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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<後編>~約束が灯す明日~
35/51

ーー第35話 「取り戻すための戦い」ーー

 ーーーー「リリーを、返せ」


 その冷たい言葉と共に、

彼は『傲慢』へと向かっていく。……静かに、ゆっくりと。



 向かい来る彼を見て、

傲慢は薄く笑みを浮かべ、澄んだ声を響かせる。



「そうだ、いいぞ」


「お前はそうでなくてはっ!」


「……これでようやく、

  あの最後の戦いの続きができるなっ!!」



 その言葉と共に、

『傲慢の背後』に光の束が現れる。


 『荒々しい光の束』が天と地を繋いでいく。


  ……現れた光は、

またも『無数の剣』へと形を変える。……その切っ先を『彼』へと向けて。



 彼の瞳の先に『無数の光の剣』が作られていく。


  そして出来上がった剣が、次々と降り注ぐーー。



 ーー剣の雨を受けながらも『彼の足』は止まらない。

変わらぬ歩みで『荒々しい光』に向かい、進んでいく。


 ……その身を焼き尽くす『光』に向かっていく。


 ”光に焼かれた彼は『赤い血』に染まります。

でも……その血が『彼の背中』を染めることはありません”


 ”どれだけ焼かれようと、彼は決して逃げないから”


   『彼女』を取り戻すための戦いからは。

『荒々しい光』に呑まれた……『大切な灯り』を取り戻す、この戦いからはーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーそうして、

彼と『傲慢』の距離は確実に縮まっていく。


 しかし、『傲慢』は浮かべた笑みを崩さない。


  ……笑みを浮かべながら、興奮した声を響かせる。



「フハハッ! そうだ!

  それでこそ『救世主』だ!」


「その『化け物のような力』で、

  お前は『色欲』を殺したのだっ……!!」


「……我の『大切な存在』をっ……

  ……救わなくてはならない、存在をっっ……!!」


「ゆる、さない……

   ……殺してやるっ……!」



 ”興奮した声には、

次第に怒りと怨みが込められていきました”



 その『暗い想い』に呼応するかのように、

傲慢の背後に生まれ続ける『光の束』が、『黒い雷』を帯びていく。


 彼の視界を埋め尽くさんと、

瞬きの間に、黒い雷を纏った『光の剣』が無数に形作られていく。


 ……鋭く尖った『破壊の細剣』が出来ていく。



 出来上がった『細剣』が彼に向けて放たれる。

大剣で防ぐ間など与えない速さで、黒い雨が降り注いだ。


 『救世主』を破壊するために。

……『黒い光の雨』が『化け物の身体』を貫いていく。



 貫かれる彼の身体を癒すために、

その全身を『白く淡い光』が包み込む。


 背中まで空いた『穴』がどんどん塞がっていく。


 ……それでも『黒い光』は止まらない。

現れた『白い光』ごと『救世主』を呑み込むように、降り注ぎ続ける。



 そして……

背中から見える『穴』は増えていく。


 空いた穴が塞がる前に、次の穴が空いていく。


  どんどん、どんどん……『彼の身体』に空く穴が増えていく。


 ……『白く淡い光』が吞み込まれる。

黒い怒りを、怨みを纏った『荒々しい光』に吞み込まれていくーー。




 ーー『彼の歩み』は完全に止まっていた。


 『魔王』と『救世主』の距離は縮まらない。

縮まらないどころか、徐々にその間は離れていった。


 …………”彼女と彼が、離れてしまう”


 離れていく彼に向けて、彼女の『澄んだ声』が放たれる。



「見ろっ!

  これが『魔族の力』だっ!!」


「『その瞳』に確かに刻んで、死んでいけっ!!」


「……お前も本望だろう!

  愛した『女の手』で死ねるのだからなっ!」


「フハハハハハっっ!!!」



 黒く濁った『叫び』が彼に届いていく。

……彼は唇をかみしめ、その『黒い言葉』に叫び返す。


 確かな怒りを込めて、叫び返すーー。



「……ける、なっ……」


「ふざ……ける、なっ……!」


「ふざけるなっ!!

     ……返せっ!!」


「リリーを返せよっっ!!!」



 ーーその叫びが世界に響いた瞬間、

    『彼の怒り』に応じるかのように『白い雷』が傲慢に向かって、落ちた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー天から『白く輝く憤怒の雷』が落ちてきた。


 落ちる雷が彼女を襲う。

……とっさに『傲慢』は光の盾を作りだす。


 世界が一瞬『白く』包まれる中で、どうにかその身を守る。



 しかし……

全てを守ることは出来なかった。


 ……『彼女の右腕』は、雷に打たれ焼き焦げていた……。


 『憤怒の雷』が落ち、

白く包まれた世界が、その輪郭を取り戻した後……



 ……沈黙が訪れた。



 沈黙の中、

荒野に存在するのは二人だけ。


 ……焼けた右腕を力なく垂らしながら、

ふらつく足で、なんとか立っている『彼女』。


 ……ふらつきながら立つ彼女を見て、

崩れ落ち、両膝を地面について茫然としている『彼』。



 沈黙する二人に構うことなく『雨』は降り続く。


  静かな雨に打たれながら、二人は似た感情を抱いていた……。



 ……『傲慢』は彼が大罪の力を、

『憤怒の雷』を使ったことに、驚きを隠せない。


 『彼』は、彼女の焼き焦げた右腕を見て……

自分が『彼女』を傷つけた事実に震え、動揺している。



 沈黙する世界で、

『彼女』は目を見開いて驚いている。


 『彼女の瞳』が大きく、揺れている。


  震える『黒い瞳』が……『彼』を見つめる。


 そして……

彼を見つめながら、呟く。



「……なぜ……?」


「……どう、して……?」



 その小さな呟きは、

大きな『震え』を伴って、彼へと届いたーー。


 ーー彼の身体がビクっと震える。


 静かな沈黙は破られ、

止まっていた『彼の心』も、動き出す。


 『崩壊』へと……動き出す。



「……ぼ、くは……」


「ぼくがっ……りりぃ、を……」



 彼の全てが震えだす。

その言葉も、身体も、心も……なにもかも。


 ……震える彼は、

左手に握る大剣に右手を添えて、その切っ先を自身へと向ける。


 震えながらも、一切の迷いのない動きで。


 美しい『その動き』に魅せられたかのように、

彼を見つめる『傲慢』は固まる。……彼を止めることが、できない。



「ごめん、りりー」



 傲慢の瞳の中で『彼』は笑っていた。


  笑いながら泣いていた。……泣きながら震えていた。


   ……震えながら、自身を大剣で貫いたーー。




 ーー彼女の目の前で、

彼は謝りながら……自害した。


 瞳に映る彼が倒れていく。


 綺麗な『赤い血』を流しながら、

その中身が黒く、染まっていく……。



 『瞳の中』で流れ続ける赤い血が、

固まっていた『傲慢の怒り』を呼び戻した。


 湧き上がる怒りが『傲慢』を、

倒れている彼のもとへと導いていく。



 手を伸ばせば触れられる距離まで近づいて、

『傲慢』は足を止める。……震える拳を握りながら『倒れた彼』を見下ろす。


 ……その瞳に『黒い怒り』を宿しながら、震える声で呟く。



「……ざけ、るな……」


「……ふざけ、るなっ……」



 降り続く雨でも流せない『怒り』によって、

震える呟きは大きくなり、『叫び』へと変わっていく。



「ふざけるなよっ!!」


「お前を殺すのは魔族だっ!!

  魔族である『我の手』で殺すっっ!!」


「そうでなければ、意味がないのだっっ!!!」


「……逃さん……逃すものかっ!!」



 ーー『黒い叫び』が世界を染める。


  『傲慢の叫び』が響いていく。……『時を刻む針』が、戻っていくーー。

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