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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<後編>~約束が灯す明日~
33/51

ーー第33話 「二つの光が交差する」ーー

 ーー「久しぶりだな、『救世主』」


 雨の中、荒野に立つ彼女は言いました。


  ”彼女らしくない……

   『男性』のような口調で、言ったのです”



 『その言葉』と、

彼女の『異様な雰囲気』に驚き固まる彼。


 そんな彼の瞳に映る『彼女の手』が光に包まれる。


  ……荒々しい『傲慢の光』が包みこむ。


 現れた光は徐々に、

彼女の手の中に集まっていき『形』を変えていった。


 止まった時の中で人間たちを裁いた、『断罪の剣』へと。



 ……その光景を茫然と見つめる彼。

形を成していく『断罪の剣』を手に持ち、薄く微笑み続ける彼女。


 そして……


   形を成した『剣』は『救世主』を裁くように、薙ぎ払われたーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー薙ぎ払われた『光の剣』によって、

『救世主』が裁かれることは……ありませんでした。


 彼が『大剣』で『光の軌跡』を止めたから。



 彼は『時』が動き出してから、ずっと……

……その左手で握っていたのです。戦うための『大剣』を。


 突然現れた『荒野』を見ても。


  何が起こったのか理解できなくても。


   荒野で倒れゆく『彼女』へ……右手を伸ばした時も。


 ”無意識に『彼』は感じていたのかもしれません。

  闘争の気配を。……迫りくる戦いの予兆を”



 ーー『断罪の剣』をどうにか受け止めた彼は、

本能のままに……『彼女』と距離をとるため、後ろに飛び退きます。


 そうして離れた『二人』。


 強くなる雨の中……

その視線は交差し、お互いの『瞳の中』に向かい合う相手が映ります。


 ”彼の瞳には……『愛しい彼女』が。

  彼女、いえ……『傲慢の瞳』には『殺すべき憎い存在』が”



 ……いまだ困惑の色を瞳に残す『彼』に向かって、

彼女の身体を奪った『傲慢』は、彼女の澄んだ声で煽るように言います。



「どうした、『救世主』」


「お前の『力』はそんなものか?」


「……違うだろうっ!

  見せてみろ、その『化け物の力』をっ!!」


「我の『大切な存在』を奪った、忌々しい『その力』をっ!!!」



 怒り、怨み……

強い想いに彩られた『黒い言葉』が世界に響き、『雨』に溶けていく。


 自分に向けられ、発せられる言葉に……

『彼の瞳』はひどく揺れ動き、困惑の色を濃くしていきます。



「……リ、リー……?」


「…………なにを、いってーー」



 彼の震える言葉を遮るように、『傲慢』が叫びます。



「早く、『救世主』になれっ!」


「『救世主』を『我の力』で殺す……

  ……そうしない限り、無くならないのだっ……」


「この『憎しみ』はっっ……!!」


「我の……『傲慢の怨念』はっっ!!!」



 血を吐くような『その叫び』は、

降り続く雨に溶けることなく、真っ直ぐ彼のもとに届くーー。


 ーーそして『叫び』と共に、彼の視界は『荒々しい光』に包まれた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー『荒々しい光』に包まれる彼。

彼を囲む『光の束』は、一瞬でその形を変える。


 囲んだ敵を殺すための……『無数の剣』へと。


 大剣を構える間も与えず、

『光の剣』は彼の身体を切り裂き、貫いていく。



 ……その体から噴き出る『赤い血』は、

降りしきる雨と交わり、荒野に浸み込んでいく。


 その口から発せられる『叫び』は、

誰にも届かず、ただ虚空へと消えていく……。


 ……代わりに世界に響くのは、澄んだ声。



「『救世主』よ、なぜ戦う」


「お前は何のために……誰のために戦っている」


「…………思い出せ」


「救いたいのだろう、『この女』を」



 落ち着きを取り戻した『彼女の声』が、

彼に『光』を思い出させようと囁く。……『救世主』を呼び戻すために、囁く。


 …………呼び戻した救世主を『殺す』ために、甘黒く囁く。


 ”その『大切な人の声』は……

『彼』のもとへと、確かに届いてしまいます”



「……っ 

  ……り、りぃ……」


「……ぼ、く……はっ……」


「……ぼく、はっ……!」


「……僕はっ!!」



 鋭く尖った剣によって、

その身を貫かれながら『彼』は叫ぶ。


 ”黒く濁った『瞳』に確かな『光』を宿しながら、叫びます”

……強い光を纏った『彼の叫び』を遮ることは何物にも出来ない。


 今度の『叫び』は、

虚空に消えることなく、雨に溶けることなく……『傲慢』に届くーー。



 ーーその叫びを聞いた『傲慢』は、満足げに微笑んだ。



 ……『傲慢の瞳』には映っていたから。


 無数の光の剣に囲まれる『彼』から……

血に染まりゆく赤い身体から、『淡い光』が生まれる光景が。


 生まれた『淡い光』が彼を包み、

『失われた右腕』と『傷だらけの身体』を癒していく光景が。


 ”彼が……『癒しの力』を使う光景が、映っていたのです”



 突如現れた『白く淡い光』に構うことなく、

『光の剣』は襲いかかる。……彼はまた切り裂かれ、貫かれていく。


 ……しかし、もう叫ばない。


 噴き出る『赤い血』も、

変わらず降り続く雨によって『彼』を染め上げることは出来ない。


 荒々しい光の剣も、

『白い光』をかき消すことは……出来ない。



 切り裂かれ、貫かれ、赤い血を流しながら……

……傷一つない体で、彼は左手に握りしめ離さなかった『大剣』を振りかぶる。


 取り戻した右手も添えて、『両手』で力強く握りながら振りかぶる。



     そしてーー


         ーー目の前の『光』を、薙ぎ払った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー『傲慢の瞳』は捉える。

荒々しい光を薙ぎ払い、自らに向かってくる『化け物』を。


 ……雨に濡れながら、

静かにゆっくりと向かってくる『化け物の姿』を。


 大剣を左手に握り直して……

ただ真っすぐに見つめてくる『化け物の瞳』を。



 『傲慢の耳』は捉える。


 全てを焼き尽くすような光を『その瞳』に宿しながら、

揺れ動くことなく真っ直ぐ見つめて呟いてくる……『化け物の言葉』を。


 ”化け物の……いいえ、『彼の想い』を”



「リリーを、返せ」



 ”彼の『言葉』は冷たかった。

『彼の身体』も、『その瞳』も……全てが冷え切っていた”


 ”なぜなら『彼の灯り』は失われたから。

目の前にいる『傲慢』に奪われたと……理解したから”



 ーー”だから『彼』は戦うのです。

     人間のためではなく、自らの『灯り』を取り戻すために”ーー


  ーー”大切な彼女と一緒に、明るい明日を生きるために”ーー

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