魔物の襲撃
私は今、”魔物の襲撃”の被害にあった村に救助捜索に出ていた。
どこもかなりの被害が出ており、多くの人が死んでいた。
「お父さん!お母さん!…ねぇ!動いてよっ…」
私は目の前で死体を揺らす黒髪の少女を見つけた。
私が彼女に近づこうとすると彼女はその青い瞳で私を睨んでくる。
その顔は泣きじゃくったあとなのか目元が晴れていた。
「ねぇ、君…親御さんは…もう…」
「うるさい!お母さんたちは生きているんだ!」
そんなはずは無い、彼女が揺らしている死体は首がなかったり胴体がないのだ…生きていたところでわずかな時間だろう、私は彼女のすぐ目の前まで行くと強く抱きしめる、彼女はびっくりしながらもその血塗れた手で抱きしめ、私の鎧を汚した。
「大丈夫!私が全部、魔物たちをやっつけるから!だから泣き止んでくれない?」
彼女は嗚咽を漏らしながら、強く頷き、私の胸元で泣き叫ぶ
「どうして!…なんで!…」
「ごめんね、私がもう少し早ければ…」
「ううん、その…お姉さんのせいじゃないよ、私が、もっと強ければ……お母さんも……お父さんも」
私はその言葉に強い意志を感じた。
魔物に対する恨み、そして自分の非力さで彼女は変わったのだ。
私は彼女を強く抱きしめると、頭を撫でてやる、彼女はじっと涙をこらえ、私をさらに強く抱き締めた。
その時、私はこの子を強い冒険者にすることに決めた。
――――――避難所――――――
泣き疲れたのか私の腕の中ですやすやと眠る少女を抱え私は避難所に戻ってきた。
そこには冒険者たちや避難民で溢れかえっていた。
私は避難所で1番大きなテントに向かった。
軽装の鎧を着た私だがそれでも少しは音が鳴るのでその音を聞いて私を見る数人の冒険者たち
「…おい、「疾風の女騎士」じゃねぇか?あれ」
私の姿を見てざわめき始める冒険者達。
まぁ、私は銀髪で顔は整ってるし結構求婚を申し込まれるので、自分で言うのもなんだが割で美人な方なのだろう。
そして何を隠そう私は最高ランクであるS級冒険者でもあるので顔はバレている。
「…ガキなんて抱えて何しに来た、S級冒険者のフィリアさんよ?」
ここで1番の腕利きなのか私よりも数十cm背丈の高い筋肉隆々とさせた男が私に近づいてくる。
「一通り見渡してきたのでこの子を一時的に預かってもらおうと思いましてね」
「…そうか、さすが「疾風」の名前は伊達じゃないな」
私の名前はフィリア・ヴェンズ。
二つ名は「疾風の女騎士」、由来は私の得意な魔法にある。
私が得意とするのは風魔法。
更に常人では出せないようなスピードで走れるのも相まって、そのように呼ばれるようになった。
「…そのガキは置いてくといい、丁重に預からせてもらうよ」
「…決して指一本でも触れたら私の魔法が飛んでくると思って預かってくださいね?」
少し脅しのようなことを言いながらもニコリと笑みを向けるとその男は気に食わないのかふん、と鼻を鳴らして一人の女冒険者を呼ぶとそいつに預けとけと言ってくれた。
「…では、少し魔物狩りをしてきますので、くれぐれも…」
「わかった、お前の要求はしっかりと守らせてもらうとも」
男は目をふせながらため息混じりにそう言うと両手を上げて完全にお手上げだと体で表現してくれたので私はそのまま全力でその場を後にした。
私の走った後は突風が起き、木が揺れ、砂埃が舞っていた。
「…さて、我が子のためにも…この地は徹底的に掃除をしなければ…」
走っていると目に入ってくる魔物の群れ。
ワーウルフ、オーク、ポイズンビー、ゴブリン、ロックアイアント、どれも危険度のランクが低いものばかり。
だが危険度が低いからと言って舐めてかかると人とは簡単に死ぬ。
だから冒険者がいるのだ。
私は両腰に携えていた愛用している二刀レイピアを引き抜くとそのままの勢いで魔物の群れに突っ込んだ。
一斉に襲いかかってくる魔物達を全て走る速度を落とさず一刀両断し、その奥にいたオークキングが私に向かって走ってくるので飛び込むようにレイピアを1本突き出すとそのまま突進した。
オークキングも攻撃を仕掛けてくるがあちらの攻撃は私の背丈よりも大きな棍棒での振りかぶり、そんなのでは私の速度には追いつけず私は魔物の心臓である魔核を的確に貫いた。
オークキングは音を立てて倒れた。
オークキングの体からレイピアを引き抜くとレイピアに着いた血を取るため血振りする。
地面に繰り広げられる紫の血。
目を瞑れば数週間前までまだ村として機能していたこの村のことを思い出す。
ここの村は私は過去にクエストの際に何度か立ち寄ったことがある村なのだ。
村の位置的に言えば王都の近くであり、行商人たちが行き交うための中継地点として少し栄えていたこの村に、誰が”魔物の襲撃”が起きると予知できただろうか。
私はその苛立ちを先程の魔物立ちにぶつけていただけだ。
少し体も汚れたから帰ろう。
そう思いレイピアを鞘に収めるとズシン、ズシン、と地響きがした。
「…まさか…」
私の悪い予感はよく的中する。
私の想像が正しければ、今回の”魔物の襲撃”の原因は……ある魔物にあると私は踏んでいた。
私はその地響きがする方向へと駆けていく。
空を見れば段々と赤みがかっており、今から夜になると伝えている中、私は銀の髪をなびかせて走っていくのだった。
今回は読んでいただきありがとうございます。
時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。
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