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第7ステージ表彰式

 先頭でゴールラインを通過した船津に遅れて、尾崎、近田の順にゴールへ飛び込んできた。

 なんとか、10秒差で踏みとどまった形だ。

 その後、船津から22秒差で植原、さらにその5秒差で泉水が入ってくる。

 神崎高校で、船津の次にゴールラインを通過したのは、冬希だった。アシストとしては、今日は全く出番がなく、脚を使う機会もなかったので、集団の中でゴールすることが出来た。

 冬希は、船津の姿を見つけると、自転車を停め、がっしりと握手をした。

 船津が幼馴染に、「見ていてください」とメッセージを送って実際に勝ってしまったのを見て、冬希はその有言実行ぶりに舌を巻いた。

「予告勝利ですね」

「いや、勝つ、とまでは言ってなかっただろ。負けた時に恥をかくからな」

 2人は、顔を見合わせて笑った。

 神崎高校の他のメンバーも、続々とゴールしてきて、次々に船津の健闘を称える。


 選手たちが半分ほどゴールしたところで、運営のバイクが先導して、ゴールした選手たちが下り始めた。

 これは、雨が降って表彰式が中止になったわけではなく、もともとゴール付近に表彰式や待機場所を準備できるほどの場所が確保できるほど広くなかったため、最初から表彰式は下山してしばらく戻った場所で行う手筈になっていた。

 降っていると、まだ登ってきている選手たちとすれ違う。

 平坦区間まで戻り、スタート地点の方向へ少し走ると、広い駐車場があり、そこにステージなどが設けられていた。

 冬希たちは、雨で濡れたり、前の自転車の跳ねた泥などで汚れた身なりを綺麗にして、表彰式に臨んだ。


 ステージ優勝は船津。これで山岳ステージでは、今のところ全て別の選手が優勝していることになる。

 第4ステージ逃げ切りの秋葉、第5ステージの近田、第6ステージの尾崎、そして第7ステージは船津。

 これはかなり珍しいことらしい。

 総合タイム1位は、船津が堅守し、2位以下も変動はなかった。

 山岳ポイント1位は、ステージ2位に入った尾崎がキープした。だが、あくまで総合優勝を狙う尾崎には、そんな事は何の意味もなかった。

 スプリントポイント1位は、冬希がキープしているが、坂東が2つのスプリントポイントでどちらも1位通過したため、冬希との差はかなり縮まってきている。

 新人賞は、植原がまだキープしている。


 近田は、サバサバとした表情をしていた。

 今日は、総力戦を挑んで、結果負けた。これで負けたのなら仕方ないと思っていた。

 タイム的にも、もはや総合優勝は厳しいと言わざるを得ない。

 チームとして、総合3位争いにシフトすることになる。


 尾崎は、思い詰めた表情をしていた。

 トラブルで、チャンスを逃した。レースなのでそういう事もある。しかし、尾崎はまだ総合優勝を諦める訳にはいかなかった。

 明日は平坦ステージだ。勝てればボーナスタイムなどで、多少のタイム差を縮めることができるかもしれない。

 だが、今年は、タイムオーバーでリタイアする選手がほとんどおらず、強力なスプリンターたちがまだ全員残っている。

 勝負をするなら明後日か。

 尾崎の頭の中で、総合優勝のための作戦が組み立てられていった。


 植原は、打ちひしがれていた。

 3年の3人、船津、尾崎、近田の壁があまりにも厚かった。

 植原にとって、新人賞は獲得して当たり前だった。

 出場前は、ステージ優勝をいくつ取れるか、という勝負だと思っていた。

 しかし、現実には、船津、尾崎、近田は強く、今日のステージでも、完全に自信を打ち砕かれた。

 今の植原の実力では、真っ向勝負では勝ち目がないように思えて、泣きたくなった。

 ふと、冬希の方を見る。

 なぜ、彼は同じ1年でありながら、ステージ3勝も挙げることが出来たのか。

 冬希は、スプリンターではあるが、最強世代の3年生たち、特に4大スプリンターと呼ばれる強力な選手たちを正面から打ち倒している。

 何が違うのか。

 植原は、ふと自分のことを心配そうに見つめるマネージャーの沢村雛姫の視線に気づいた。

「今日はちょっと疲れたみたいなんだ。早くホテルに戻ろう」

 植原は、心配させまいと、気丈に笑って見せた。


■第7ステージ結果

1:船津 幸村(千葉)125番 +0.00

2:尾崎 貴司(静岡)1番 0.10

3:近田 徹(福岡) 401番 +0.10

4:植原 博昭(東京)131番 +0.22


■総合成績

1:船津 幸村(千葉)125番 +0.00

2:尾崎 貴司(静岡)1番 +1.06

3:植原 博昭(東京)131番 +2.36

4:近田 徹(福岡) 401番 +3.15


■スプリント賞

1:青山 冬希(千葉)121番 193pt

2:坂東 輝幸(佐賀)441番 186pt

3:柴田 健次郎(山梨)191番 71pt


■山岳賞

1:尾崎 貴司(静岡)1番 78pt

2:船津 幸村(千葉)125番 64pt

3:近田 徹(福岡) 401番 50pt

4:丹羽 智将(静岡)2番 44pt

5:植原 博昭(東京)131番 41pt

6:秋葉 速人(山形) 61番 37pt


■新人賞

1:植原 博昭(東京)131番 0.00

2:有馬 豪志(宮崎)451番 +3.21

3:南  洋平(栃木)95番 +20.38

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