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私と一緒に地獄に堕ちて  作者: しーぶる
<前編>~二人の約束~
14/51

ーー第14話 「求める渇きが力となる」ーー

 ーー私は必死に走っていた。

”燃える街へ……お兄ちゃんのところへ、早く辿り着きたい”と。



 ーー『焦り走る』。


 それはいつも通りの行動だった。


 ……今までと同じなのに、私には違和感があった。



 湧き上がる想いで満たされていた。


 ”戦うお兄ちゃんの傍にいたいっ! 

どんなお兄ちゃんも知りたいっ!!” ……って。


 ーーそして想いを言葉にしてみて気付く。

『いつもの心配』に混ざっている『いつもと違うもの』に。



 お兄ちゃんのことは心配だった。

……『前と変わらない想い』は確かにあったんだ。



 でも、それだけじゃない。


 ”お兄ちゃんの全てを知りたい。

私の知らない『救世主としての姿』も含めて、全てを”


 ”お兄ちゃんの心の中に在り続けるのは……傍にいるのは『私だけ』でいいから”


 ……湧き上がる想いが止まらない。



 渇くんだ……。


 大切な人の全てを知りたいと。


 ……心が渇き続けてる。


 渇いて、渇いて……止まらない。



 ーーその『渇望』に応えるかのように、

激しく燃える『炎の柱』は増え続けていく。



 私は走る。

暗い夜の中で燃え盛る『真っ赤な炎』を目指して。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー私は、炎の柱に辿り着いた。


 でも、街へは入れない。……目の前の炎が邪魔をする。



「……進みたい?」



 焦る私にそう尋ねる、色欲さんの声。


 ……色欲さんへのモヤモヤは変わらずあった。

でも今は……それ以上に、お兄ちゃんの傍に行きたかった。



 それに、

その声は、道に迷う幼い子を導くような『柔らかくて優しい声』だったんだ。


 だから私は、素直に答えることができたーー。



「……!

 進みたい。早く、お兄ちゃんのところへ行きたいっ!」


「……そう、分かったわ」


「なら、

 あなたの中に生まれた『強欲』を意識しなさい」


「……強欲……」


「あなたなら……」


「……強い感情を抱え始めて、

 実際に『大罪の力』を目にした、今のあなたなら出来るはずよ」


「あの『風』を……

 『竜巻』を、目の前の炎にぶつけるの」



 私は言われたとおりに意識する。



 ……私の中の強い渇きを意識する。


 『強欲』によって生まれ、

『嫉妬』で明確な言葉になった『満たされない心の渇き』を。


 ”お兄ちゃんは、私だけのものなんだっっ……!”



「……!」



 ーー想いが『風』となって、私の外に現れる。


 私は囲まれていた。……いつか見た『竜巻』に。



「今よっ! 

 そのまま進んでっ!」


「……っ!」



 そして私は、燃え盛る炎の柱に飛び込んだ。


 ーーその瞬間、炎が竜巻に呑まれ、

私の周りを激しくうねりながら天へと駆けあがっていく。



 ……赤く染まった風の先には、道ができていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ーー街は、どこを見ても燃えていた。


 燃え盛る街の中を、お兄ちゃんを探して走る私。

そんな私の瞳に映りゆく景色は『人間たちの絶望』だった……。



 ある人間は……燃え盛る街を目にして泣き喚いていた。


 ある人間は……目に映るものを否定するように、ただ茫然としていた。


 また、ある人間は……燃える炎に包まれて、黒く変わりつつあった。


 そして、ある人間は……すでにその瞳から光を失い黒くなっていた。



 ……明るい炎に包まれる街の中で、

人間たちは『暗闇の底』にいるような、怯え震えた瞳をしていた。


 そして誰もが『光』を、『救世主』を求めてた。



 ……自分たちは何もしないで、只々『救い』を待っていた。

『救世主』に……お兄ちゃんに全てを押し付けて待っていたんだ。



 ーーそんな人間たちを見ても、私の中には何も生まれない。

私の中に在るのはお兄ちゃんへの想いだけ。



 ……私の瞳には残らない。

お兄ちゃんを悪夢へと追い込む、人間たちなんて。


 ただ映り込んでは消える、陽炎みたいなものなんだ。


 そんなことよりーー。



「お兄ちゃんっ……」


「どこっ……? どこにいるのっ……!」



 明るい炎に包まれる街で、私は叫び続ける。



「お兄ちゃんっ……!」


「お兄ちゃんを『独り』にはしないからっ……!」


「……私だけは、

 お兄ちゃんの傍にいるからっっ……!」



 ……そして叫び続けていると、一際大きな炎の柱が現れた。




 ーーーー迷うことなく『少女』は、現れたばかりの『炎の柱』へ向かう。


 確かな『人間への怒り』を……『憤怒』を抱えながら。

ふらつく足取りで、何度も躓いて転びそうになりながら。


 ……それでも進み続ける。



 ーー『色欲』はその少女の姿から、目を離すことができなかった。


 その純粋で真っすぐな姿が……

『危うい』姿が、かつての自分を思い起こさせるから。


 明るい未来を『妄信』していた……しようとしていた自分を。



 ……それだけじゃない。

似ているの。光を取り戻すために、今も変わらず足掻き続けている『私』に。

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