エンデューロに参戦①
冬希はレースへのエントリーを決めた。
入試のセレクションが、どのような形で行われるかわからない以上、一通り色々体験しておくべきだと思ったからだ。
自転車レースには以下の種類があるらしい。
▼クリテリウム
周回コースを決まった周回走り、一番にゴールした人が優勝
▼エンデューロ
周回コースを決まった「時間」走り、一番多く周回した人の優勝。
同じ周回の場合は、一番にゴールした人が優勝。
▼個人タイムトライアル
決められたコースを一人ずつ走り、タイム計測して一番タイムが短かった人が優勝。
▼ヒルクライム
自転車で山を登る。といっても舗装された道だが。
タイム計測で、一番タイムが短かった人が優勝の場合と、一番先にゴールした人が優勝の場合もある。
タイムトライアルには、チームタイムトライアルというのもあるらしいが、一緒に走る友達がいない自分には関係ないと、あまりちゃんと調べていない。
とりあえず、インターネットで調べた結果、参加できるレースで、エンデューロが見つかったので、エントリーすることにした。
エントリーは「スポーツエントリー」というWebサイトで行うことができ、メールアドレスや氏名、住所、生年月日などを登録し、エントリー料はコンビニで支払いを済ませた。
未成年は保護者の同意が必要ということで、父親の同意はもらってある。
エントリーしたのは、初心者向けの1時間半のエンデューロ。
数日すると、参加証のハガキが届いた。
開催場所は、フレンドリーパーク下総という、サイクリングロードが整備された運動公園だ。
自宅から花見川へ出て、印旛沼から利根川に出て、利根川のサイクリングロードから常総大橋まで行けばすぐだ。
だが、そこまでが遠い・・・。
距離は片道50km弱。いつも走っている距離に比べるとまだ大丈夫・・・のはずだが、今度は現地で1時間半レースをしなければならないのだ。
無事に帰ってこれるか若干不安になる。
レース当日。
朝4時半に起きて、コンビニで買っておいたパスタを食べる。
着替えとトイレを済ませ、朝5時に家を出て薄暗い中をひた走る。
今日はレースが控えているので、あまり頑張らない。ペースを上げすぎないように気を付けながら走る。
車道を走るのはまだ怖いので、出来るだけサイクリングロードを辿っていく。
花見川のサイクリングロードから印旛沼のサイクリングロード、そして利根川のサイクリングロードで常総大橋まできて、坂を下るとすぐにフレンドリーパーク下総が見えた。
公園に着くと、もうすでに何人かが談笑しながらコースを走っている。
冬希は駐車場へ続く坂を上っていくと、公民館の駐車場のあたりから軽快な音楽が聞こえてきた。
音楽の方へ下っていくと駐車場があり、すでに多くの車が停まっていて、それぞれ自転車を組み立てたり着替えたりして準備を進めている。
みんな速そうだ。初心者ばかりじゃなかったのか?
一気に緊張してきた。
駐車場から公園のサイクリングロードの向こう側。公園内の芝生に受付のテントがあり、冬希は自転車を立て掛け、走っている人たちの邪魔にならないように、コースを横断して受付に向かった。
受付は簡単で、参加証のハガキを出すだけ。
代わりにゼッケンと、タイムを計測するチップを渡された、
試走している人が、コース上に設置されたゲートを通過するたびに、「ピッ」「ピッ」って言っているのがそれだろう。
その他に、4時間分のエネルギーがチャージされるというゼリーと、参加賞のボトルが貰えた。
ボトルは、お店で買ったもの一本だけだったので、助かった。
駐車場入り口の水道で、軽くゆすいで水を入れ、ボトルケージに差し込む。
8時は少し過ぎたけど、8:30まで練習走行(試走という)をしていいということだったので、そのままコースを走ってみる。
コースは一周1.5km。結構広い。
芝生の広場の横を通り、サッカーグラウンド、テニスコートを過ぎて下り坂。
野球グラウンドの周りをぐるっと回って、最後は上り坂でゴール。
自転車レースのゴールは、最後はスピードが出るので、安全のために上り坂になっていることが多いらしい。
一周走って駐車場に戻ると、計測タグを、自転車のフロントフォークに取り付ける。
さらに、ゼッケンを安全ピンでウェアに着ける。
これで準備は大丈夫かな。
周りの人と比べて、自分におかしいところはないかとチェックしていると、芝生広場のステージらしき高台から、マイクを通して参加者へ呼びかけがあった。
ライダーズミーティングがあるらしい。
ライダーズミーティングでは、各種の注意事項があった。
最近、転倒による事故が多いので、気を付けるようにということだった。
エンデューロには、チーム参加の人たちもいて、交代ゾーンが用意されているので、交代ゾーンに入る時には、後ろの人のために合図をするようにとのこと。
これは重要だから覚えておこう。
暫く注意事項が続いた後、9時のスタートまで一旦解散になった。
解散になったと思っていたけど、スタート地点には多くの自転車が、地面に倒れた状態で置かれており、みんなそこに戻っていった。
どうやら、前の方からスタートしたい人たちが、場所取りをしていたようだ。
冬希は邪魔にならないように、後ろの方にそっと自転車を置いた。
前の方はなんだかちょっとピリピリした雰囲気だけど、後ろの方は女性の方や小学生ぐらいの子もいて、なんかほのぼのして安心する。
緊張して胃が痛くなるような感覚の中、スタート時刻が近づいてきた。
スタッフの方がハンドマイクを構える。
今まで、それなりに走りこんできたはずだ。多少は勝負になるかもしれない。あとケガしないように気を付けよう。ほかの人にぶつからないように気を付けよう。
号砲がなり、初めてのレースのスタートが切られた。
▼フレンドリーパーク下総
https://www.city.narita.chiba.jp/bunka_sports/page327800.html