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大変身

「きゃー!兄さんすごい似合ってるよ」


 小春は陽介の姿を見て両手を頬にあて目を輝かせながら黄色い声を出していた。

 確かにさっきに比べて可愛くなっているのだが小春と比べるとまだまだ追いついていないなと感じていた。

 地面を見ながら1人で考え込んでいると小春がでかい紙袋を携えながら陽介の元に駆け寄ってきた。


「兄さん次のお店行くよ!」

「えっ?!もう?!お会計は?」

「もうしたよ、その服着てていいから次のお店行くよ」


 陽介が元々着ていた服をレジからもらってきただろうでかい紙袋に入れ陽介の手を引っ張りながら店を後にした。


 小春に手を引かれ向かった先はネイルショップだった。

 その店は男性禁制ではなかったため入店できたがネイルショップなので女性しかおらず男の陽介に視線が集まった。


「いらっしゃいませ、2名様のご来店でしょうか。」

「はい、ネイルを2人お願いします」

「かしこまりました、では奥の席へどうぞ」


 陽介は勧められた席に座り人生初のネイルに心躍らせていた。


「ありがとうございました〜」


 数十分後、満足した顔で陽介は店を後にしていた。


「これすごいな!」

「はい、ここは近所でも上手いと有名な店なんですよ。」

「へぇ〜、そうなのか」


 陽介は自分の手を見ながら納得をしていた。

 爪の根本は少し濃いピンク色で先端に行くにつれてどんどん薄くなっており、爪全体は光を反射するほどの艶が出ていた。

 この出来は素人の陽介でも上手いというのがわかるほどだった。


「小春、お腹は空かないか?」

「そうだね、もうお昼を回ってるから少し空いてるかな」

「じゃあお昼はお兄ちゃんがおごってやるぞー」

「やったー、なんでも頼んでいい?」

「ファミレスだけどなんでも頼んでいいぞーーー」

 

「はぁ〜美味しかった〜」

「お、俺の金が、、、、、」


 お腹をたたきながら満足した様子の小春とその後ろから財布を見ながらげんなりした様子の陽介が店から出てきた。

 流石に陽介と同じランチセットを食べた後にメニュー表のにでかく載っているパフェを食べるとは思っておらず、予想の倍近く陽介の財布はダイエットしていた。


「兄さん次のお店行くよー」


 あの華奢な体のどこにランチとパフェが入るのか不思議でならなかった。

 本当に女の子の体にはデザートのみが別腹に行くのでは、と本気で考えていた。


「兄さん着いたよー」


 そんなくだらないことを考えながら歩いていたらいつのまにか目的地についたようだ。

 そこはショッピングモールから出て少し歩いた位置にある個人経営の美容院だった。


「いらっしゃいませって小春ちゃんじゃん、久しぶり」

「とわさん、お久しぶりです」

「そちらのお客さんは小春ちゃんの友達?」

「いえ、兄さんです。」

「えっ!?お兄さん!?」


 "ばっ"と陽介の方に振り向き下から上にじーっと見られ気恥ずかしくなり陽介は目を逸らした。

 彼女も小春に比べても劣らないほどの美少女であった。

 薄く明るい紫色の長い髪はきっちりと整えられており艶も出ている、健康的な白い肌に屈託のない笑顔はどんな人も惹きつける魅力に溢れていた。

 

「へぇ〜、この人がいつも小春ちゃんが話してたお兄さんかぁ、すごい女の子みたいでびっくりしたよ。」

「でしょ、兄さんはかわいいんだから」

「ということは、今回はお兄さんがお客さんってこと?」

「そのとおりです、髪を整えるのとメイクをお願いします」

「かしこまりました〜、ではお兄さんこちらの席へどうぞ〜」

 

 陽介は奥の案内された席に座り理髪しやすいようにとわに身を委ねた。

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