ーー第26話 「乙女が語る甘い夢」ーー
ーー”ずっと隣にいる”
悪夢の始まりに交わされた『二人の約束』は、
長い葛藤と戦いの果てに、『誓いの口づけ』によって新たに結ばれました。
木漏れ日のような光の中で、
彼は……『彼女』の小さな誓いに応えたのです。
『救世主』ではなく、『ただの人』としてーー。
ーー”私は願った通りに、
お兄ちゃんを『人』へと堕とした”
……”そして『私たち』は、
いつまでも仲良く『二人』で生きていくのっ!”
………… ”この『世界』は、これで終わりっ!” …………
……かつての『彼女』は言いました。
光が満ちる『洞窟』の中で。……『色欲』と呼ばれる女性に向かって。
夢見る乙女のような『愛らしい笑顔』で語っていたのです。
そんな『彼女の笑顔』に、
『色欲』は微笑みながら、尋ねます。
「どうして『傲慢』と『色欲』は現れないの?」
その問いに、
『彼女』はさらに笑顔を輝かせます。
「……ふふっ!
……知りたい?」
「うん、知りたいな」
「……それはね~」
「『色欲さん』と『傲慢さん』は生きてるからだよっ!」
「二人だけが……
……『人形』じゃない、からだよっ!」
「……っ!」
『彼女』の答えに、
微笑みを浮かべていた『色欲』が固まりました。
「だからーー」
「ーー気付いて、いたのっ……?」
「……!
……あっ……えっ、と……」
思わぬ『色欲』の反応に、
『彼女』は”何か悪いことを言ってしまった”と、自覚します。
「……ごめん、なさいっ……」
「……!
……あなたが、謝ることはないのよ」
「……でも……」
「私の方こそ、
驚かせてしまってごめんなさい」
「……大丈夫だから」
「だから、
どうしてそう思ったのか……教えて」
「…………うん」
すこし不安になりながらも『彼女』は、
求められるままに、ぽつりぽつりと語ります。
「なんとなく、だけど……」
「『色欲さん』と『傲慢さん』以外の人は、暖かく……ないんだ」
そして、
『彼女』は感じたことを素直に『言葉』にしました。
「まるで『人形』みたいに、
『生きてる温もり』を感じないんだ」
「……なんでなのかは、分からないけれど」
その言葉の後、『一瞬の沈黙』が二人を包みます。
そうして静かになった光の中で『彼女』は囁きました。
『色欲』の様子を窺うように、上目遣いで相手を見ながら。
「……だから、ね」
「私にとって、
二人は『特別』……なんだよ」
「……っ!」
彼女の言葉に、
『色欲』の瞳が微かに揺れます。
「『傲慢さん』は、
この『暗い洞窟』を光で満たしてくれる」
「『色欲さん』は、
今みたいに『私』の話し相手になって……くれる」
彼女は『瞳』を潤ませながら言いました。
「……だから、
いつか出会う『大切なお兄ちゃん』のためとはいえ……」
「私に優しくしてくれる『二人』を、
倒さなくちゃいけない『敵』には……出来ないよ」
「……『私の世界』では、したくない」
上目遣いをしていた彼女は、
少し頬を染め、はにかみながら呟きます。
「…………
『大事』、なんだもん」
その小さな呟きは、
『色欲』へと確かに届きました。
「……ありがとう……」
はにかむ『彼女の頬』に、
そっと右手を添えながら『色欲』は言います。
「……だから、
『救世主』に埋め込む『大罪』の中で……」
「『傲慢』と『色欲』だけは、
戦いじゃなくて『行動』で埋め込む、のね」
「……うんっ!
そう、だよっ!」
添えられた手の温もりを感じるように、
自分の両手を重ねながら『彼女』は言葉を紡ぎます。
「……最後は『私の告白』に、
お兄ちゃんの『我儘な想い』で応えてもらうの」
「それでね……
私たちは『約束』するんだ」
「……ずっと隣にいるよ、って」
そして『彼女』は、
目を閉じながら小さく吐息を漏らして、ゆっくりと呟く。
「……『誓いの口づけ』をしながら、約束……するの」
「その『口づけ』で『私の愛』を伝えて……」
「お兄ちゃんは『堕ちる』……」
ーーうっとりとした響きを持った『その呟き』は、
暗い洞窟を満たす『光の中』に、静かに溶けていきましたーー
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ーーかつての『彼女』が語った通りに、
『七つの大罪』を全て埋め込まれた『救世主』は『人』へと堕ちました。
…………しかし、『世界』は終わりません…………
だって『この世界』は、
始まりから『狂って』いるから。
もう、乙女が見る『夢』は……
『良い夢』ではなく『悪い夢』になってしまったから。
……だから、
『この世界』は続いていく。
……『悪夢』となって、続いていくーー。
ーーしかし、
『悪夢』が続くからこそ、『色欲の願い』は叶うのです。
『色欲』は願います。
”彼を、『傲慢』を救い上げたい”と。
『七つの大罪』。
……その名の通り『罪』に塗れて願います。
…………私が与えてしまった『想いの力』を使って…………
…………私が彼女に『罪』を背負わせてしまった…………
…………『七つの大罪』、
かつて私が『人』に与えた『想いの力』…………
ーー今はもう、私しか知らない『お話』があります。
すでに忘れられてしまった『人々が犯した罪』が、あるのです。
彼女と彼、そして『魔族』の……『力』に関係するお話。
”力を持たない『人だけの世界』で、
何故『力を持った存在』が生まれたのか……”
……それを、これから語ります。
物語の後半で語られる『彼女ら』の……
『色欲』や『傲慢』、『救世主』の『想い』を感じて欲しいから。
あなたに憶えていて、ほしいからーー。




