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第2ステージ 表彰式

一、僅差


 リザルトが出た。

 冬希が1位で、松平幸一郎(福島)が2位だった。


 リザルトが発表される前に、係の人が、ステージ優勝の表彰式の準備をするように、冬希に告げに来た。

 冬希は、松平の方を向いて一礼すると、松平の方でも察したようで、軽く手を挙げ、チームメイトと共に自分たちの待機エリアへ戻っていった。


 冬希も、チームメイトと自分たちの待機エリアへ行き、総合リーダーのイエロージャージから、通常の神崎高校のサイクルジャージに着替える。

 表彰式の時は、そうするルールになっている。

 まだ2つ目のステージの表彰式だが、冬希は5回目の表彰台なので、もう要領はつかめてしまっていた。

 ステージ優勝の表彰式から。

 トロフィーを貰い、掲げる。歓声が沸き上がる。

 あらゆるカメラが冬希を撮っている。

 インタビューが始まる。

「きわどい勝負でした」

「はい、終わった直後は、完全に負けたと思っていました」

「中間スプリントでは、松平選手に負けてしまいましたが」

「はい、あそこは実力の差が出ました。ボーナスタイム1秒獲りに行ったのですが、甘くなかったです」

「しかし、ゴールスプリントでは、勝ちました」

「展開が上手く嵌りました。おぜん立てをしてくれたチームの先輩方に感謝です」

 冬希は、インタビューでは本心を話そうと心に決めていた。

 嘘を言っても、わかる人にはわかってしまうし、質問してきている人や、聞いてくれている人には最大限の誠意をもって答えたいと思っていた。

 

「1年生による、第1ステージからの2連勝は、慶安大付属の内田公輝選手以来、8年ぶり二人目となります」

「自分は、展開に恵まれただけで、前の記録と内容は比べるべくもないですが、数字の上だけでも並べたのは光栄だと思います」

「記録更新を期待しています」

「ありがとうございます」

 さすがに冬希も、誰?とは言えなかった。


二、表彰式


 冬希は、総合成績1位の表彰式、スプリント賞、新人賞の表彰式にも出た。

 インタビューは、ステージ優勝の時にされたので、省略された。

 山岳賞は、逃げた四王天(京都)が獲得し、こちらはインタビューを受けていた。

 

■第2ステージ結果

1:青山 冬希(千葉)121番 

2:松平 幸一郎(福島) 71番 同タイム

3:坂東 輝幸(佐賀) 441番 同タイム


※1位にボーナスタイム-10秒、2位に-6秒、3位に-4秒が与えられる


■総合成績

1:青山 冬希(千葉)121番 0.00

2:坂東 輝幸(佐賀)441番 +0.13

3:尾崎 貴司(静岡) 1番 +0.14


■スプリント賞

1:青山 冬希(千葉)121番 113pt

2:坂東 輝幸(佐賀)441番 66pt

3:草野 芽威(島根)321番 55pt


■山岳賞

1:四王天 薫(京都)261番 2pt

2:舞川 祐樹(福岡)402番 2pt

3:坂東 輝幸(佐賀)441番 1pt


■新人賞

1:青山 冬希(千葉)121番 0.00

2:植原 博昭(東京)131番 +0.20

3:立花 道之(福岡)405番 +0.27


 スプリントポイントのリーダーは、相変わらず冬希だったが、2位が坂東になったので繰り上がりでグリーンジャージを着るのは坂東となった。


三、静岡 1番 尾崎 貴司(3年)


 総合2位が入れ替わり、第2ステージでコンスタントにボーナスタイムを貯めた坂東(佐賀)に抜かれた形になった。

 だが、尾崎にとっては、どうでもいい話であった。

 坂東は、勝利への執着という意味では、恐るべきロードレーサーではあるのだが、山岳も含むステージレースでは、尾崎の敵ではなかった。

 中間スプリントで-3秒、ゴールスプリントで-4秒のボーナスタイムを獲得したが、それはスプリントポイントを獲りに行った結果の副産物でしかないであろう。

 問題は、千葉のエース青山だ。

 今日の第2ステージで、逃げを早めに吸収する提案を、自ら持ってきた。

 レースの道中、自分から逃げを捕まえることも、先頭交代に加わることも無く、チームに温存されていた。

 状況のすべてが、彼が千葉のエースであることを物語っていた。

 だとすると、問題は彼が生粋のスプリンターなのか、総合系でも戦える選手なのかという点だ。


 他のスプリンターと体型を比べると、松平(福島)のような筋肉ダルマでもなく、柴田(山梨)のような洗練された肉体美を持つわけでも無い。

 胸板はそれなりに厚いが、身長が高い為か、線が細く見える。

 昨年、2年生で第1ステージから第4ステージを連勝し、突如として海外へ渡った元東京代表、慶安大付属の露崎隆弘に近い気がする。

 

 尾崎にとっては苦々しい思い出だった。圧倒的速さで、断トツの総合リーダーになっておきながら、国内に敵なしと言って、途中で海外へ渡っていった、完全無欠のオールラウンダー。

 尾崎が昨年、総合優勝を手にすることが出来たのは、露崎が戦線を離脱したからだと言われ、尾崎自身もそう思っていた。

 なので、今年は第1ステージから勝ちに行き、露崎と同じ連勝を狙ったのだったが、その青山冬希に阻止されたのだった。

「第4ステージ。青山を徹底的にマークする必要があるな・・・」

 尾崎は、次の第3ステージではなく、さらにその先の第4ステージを見据えていた。

 

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