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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
17/51

ーー第17話 「闇は笑い、最後に還る」ーー

 ーー私の誘いに、救世主は乗った。



「……それで、僕はどうしたらいい」



 彼が、感情を殺した冷たい声で尋ねてくる。



「もう『大剣』は無いんだぞ」



 ……そう。

かつて『暴食』を倒した『大剣』は、先ほど失われている。


 『救世主の大剣』。

……それは何物をも切り裂く大剣。『全てを喰らう、暴食の闇』でさえも。



 救世主が持つことで真価を発揮するものだけど、

今の彼では……大剣の力を使うことは出来なかった。


 ……おそらく『癒しの力』を使えないからだと、思う。



 でも、それならーー。



「あなたは、

 今抱いている『怒り』を解放して」


「……怒り、を……?」


「そう。

 『暴食』に向かって、解き放ち続けるだけでいい」



 ーー『憤怒の力』を使えるはず。


 彼は今、激しい怒りを抱いている。

『少女』を操る『色欲』と、『少女』を傷つけた『暴食』に。



 ……そして前回の『強欲』との戦いの時、

『癒しの力』を使えなくなった彼は、怒りによって『憤怒の雷の力』を使った。



「…………いかりを、おさえないで」


「おもいを……かいほうして」


「……っ!」



 私は『痛みをこらえた少女の声』で、あの時の『少女の言葉』を口にする。


 もしも彼が……

『救世主』がその瞬間までは思い出していなくても、似た状況を再現するために。



 ……たとえ憶えていなくても、

抱える想いが一緒であれば、辿り着く先は変えられないから。



 私の願いのため……


 ……『この子と彼の想い』を利用する。



 ”私は結局、『色欲』という名の通り、

人を誑かし惑わせる……嫌な女になるしかないの”



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー私と救世主は、

なおも笑いながらゆっくり近づいてくる『暴食』と相対した。



 その姿は、まさに『闇』だった。


 楽しそうな男の子の周囲には何も残らない。

……すべては飲み込まれ、一片の痕跡すら残さず消える。


 夜の闇より、さらに深く暗い『闇』そのもの。



 ーーその闇がゆっくりと近づいてくる。


 闇とは正反対の『楽しそうな笑い』を携えて。



 ……その笑いが『天の怒り』に触れた。


 暗闇の中、一筋の光は落ちゆきて世界を底から照らしだす。


 何度も何度も……途切れることなく、光は落ちゆく。



 だが、深く暗い闇は光すらも飲み込んだ。

……天の怒りすら、底のない『闇』そのものには届かない。



 ーーしかし、

その『闇』も『人』であることからは逃れられない。


 暗闇に慣れた『暴食』の瞳は、光の白さに覆い隠される。



 その隙を……私は見逃さなかった。


 『この子』が内に抱えている『独占欲』……

……『強欲の風』と『嫉妬の炎』が混じり合った、純粋な激情を外へと吐き出す。



 『激情』が外の世界にて形を成し、

うねり燃え盛る『炎の嵐』となって私から生まれ続ける。


 『炎の嵐』に囲まれた私は、『暴食』目掛けて駆け出したーー。



 ーー『暴食』は、

空から『天の怒り』を受けながら、地上から『炎の嵐』に晒され続けた。



 全てを狂わす『二つの激情』は、

『闇』そのものを以ってしても飲み込みきれなかった。


 その体は徐々に、

地上からの激しい風により宙に浮き、天と地の狭間に閉じ込められる。



 ……次第に『闇』は小さく収縮していく。


 もう体全体を覆いきれなくなり、『暴食』は崩れていったーー。




 ”これで終わりね”


 私は、そう安堵した。



 もはや『暴食』の体は残っていなかった。

そしてその『闇』も、目に見えないほどに小さくなっていたから。



 安堵し、『救世主』に呼びかけようとした瞬間ーー



 ーー『闇』から男の子の笑い声が聞こえてきた。



 体は崩れ去り、

もう終わっているのに、その声は楽しそうに笑い続ける。



 日が昇り始め、夜空が明けていく世界に……


 ……全てが終わった世界に、終わったはずの笑い声が明るく響き渡る。



 その明るい声に呼応するように、

小さくなっていた『闇』がどんどん膨れ上がっていく。


 『まだ終わっていない』と、後ろに伸びた影がどこまでも追いかけてくる。



 そして、世界は『闇』に飲み込まれた。



 ーーそして『少女』と『私』も、いつもの闇へと還る。


 『始まり』へと……還っていく。



 …………そしてまた時は廻る、終わりの時へと廻りだすーー。

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