ーー第36話 「黒い怨念の叫び」ーー
ーー黒く染まった世界が、その輪郭を取り戻していく。
本来の色を取り戻した『雨降る荒野』に立つ二人。
二人は瞳に光を宿している。
『傲慢』は黒い光を。……『彼』は白い光を。
白く淡い光に包まれた『彼』は、
荒々しい光を大剣で薙ぎ払い、『黒い光』に向かっていく。
……『彼女』のもとへと、向かっていくーー。
ーー静かにゆっくりと、
雨に濡れながら向かってくる『白い光』。
その光を瞳に映しながら『傲慢』は呟く。
「……逃がす、ものかっ……」
その黒い呟きと共に『嫉妬の炎』が現れる。
現れた『天まで届く炎の柱』が彼女を囲み、包み込んでいく。
炎はどんどん大きくなり、
人の形をとっていく。……雨降る荒野に『赤い炎の巨人』が降り立った。
生まれ落ちた『巨人』は叫ぶ。
「どうだ、『救世主』」
「これで『我』を傷つけることは出来まい」
「……今度はちゃんと、殺してやるっ……!」
憎しみがこもった叫びの後に、
巨人の右手が『彼』を捕らえるために動いていく。
……『燃え盛る手』から逃れようと、
彼が姿勢を低くして前に走り出した瞬間ーー
ーー『強風』が吹き荒れ、白い光を呑み込んだ。
”突如として……雨降る荒野に『竜巻』ができていったのです”
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ーー激しくうねる『風の牢獄』が彼を呑み込んでいく。
走り出した彼の瞳には『風の壁』が映り込んでいた。
瞬く間に映り込んだ荒々しくうねり上げる『風の勢い』に、走る足が一瞬止まる。
その一瞬の隙に……
『燃え盛る巨人の右手』が牢獄を突き破り、彼を捕らえた。
「捕まえたぞ、救世主っ……!」
巨大な手の中で彼は指一つ動かせない。
捕らえられた彼を『黒い炎』が焼いていく。
……罪人を握って離さない右手から『赤い炎の巨人』が黒く染まっていく。
突き破られても壊れることなく、
この瞬間も罪人を囲み続ける『風の牢獄』さえも、黒く染めて。
……『黒い炎の嵐』へと染め上げて。
渦巻く嵐の炎が雨を消していく。
苦しみ叫ぶ彼のもとに慈雨は届かない。
「うぐぅぅぁぁぁぁーーーー!!!」
荒野に叫びが響く。
……黒い炎に包まれた『彼』の痛々しい叫びが響き渡る。
その叫びは終わらない。
彼から生まれる『白く淡い光』が、終わらせない。
……黒く染め上げさせない。
「救世主、お前は何を手に入れたっ!」
「……その大きすぎる力で、何を掴むことができたっ!!」
「お前には何もない……
その顔を見たら分かるぞっ!!」
「ーーその苦悩に満ちた『お前の顔』を見たらなっっ!!!」
癒しの力と黒い炎が……
彼に『終わらない罰』を与え続ける。
「フハハハハッッーーー!!!」
「死ねっ! 死ねっ!! 死んでしまえっっ!!!」
「我の手の中で死んでいけっっ!!」
『黒い炎の巨人』が咆哮を上げる。
咆哮を上げる巨人の……
……『傲慢の瞳』はただ一点を見ていた。
その瞳は、罰を受け苦しむ罪人の姿を映し続ける。
……その姿を『己の心』に確かに刻み付けるように……
己の内に輝く『空虚な黒い光』を満たすように、瞳の中に刻み続ける。
「……喰らってやるっ……
……喰らってやるぞっ……!」
「お前も、
お前の大切な『この女』も……」
「……お前の全てを、喰らい尽くしてやるっ……!!」
空虚な黒い光が『囚われた彼の頭上』に現れる。
……空いた穴を満たすために『白い光』を喰らおうと、現れる。
その黒い光は……巨大な『大剣』の形をしていた。
荒々しい光を放つ『断罪の大剣』が、
全てを喰らう『暴食の闇』を纏って『牢獄に囚われた罪人』を照らし出す。
「お前に『明日』は来ない……
……『望む明日』なぞ、掴ませてやるものかっ……!」
「我と同じ苦しみを与えて、与えて、与えて……」
「……与え尽くして、思い知らせてやるぞっ!!」
黒く濁った『断罪の大剣』が落ちていく。
罪人を裁き、喰らうために……『彼』へと向かって、落ちていく。
「奪われる痛みを……
……大切な存在を失う、絶望の苦痛をっ……」
「お前に味わわせてやるっっ!!!」
『傲慢の怨念』が、彼を呑み込む。
『白く淡い光』を黒く染めるために、呑み込んでいく。
……彼を捕らえる『炎の腕』ごと、
『黒い炎の嵐』ごと……全てを呑み込んでいくーー。
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ーー白い光は、闇に呑まれた。
白く淡い輝きは『傲慢の瞳』から消え去った。
その事実を目にした時……
目の前を満たす、真っ黒に染まった『濁った闇』を見た時……
……『黒い炎の巨人』は雄叫びを上げる。
「やった、ぞっ……」
「ついに……
我はっ、我はっっーーーーー!!!」
一筋の涙を流しながら叫ぶ『傲慢』。
”その視界は……
湧き上がる雫と降り続く雨により、滲んでいました”
”だから、気付かない。
……滲んだ視界の先にある『黒い闇』の異変に”
”真っ黒に染まったはずの闇の中に浮かぶ、
小さな、小さな……一点の『白い闇』にーー”




