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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
19/51

ーー第19話 「私の罪の始まり」ーー

 ーーそう、

『彼』は私たちの……私の『光』だった。


 闇に包まれた冷たい世界を照らす『暖かい光』……


 ……『傲慢』は『光の大罪』で、私たちを導く『大きな灯』そのものだった。



 私は、『彼』に憧れていた。


 いつも明るくて、

周りのみんなを笑顔にしていく彼の姿に。



 気付いたら、いつも彼の姿を目で追うようになっていた。


 ……私は『恋』を、していたんだと思う。



 でも、

恥ずかしがりやで内気な私は……自分からは話しかけられない。


 彼から話しかけてくれない限り、

私は『彼』を、ただ見つめることしかできなかったーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーある時、そんな私に転機が訪れる。


 角が生えてきたのだ。……彼と同じ『七つの大罪』の証が。



 ” ーー『大罪の力』を持つ七人 ”


 ……その内の一人が寿命で亡くなり、

欠けた席を埋めるように、私が『力』に選ばれた。


 『私』が受け継いだ大罪の名は『色欲』。……『水の大罪』だった。



 ”嬉しいっ……!


  凄くっ、凄く嬉しいっっ!!”



 大罪として『力』に目覚めたことではなく、

『彼と同じ』になれたことに対して、私は喜んでいた。



 そして私は、

『大罪』の一人として人々の生活を支えていく。


 ” ……『色欲の力』を使って、『水』を生み出すことで支えたの ”



 人々が生きていくために必要不可欠の『水』。


 ……それを唯一生み出せる『私』は、

大罪の中でも特に『彼』と話す機会が多かった。


 この暗く閉ざされた洞窟で、水は貴重だったから。



 ーー『彼』は、常に私の様子を気にしてくれた。


 私が辛そうにしていたら、心配してくれた。

私が悩んでいたら、いつも相談に乗ってくれた。



 ……それは『大罪の力』があってこそ、だったのかもしれない。



 でも……

それでも『私』は幸せだった。


 憧れていた人が、

手が届くことはないと諦めていた『彼』が、私だけを見てくれているように感じたから。



 さらに彼だけは、

『力』を受け継ぐ前と後で……態度を変えることはなかったの。


 『色欲』を受け継いだ『私』に対して、

他の人たちが急に恭しい態度で接してくる中で、『彼』だけは変わらずに明るく親しく接してくれた。



 ……そんな彼と触れ合ううちに、私の心にある『想い』が生まれた。


 ”彼を、『私の光』を何があっても支えよう”……そんな想いが。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーそんな想いを抱きつつ、私は変わらぬ日常を過ごしていく。


 『運命の時』が近づいていることなど知らずに、のんびりと過ごしていく。



 そして『運命の時』は突然やってきたーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーある日私がいつも通り、

水の生成量について話すために『彼』のもとへ行こうとしたら……


 ……進む先から『怒号』が響いてきた。



 ”外に出せよっ! 本当はお前たちなら出来るんだろっ!

大罪の力で、明るい空を見せてくれよっっ!!” ……そんな怒号が響いていた。



 ……『外に出たい』。


 その気持ちは分かる。


 だって私たちは生まれてから死ぬまで……

この暗い洞窟の中で、その命を終える『定め』だから。



 ……それが『七つの大罪』という、

罪の十字架を背負った……ずっと昔から続く私たちの『宿命』だから。


 ……お母さんやお父さん、お祖母ちゃんやお爺ちゃん、

ご先祖様から続く、逃れることのできない私たちの『運命』……だから。



 ーーたとえそれが、背負わされた『偽りの罪』だったとしても。




 私たちは『空』や『森』……

……『太陽』や『月』さえも、知らない。


 知っているのは、伝え聞いたその『言葉』だけ……。


 ……この瞳の中に残すことも『映す』ことすら、叶わない。



 ……なぜなら、

洞窟の入り口を塞ぐ『硬い岩』を壊せないから。


 『大罪の力』を以ってしても……壊すことは出来なかった、から。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーそんなことは、みんな知ってるはずなのに。


 私はそう思いながら、

”怖いけど止めに入ろう”と、怒号の響く先へ向かう。



 そこで私は『許せない光景』を目にしたーー。



 ーー『彼』は囲まれ、詰め寄られていた。


 複数人で一人を追い詰めていた。



 それだけじゃない。

その中の一人が彼の胸ぐらを掴み、叫んでいた。


 ……『彼』は苦しそうに、顔を歪ませていた。


 抵抗もしないで、ただ……苦しみを受け入れていた。




 その光景が、私の瞳に映った瞬間ーー

私の心に『黒いどろどろとしたもの』が生まれた。



 ひどく甘い匂いを漂わせながら、『黒いもの』が私に囁いてくる。




 ……ゆる、せない……


 ……彼を苦しめる奴らを……



 ……ゆるしちゃ、いけない……


 ……私の光を奪う奴らを……



 ……ころしてやる……


 ……私の前から消えろ……




 心を溶かすような、

その『甘黒い囁き』に従って、私は『力』を使ったの。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ……そして、次に私が見た光景は『地獄』だった。



 ある者は、舌を噛み切り自害した。


 ある者は、自ら首を絞めて自害した。


 ある者は、自分から壁に頭を何度も打ち付けて自害した。


 ある者は、謝罪をするように地面に何度も頭を打ち付けて自害した。



 ”その異常な行為する人たちは、みんな……『笑っていた』”



 ーー『祭り』でもするかのように、

暗い洞窟の中で、人々は明るく狂っていた。


 赤く、狂い咲いていたーー。



 ……その時の私には、

狂った人たちが『人形』のように……『人形劇』でも見ているみたいに感じたの。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 『祭り』が終わり、

静寂が訪れる中で、赤く染まった世界を茫然と眺めている『私』。


 そんな私に、聞き慣れた明るい『彼の声』が届く。



 ”助けてくれてありがとうっ……!”


 彼の言葉が届いたと同時に、身体が暖かくなるのを感じた。



 ……”何でだろう”と思い、

世界を見直すと、彼の顔がすぐ近くにあった。


 ーー私は『彼』に、優しく抱きしめられていた。



 その暖かさを理解した瞬間、視界が滲む。


 ……涙があふれて止まらなかった。


 そして私は泣き叫び、

その時から『私の心』と『私の世界』は白い暖かな光で満たされた。



 『甘黒い囁き』によって溶かされて、

祭りが引き起こした『赤い濁流』で欠片すら残さず流された『私の心』は……


……”一度『空っぽになった私』は、『彼』によって満たされてしまったの”



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーあの時から私は『罪』を犯し続けている。


 そしてこれからも、歩む道を『赤黒く染めながら』止まることはない。



 ” 『彼』のため……いいえ、『私』のために ”




 ……そして暗闇に『光』が差してくる。


 少女は『穏やかな光』に包まれて、また世界は廻り始める。



 ーー光に包まれる中、『色欲』は呟く。



 ” 『罪』に塗れようと必ず、『彼』を救い上げる ”


 その呟きは、

全てが光に包まれる前に、残っていた僅かな『暗闇』に溶けて沈んでいったーー。

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