表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
15/51

ーー第15話 「狂いあい」ーー

 ーー進み続けた先で『少女』が見たものは、炎に包まれていく『救世主』だった。


 彼の前には彼女が……『嫉妬』がいた。

そして彼の後ろには……『人間』がいた。


 ……不敵に笑う『嫉妬』と、

恐怖に染まった瞳で目の前を見ている『人間』。



 ”ーーああ、そうか。

彼は……『救世主』は、また人間を守ったんだ”


 『色欲』は全てを察した。

そして……この後の展開も予想してしまう。



 ”何度も聞いた、あなたの叫び。

あの悲痛な叫びが響いて、またあの森から始まるのね”


 その展開を、予想していたーー。



 ーーだって、

『救世主』はもう『癒しの力』を使えないから。


 前回の『強欲』との戦いで、

彼は……自身の本来の『力』を失っていたから。



 その原因はおそらく、彼の中に埋め込まれた『大罪』。

そして、どれだけ『少女』が時を戻そうと……埋め込まれた『大罪』は消えない。


 ……この世界は、そんな仕組みで廻っている。



 そう思い、すでに次に身構えていた『色欲』。


 しかし……

そんな彼女に『少女の叫び』が届くことはなかった。


 ……代わりに、『女の声』が……『嫉妬の声』が届いてきた。



「救世主、あなたは本当に惨めね」


「あなたは人間を守るけれど、人間はあなたを守らない」


「どこまでいっても独りきり……」


「うふふっ! 

 惨めすぎて、笑っちゃうわっ!」


「…………

 ……なんで、そんなものを続けるの……?」


「あなたを縛る……いずれ殺す『呪い』を、

 何でそこまで素直に、受け入れられるのっ……?」



 ……かつての『問い』が聞こえてくる。


 どれだけ『問い』を重ねても、

どれだけ『救世主』が虚しいのかを伝えても……


 彼の答えが変わることは……なかった。



 ……『少女』がいても、最後まで変わることはなかった。



 だから、この世界は何度も何度も繰り返す。


 今回も同じように廻りだすーー



 ーーはず、なのにっ……


 ……なんでっ……?


 ……なんで、『あなたの叫び』は聞こえないのっ……?



 ”まさか……何かが狂い始めた……?”



 ーーそうして私は、ようやく『少女』が見ている光景を共有した。


 その瞳に映っていたものはーーーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーーー私は見ていた。


 炎に包まれたお兄ちゃんが『癒しの力』を使うのを。……その淡い光を見ていた。


 ……お兄ちゃんは、人間たちの目の前で『力』を使ったんだ。



「……リリー……もう……させない……」



 炎に包まれながら、お兄ちゃんは何かを呟いている。


 私は、その言葉を聞き取ろうと耳を澄ます。

……『黒』と『白』を行き来しながら、お兄ちゃんは呟き続ける。



「リリーを、もう……殺させない……」



 ”っ……!

お兄ちゃんが、私だけのために怒ってくれてるっ……!”


 その怒りに満ちた想いを聞いたとき、私は凄く嬉しかった。



 ……だって、

お兄ちゃんは私だけのために怒ってくれていたから。


 ……そう、もうお兄ちゃんの瞳に『人間』の姿は映ってなかった。



 ーーその瞬間、私の『渇き』が満たされた。

”今のお兄ちゃんの中には、私しかいないんだっっ……!!”




 ーーーー『少女の喜び』が伝わってくる。


 しかし『色欲』は、そんな少女を見て『危うさ』を感じずにはいられない。


 ……なぜなら、

今の『救世主の姿』を見て、喜びを感じるのは明らかに異常だから。



 『救世主』は燃えていた。


 炎に包まれ、

焼かれ続けているその体は、黒く変色して見るも無残な姿になる。


 しかし黒く変色した後に、淡い光と共に……元の白い体へと戻る。



 ーー”あなたは、目に映る光景を正しく把握していた。

実際に『救世主の体』は……黒と白を何度も行き来していたのだから”



 そんな異様な……

『化け物』のような姿で『救世主』は言葉を呟いていた。


 ……『嫉妬』の方にゆっくりと近づきながら。

怒りに満ちた瞳をして……呪詛のように何度も呟いていた。


 ”リリーをもう殺させない”……と。



 ーー”正しく把握したうえで、あなたは狂っていたの”


 ”彼のことを、その場にいる誰もが『化け物』にしか見られない中で、

あなただけは……変わらず『お兄ちゃん』として見ていられるくらいに”



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーーそして『嫉妬』が『化け物』を見て、動いた。

彼女は激しく燃え盛る炎を身に纏い、大きくなっていく。


 ……『炎の巨人』が現れた。



 その巨人を見て……


 ……いや、

見えているのかすら分からないほど、怒りに震えた瞳の『化け物』は突如駆け出す。


 大剣を握りながら、地上を駆け、目に見えない速さで向かってくる『化け物』。


 『炎の巨人』は、

その巨体から獄炎の渦を生み出して、近づくものすべてを焼き尽くす。



 『化け物』も例外ではなかった。


 その体は燃やされ、黒く粉々に崩れていくーー。



 ーーその瞬間、世界が光った。


 夜空から一筋の光が『炎の巨人』に向かって、落ちた。



 突然の衝撃に、よろめく巨人。


 ……その時にある声が響いた。



「お兄ちゃんを虐めるなっ……!」



 それは言葉の奥に『憤怒』を宿した、幼い『少女』の声だった。



 ーーしかし、巨人は直ぐに体制を整える。

そして見失った『化け物』の姿を探し、地上に視線を移した時ーー



「リリーを殺させない」



 ーー天から、冷たい声が響いた。


 その声が『炎の巨人』に届いたとき、

その巨体は二つに切り裂かれ、世界に『静かな夜』が戻っていたーー。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー『静かな夜』が訪れる。


 その時、少女は苦しみ倒れた。そして、全てを飲み込む『闇』が現れた。



 ……『少女の渇き』は満たされたが、それは一瞬のこと。


 満たされたら、更に渇くのが『人の心』ーー。


 ーーそして『体』が弱ると『心』も弱る。

人とは、器と魂……この二つから成り立つ生き物だから。



 ……慣れない『力』を使った『少女』。

疲れ果てたその体に引き寄せられ、心に更なる渇きが生まれる。


 『強欲』、『嫉妬』、続く渇きは『暴食』。


 ーー”全てを喰らう『闇の大罪』”

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ