表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
22/51

ーー第22話 「独りぼっちのお人形遊び」ーー

 ーー『彼女』は『色欲の力』を使った。


 その力を使い、

『救世主』を……『大切な人』を操った。


 ……『人形』に、してしまった。



 『色欲』が最後まで選ばなかった『道』を、真っ直ぐ進み始める『彼女』。


 それでも『色欲』は……『彼女』を見守る。



 ”大丈夫。

『この子』なら戻ってこられる”


 ”終わってしまった『私』とは違う……

……今を生きている『この子』なら、まだ『望む未来』を選び取れるはず”


 ”この子が抱いた『最初の願い』は、まだ……形を保ってる”



 ……そう信じて、

暗闇の中から、じっと『彼女』を見つめ続ける。


 その瞳の先に映る『彼女』はーー



 ーー彼女は笑顔で、『人形』に抱きついていた。


 ……『救世主』の形をした、瞳の光を失っている『人形』に。


 …………なにも気づかないふりをして、『お人形遊び』に夢中になっていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーーー”お兄ちゃんは『私』だけのものっ!”


 私は抱きついた『お兄ちゃん』に、笑顔で尋ねる。



「お兄ちゃんは、

 私のこと……好きっ?」


「好き」


「……大好きっ?」


「大好き」



 ”ふふっ……! 

お兄ちゃんが、私のこと『大好き』って言ってくれてるっ!”


 お兄ちゃんは『疲れたような笑顔』で何でも応えてくれる。


  ーー『私』の望んだとおりに、望んだことをしてくれる。



「リリー、震えてる」


「……!

 ……お兄ちゃんっ……!」



 ”抱きしめて欲しい”って、

『私』が思ったら、優しく抱きしめて包み込んでくれる。


  ”私だけを見てくれるっ……!”



「……お兄ちゃん……」


「……もう、どこにもいかない?」


「…………っ

 私を置いて……どこかに、いったりしないよね……?」



 震える声で、

私は『虚ろなお兄ちゃん』に聞いてみる。


 するとーー。



「どこにもいかない」



 ーー張り付いた笑顔で、『私の目』を見て応えてくれる。


 この暗闇に包まれた世界でも、

私には『お兄ちゃん』がちゃんと見えていた。


 ……その表情や、姿まで『はっきり』と見えているんだ。


  ”真っ黒な『お兄ちゃんの瞳』まで、全部ねっ!”



「……!

 お兄ちゃんっっ!!」



 嬉しい気持ちを抑えきれずに、

抱きついていたお兄ちゃんの胸に、深く顔をうずめる『私』。



「……お兄ちゃん、大好き……だよ」



 ”私の『渇き』は満たされていた”


 ”お兄ちゃんは、

さっきの言葉の通りに、どこにもいかなかったから”


 ” ……暗闇の中から聞こえてくる、あの『うるさい声』が届いても ”



「……うるさいな」



 暗闇に声が響いてる。

……『人間』たちの声が響き続けてる。




 …………暗いよ…………怖いよ…………


 ……なんで……何も見えない……どうして……


 …………助けてよ…………誰か…………


 ……お願い…………誰か…………助けて……




 ーー人間ではない『女の人の声』も響いてる。



「『救世主』、

 貴方はなぜ、そんなに頑張るのですか?」


「……傷だらけになりながらも、進み続けるのですか?」


「そんな生き方をしていては、

 貴方はいつか……貴方自身を殺しますよ」


「……時には、

 頑張らずに立ち止まって、休むことも大事なのです」



 響いてくる『他人の声』が煩わしい。



「本当に、うるさい」



 ”お兄ちゃんの愛しい声が聞こえないでしょっ!

私とお兄ちゃんの『大切な時間』を邪魔しないでよっ!”


 そう思いながら、

しばらく過ごしていたらーー


 ーー段々と、『うるさい声』が聞こえなくなっていた。



「……! ふふっ!」



 暗闇の中で、

思わず私は笑ってしまった。


 ”やっと……静かになったっ!”


 ……そして、

静寂の中で『私』は、愛しい『お兄ちゃん』の言葉を聞く。



「ずっとリリーの傍にいる」



 ”私はまた、満たされた”


 ……そんな時、私のお腹が鳴り始める。


 でも……

そんなこと、どうでもいい。



 ”もっと、『お兄ちゃん』の言葉が聞きたいっ!

もっと、『お兄ちゃん』に私だけを見て欲しいっっ!!”


 ”もっと、もっと、『お兄ちゃん』に……愛してほしいっ!

もっと、もっと、『お兄ちゃん』と……一緒にいたいっっ!”


 ”お兄ちゃんの……『傍』にいたいっ!

離れてかないで……置いていかないで……お兄ちゃんっっ……”


 …………『私の傍』に、ずっといてっっ…………



 ーーその『想い』以外はどうでもいい。

どうでもいい、はずなのに……。


 ……『あの声』は聞こえてきた。

『その言葉』だけは……無視できなかった。



「ーー『お人形遊び』は楽しい?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー『その声』は、

静かになったはずの暗闇から……


 ” ……ううん、違う。

   『私の中』から聞こえてきたんだ ”



「……お人形、遊び……?」


「……!

 ……へぇ……聞こえたんだ?」



 ーー『人形』。

昔のことを思い出して、思わず反応してしまった。


 ” ……そう、引っかかったのは『昔のこと』……だけなんだ ”



「……この言葉に反応するってことは……」


「ちゃんと、『自覚』はしてるのね」


「……っ!」


「……うる、さい……」



 私が反応したことで、その声は止まらなくなる。


 ……そして私も、

その煽るような『甘い声』を、段々と『無視』出来なくなる。


 ”私とお兄ちゃんの『幸せな時間』が……甘い声に侵されていく”



「っ。

 ……うるさいっ!」


「私とお兄ちゃんの『幸せ』をじゃまするなっっ!」


「……! 

 ……ふふっ」


「……何が、おかしいのっ……?」


「ふふっ、あははっ!」



 その甘い声は、笑い続ける。

”私とお兄ちゃんの『幸せ』を笑い続けたんだっっ……!!”



「答えてっっ!!」



 ーー私が怒りのままに叫ぶと、ようやく『甘い声』は答え始める。



「……ふふっ、ごめんね」


「あなたが、

 『お兄ちゃんの幸せ』……なんていうから」


「……彼を『人形』にして、

 『彼自身の幸せ』を奪った張本人である……あなたが」


「…………ぇ…………」



 ”私が、お兄ちゃんの『幸せ』を……奪った……?”

……その言葉を突き付けられた『私』は、『私の世界』は止まる。


 茫然とたたずむ私に、『甘い声』は容赦なく言葉を告げる。



「……あなたが、

 『救世主』を殺したの」



 ……『私』が、殺した……?

……お兄ちゃんを救うために頑張ってきた、『私』が……?



「彼の心を殺して……

 ……『人形』に、したのよ」



 ……大切な……

大切な『お兄ちゃん』を、『人形』に……した……?


 ……『人形』だった私を……

『人』に、してくれた……『お兄ちゃん』を……?



 ”でも……

  お兄ちゃんは、笑ってるよ……?”

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ