは帽子をくれたんだ。



 ーー私の大切な思い出。


 あの時初めて、誰かからの貰い物を受け取った。


 ”凄く嬉しかったっ……! 帽子もそうだけど、

何よりもお兄ちゃんが私にくれた『暖かい想い』が嬉しかったんだっ……!”



「……そうね。その思い出はあなたにとって大切なもの」


「でも、それだけじゃない。

 この頃、『この森』から今のあなたは始まった」


「あなたの止まっていた時間は動き出し、救世主との穏やかな日々を重ねていく」


「だから、

 世界の始まりは『この時、この場所』になったの」


「ーーだからこそ、

 あなたは今この瞬間の一つ一つを大切にしなさい」


「愛しい彼が……あなたの隣で生きている、大切な時間を」



 そんな言葉を紡ぐ色欲さんは、

どこか悲しそうな声をしていて……私は何も言えなくなっちゃった。



 ーーそして私は、言われるままにお兄ちゃんと私の家に帰った。


 今度はちゃんと帽子をかぶって、帰ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ