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あゆみと立花②

「なんだっ!!」

 立花は、フロントで電話を受け取ると、不満を隠そうとしない、しかし低い声で子機に言い放った。

『ああ、居たか。よかったよかった』

 立花は、ロビーを見渡す。ロビーには、館内放送を聞いて、何ごとかとロビーに降りてきた選手もいる。

 立花の宿泊するホテルにも、15校ほどが泊まっており、その中には、静岡も含まれている。

「何の用だ!」

『いや、俺らのホテルに、堀あゆみさんが来てて・・・』

「なに!?」

 立花の声色が驚愕と狼狽に変わる。

『立花の泊まるホテルを探しているようだから、お前に迎えに来てもらおうと思って』

「わかった。すぐ行く」

 立花は、慌ててロビーを出て、冬希たちのホテルへ走って向かった。


「来るって」

「来るって、じゃないだろう・・・」

 植原は、心底立花に同情した。ホテルで館内放送で呼び出されるのは、ちょっと恥ずかしい。しかも、呼び出したのは学校関係者でも家族でもなく、ライバルの有名選手なのだから。

 5分ほどで立花は現れた。走ってきたようで、肩で息をしている。

「あゆみ!!」

「道之くん!!」

 走って抱き合うかと思ったが、2人は目の前で止まった。

「ごめんね、道之くん」

「いや、いいんだ。俺の方こそ気づかなくってごめん」

 なんか、立花の意外な一面だなと思った。冬希は立花を、いつも怒ってる人、というイメージで見ていた。

 立花は、冬希の方を向くと

「青山、色々すまなかった。ありがとう」

「気にしなくていいよ。ただ、女の子からの連絡に丸1日気づかないのは、同じ男として良くないと思うぞ」

「ああ、すまなかった」

 冬希は、植原と雛姫の、お前が言うな、という視線に目を逸らした。ちなみに冬希が春奈からの連絡に気づかなかったのは、3日間だ。

「だが、一つ言わせてくれ」

「なんだ」

「館内放送での呼び出しは勘弁してくれ・・・」

「そうか、すまなかった」

 冬希は、手で口元を押さえながら、神妙な面持ちで謝った。だが、植原と雛姫は、冬希が笑っているのを誤魔化そうとしているのがわかった。

「あゆみ、今日はどうするんだ?」

「道之くんのおじさんがホテルに泊まっていっていいって」

「俺が泊まる予定だったところか。送っていくよ。話は、帰りながら話そう」

「うん」

 2人とも、冬希や植原、雛姫の方を見て、頭を下げる。

「ありがとうございました」

「会えてよかったね!」

 雛姫が言い、冬希と植原がうなずく。

「それでは、また」

 立花が言い、2人で並んでホテルのロビーから出ていく。仲良く話しながら、歩いていく2人の姿を、冬希はしばらく見送った。

「じゃあ、俺たちも」

「うん、青山くん、またね」

 植原と雛姫も、2人並んでエレベーターの方に向かっていった。

 その姿を、冬希は1人でポツンと見送った。


「福岡は、これからが本領を発揮してくると見るべきだろう」

「ああ、アシストも4人。中でも立花と舞川は強力だ。士気も高く、チームワークも強固なものになっているだろう」

 冬希たちの部屋には、船津と郷田が来ており、2人は窓際で今後の展望について話していた。

 郷田は3年になっての転校生だが、船津とは馬が合うようで、2人でこうやって話している姿を、チームメイトたちは良く目にしていた。

 そこに、冬希が戻ってきた。

「どうしたんだ?変な顔をして」

 柊が、冬希の顔を覗き込む。

「なんか、意地悪してやろうと思ったら、逆に寂しい思いをしてしまったというか・・・」

「なんだ、お前。熱でもあるのか?」

 柊が、ベッドの上に腰掛けた冬希に近づき、自分の額を冬希の額につける。

 柊の顔を間近で見る。あゆみに負けず劣らず、綺麗な顔をしている。

「柊先輩、俺と結婚してください」

「ぎゃーーーーー離せーーーーー!!!」

 冬希は思わず、柊に抱きついて、ベッドに押し倒した。

 ドタバタやっている2人を見て、船津と郷田は、うちのチームも、きっと仲の良さなら福岡に負けていない、などと言っている。

 そんな状況を、潤は「うげっ」と言いながら、ドン引きして見ていた。

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