ーー第25話 「二人の誓いが明日を導く」ーー
ーー『暗闇』へと落ちゆく中、
目指す『底』で怠惰を包む『土の壁』が迫ってくる。
”ううん……私たちが迫ってる”
”あの壁は『私』が喰らう。
……お兄ちゃんが切り開く『明日』には、必要ないから”
”お兄ちゃんを飲み込む『闇』は、
私が全部……喰らってやるっ! 私たちは一緒に生きるんだっ!”
ーーーーそして、暗闇に生まれた『光』は落ちていく。
『黄色い軌跡』で闇を照らしながら落ちてゆくーー。
突如『壁』が現れる。
……『土の壁』が『黄色い光』を阻むように落ちゆく先に現れる。
『壁』と『光』が衝突する。
ーーその間際、『闇』が生まれた。
……『黒い闇』が飲み込んだ。
『土の壁』も『黄色い光』も全て、喰らっていく。
そうして『闇』は落ちてゆく。
……喰らったはずの『黄色い光の軌跡』を確かに残しながら、落ちていく。
なおも『土の壁』は、
暗闇の底へと向かうものを遮るように次々と現れる。
しかし『闇』は止まらない。……止められない。
……ついに『闇』は『暗闇の底』へと辿り着く。
その衝撃によって、辿り着いた『地面』は抉れていく。
そして『闇』は地を伝い、
目の前の『最後の壁』を喰らい尽くしたーーーー。
ーーーー消えた壁の先には『女の人』がいた。
角が生えた『魔族』が、ゆっくりと起き上がろうとしていた。
”しなだれる体を支えるように、
片手を地面について起き上がろうとしていたんだ”
『女の魔族』は、
壁の先に現れた『私』と目が合うと、微笑んだ。
……その姿に『目』を、奪われた。
”似ていたんだ。
お兄ちゃんを『人形』にした時の『私』に”
”その『とろんとした瞳』と『妖艶な微笑み』が、
あの時の私を映す『鏡』のように見えちゃったんだ”
私の動きは止まる。
それは一瞬だった。
でも……『怠惰』が己を守る『壁』を作り直すには十分な隙だった。
「っ……!」
お兄ちゃんを伝って、
地面が盛り上がり始める『振動』が私に届く。
伝わる振動で我に返った『私』は、もう一度『暴食の力』で喰らおうとした。
ーーその瞬間、視界が揺れる。
”体に力が、入らない……
……私たちを包む『闇』が消えていく……”
『憤怒の雷』と『暴食の闇』を同時に使った反動がきた。
ぐったりとした『私』はお兄ちゃんに寄りかかる。
……その間にも『怠惰』は地面を盛り上げて、壁を作っていく。
揺れる視界の中で、
私は残る『力』をどうにか振り絞った。
『闇』と共に消えかけている、
身に纏う『憤怒の雷』に意識を集中するーーーー。
ーーーーそして、
『闇』に包まれ隠されていた『黄色い光』は再び現れる。
突如現れた『黄色い閃光』によって、
その場に存在する『全ての人』の目は眩む。
しかし一人だけ、
『眩い光』に怯まずに『声をあげる者』がいた。
「お兄、ちゃんっ……!」
その小さな声は、彼へと届く。
……彼は届いた声に微笑みながら、
目を閉じたまま、『大剣』を握る手に力を籠めて一歩踏み込むーー
ーーそして……
壁もろとも『進む先にある暗闇』を底から切り上げた。
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ーーーー揺れ続けている視界に、光が映り込む。
”これは……私から出てる『光』じゃない。
私の外から差し込んでくる『暖かい光』だ……”
『怠惰』がいなくなって、
日の光を遮っていた『土の壁』が徐々に上から崩れていた。
……その隙間から、
暖かな日の光が『木漏れ日』のように差し込んでくる。
久々に感じた『暖かさ』のおかげで、
ぐったりして冷たくなっていた『私の世界』に少しだけ『音』が戻ってきた。
音が戻った世界で、
私の耳に響いてきたのは……『心臓』の音だった。
”ドクン、ドクンって、音が聞こえた”
ーー私は『その音』を、よく知ってる。
”だって、これはーーーー”
ーーーー『彼女』は、
彼に抱きかかえられていた。
”まるで、
『お姫様』みたいに抱きかかえられていたの”
二人は天から差し込んでくる『光』に包まれる。
……光の中で瞳を閉じかけている『彼女』を、
彼は『両手』で優しく抱えて、そっと呟く。
「……暖かい」
その呟きとともに、
抱える彼女を少しだけ強く『自分』に抱き寄せる。
抱き寄せられた『彼女』は、
閉じかけていた『その瞳』を少しだけ開く。
そして……
ゆっくりと彼の顔を見上げて、か細くても確かに響く『声』で誓う。
「……ずっと……
……となりに……いる、よっ……」
「……やく、そく……」
その小さな『誓い』に彼は応える。
……彼女の唇に軽く『口づけ』をして応える。
「ありがとう」
「僕もずっと『リリー』の隣にいる」
「……約束、するよ」
唇を離し、彼女の目を見て『愛おしそう』に微笑む彼。
そんな『彼の頬』には、光にきらめく一筋の『涙』が伝っていた。
ーーこうして暖かな木漏れ日のような光の中で、
彼女と彼の誓いは結ばれ、その誓いが明日を導いていくーー




