第十三話 身体測定と部活選び
高校も授業が始まったが、新年度が始まったばかりなのでやることもたくさんあった。
そのうちの一つが身体測定で、もう一つが部活動紹介だった。
身体測定は午前中に行われるので、体育館に行って着替えてから行うことに。
「そういえば、昔と比較して項目数が減ったって聞いた。今は、胸囲とかないって」
「さいですか」
何気に、体操服に着替えるのは今日が初めてだった。
女子なのにあっという間に着替えを終えた姫華とクラスメイトの到着を待っていたが、何故か男女ともにうちのクラスはずーんと落ち込んでいるものが多かった。
先ずは男子。
「「「樹が、とんでもない肉体だった……」」」
「ちょっと、みんな恥ずかしいことを言わないで!」
小柄な剣道少年である樹は、体をかなり鍛えていたらしい。
腹筋もバキバキだったらしく、男子はかなりのショックを受けてしまったらしい。
俺は元から体を鍛えているし、樹もなんとなく筋肉質な体だと思っていた。
当の樹は、顔を真っ赤にしながら手を振ってワタワタとしていた。
そして、今度は女子である。
「「「越えられない山脈がそびえ立っていた……」」」
「あらあら」
もはやうちのクラスのお母さん的存在である彩を見ながら、女子はかなり落ち込んでいた。
男子は聞いてはいけない話だと思ったので黙っていたが、彩は相当凄いものを持っていたらしい。
密かにスタイルに自信を持っていた美緒ですら、彩のことを羨ましい目で見ていた。
取り敢えず着替えも終わったので、出席番号順に身体測定を始めた。
「百八十五……熊、あんたまた身長伸びたわね」
養護教諭でもある瀬川先生に呆れながら、結果を記入していった。
そして、あっという間に身体測定は終わった。
うーん、本当に項目数が少なくなったな。
まあ、俺の場合殆どのデータが母さん経由で瀬川先生に筒抜けだった。
「ふふふ……」
そして、何故か姫華もニマニマしたご満悦な表情だった。
俺に聞いて欲しいみたい表情をしていたので、せっかくだから聞いてみた」
「姫華、何か良いことがあったのか?」
「身長と体重が成長していた。おばさんの料理は偉大……」
姫華はちょっとだけ胸を張っていたが、元々病弱な姫華にとって成長するのはとても嬉しいことらしい。
姫華の場合は、このまま順調に育って欲しいものだ。
すると、一輝があることを思い出したように話し始めたので。
「そういえば、うちの市内の中学卒業した奴はみんな熊行の母ちゃんの作った昼食を食べていたんだよな」
「そういえばそうね。うちのクラスの半分以上は、確か市内出身だったもんね」
美緒も話に加わったけど、母さんは栄養士プラス調理師としても給食センターで働いているもんね。
全員、俺の体を見て納得していた。
「ふふ、姫華ちゃんもきっともっと体が大きくなるはずね」
「頑張る!」
姫華は彩に言われてふんすってやる気を見せていたが、まああらゆる面で彩を超えるのは不可能だろうな。
こうして、俺たちは身体測定を終えて着替えて教室に戻った。
今日から昼食が始まるのだが、俺と姫華は母さんの弁当だった。
後はパン売り場もあるので、そこで購入する人もいた。
「相変わらず、おばさんの弁当は豪華ね……」
「うまうま」
美緒が俺と姫華の弁当を覗き込んでいたが、母さんは料理になると一切手を抜かない。
それでいてとんでもない速度で弁当を作るのだから、本当に凄いとしか言いようがない。
ちなみに、俺と姫華で弁当の中身は一緒だが量は全然違った。
そして、姫華は母さんの作った弁当を美味しそうに食べていた。
そんな中、美緒が姫華にあることを聞いてきた。
「姫華ちゃんは、部活動何に入るの? 熊行はどうせ柔道部だろうけど」
「そういう美緒は、バスケ部だろう?」
「うーん、どうしようか悩んでいるんだよね」
美緒はスポーツ少女なので、こう見えて身体能力が高い。
中学もバスケ部に入っていたが、姫華はどうするのだろうか。
「姫華、お前は部活動どうするんだ?」
「うーんとね、文芸部に入ろうかなって。柔道部とか、絶対に無理」
俺も、姫華に柔道部は絶対に無理だと思っていた。
しかし文芸部か。
姫華は、本を読むのが好きだからあっているのかもしれない。
「文芸部に入ったら、小説書く」
「うわあ、姫華ちゃん小説書くの? 私には到底無理な芸当だよ」
美緒は無理だと首を振っていたが、まさかの小説を書くとは。
すると、姫華はこんなことを言っていた。
「作品出来たら、色々なところに応募する」
「うわっ、本格的だね。私も、姫華ちゃんの書いた小説を楽しみにしているよ!」
「任せて」
姫華、美緒は漫画専門だぞ。
それでも小説から漫画になるものもあるし、可能性は無くはなかった。
何れにせよ、今日の放課後に体験入部をするという。




