神格発現
「さて、私の勝ちかねぇ」
そう思っていたら眼の前に倒れていた少年が膨大な魔力を纏いながら
ゆっくりと立ち上がり、こちらを見据えてくる。
!!!!!!!
ガイアスはその少年を見た瞬間驚きを隠せなかった。
目が虹色に光っている。
あれは、あれは!
「なぜだい!?なぜ貴様にその力が使える!?」
あの特徴的な目、あれは神格発現だ。
選ばれたものにのみ使える神の奇跡。
それなのになぜ失格者と呼ばれるこいつが使えるんだ!
しかも魔力の量がおかしい、桁が違いすぎる!
普通の神格発現ではあそこまでの力は出ない。
一体どうなっているのだ?
そこで一旦思考をクリアにする。
考えても仕方がない、生身の人間では神格発現に敵うわけがない。
ならば、自分も使うしかない!
「神格発現!殲滅の神楽!!」
ガイアスの神格発現は魔力を増大させ、炎系の魔法の威力を上限まであげるものだ。
「しぶといやつだねぇ!炎系上級魔法フレイムバースト!!」
龍のようにうねる魔法がテルアを襲う。
しかしテルアは
「光系超級魔法リフレクトシールド」
と唱えた。
超級魔法だと?軍の中でも扱える人がとても少ないと言われているはずなのに!
跳ね返された魔法がガイアスを襲う。
「ちっ!!」
かろうじて避けることはできたが、テルアの方を向くとすでに
巨大な魔法陣が完成していた。
「炎系超級魔法フレームストーム」
無数もの炎の渦がガイアスを取り囲む。
「俺の家族に手を出すな」
と眼の前にいる少年が冷徹な声音で言ってきた。
「なるほどねぇ。でもこれは反則だねぇ」
と呟きながらガイアスは絶命した。
「んっ、うぅ....」
僕は目を覚ました。
全身が痛い、体が動かない.....
あたりを見渡すと観客がとてつもない歓声をあげていた。
一体何があったんだ??
そして、僕は隣に倒れている人物に気がつく。
「ガイアス?」
まっ黒焦げで分かりづらいがこれはガイアスだ。
ん?いや待て、なんでガイアスが倒れているんだ?
するとこちらに審判の教官が近づいてきて、
「ガイアス・ハーデスの死亡を確認!よって勝者テルア・エイデス!」
「うおぉーーー!!!」
観客が沸いた。
へ?何?僕勝ったの?なんで?
と無数の疑問が飛び交う。
するとアイシャがこちらに来て、
「流石ですお兄様!」
といって抱きついてきた。
流石に僕は疑問に思ったので
「ガイアスは炎の魔法を暴発させて自滅したのか?」
と聞くとアイシャは怪訝そうな顔をして、
「何を言ってるのですか?お兄様がやったのではないですか!!」
と言ってきた。
観客も「テルア!テルア!」
と謎のテルアコールをしている。
なんだ?みんなして僕のことをからかっているのか?
なんて考えていると、復活したガイアスがこちらに来て
「神格発現は心の底から強い信念を持つものにしか使えない。
私は君のことをずっと失格者と思っていたが今ここで撤回するとしよう。
今まで悪かったねぇ」
と言って去って行ってしまった。
え?今ガイアスが僕に謝罪した?
天地がひっくり返ったかと思った。
だが、これでガイアスがアイシャに模擬戦を申し込むことはないだろう。
よかった...守れたんだ、こんな僕でも。
偶然が重なったとしても結果的には僕は勝ったんだ.....
と心の底から安堵した。
そう思っていたら
「あれ?」
視界が歪んだ。
よくよく見ると僕の体は傷だらけで、いたるところから血が出ている。
アイシャがなにか呼びかけてきているが全く聞こえない。
そうして僕の意識は闇に落ちた。
会場が騒然とする中、学園の屋上に二人の人が立っていた。
「わーお!あそこまで強力な神格発現は久々に見たなぁ!」
「だが、まだ完全には扱えていないように見える。
だがあの力があれば我々の悲願達成にも近づく」
「戦えるのが楽しみだねぇ!」
「戦闘を楽しむのはいいが本来の目的を忘れるなよ?」
「わかってるって!まぁ次動くのはあいつだから私達は別の所行こ!」
そう言って二つの影は消えた....