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千葉県代表チームの隙

 国体の関東甲信越ブロック大会は、平坦ステージと上級山岳ステージの2レースが行われ、獲得したポイント数により順位が付けられ、本戦出場選手の人数が割り当てられていく。

 各県のチーム内で、一番上位でゴールした選手の順位をもとに、県ごとに順位がつけられる。

 つまり、1つのチームの選手が1番から4番目まで上位を独占したとしても、集計に使用されるのは1位の選手の順位だけで、チームとしての2位は、5番目にゴールした選手のいるチームとなる。

 1位のチームは5名、2位は4名、3位から5位は3名、6位から10位までは2名しか本戦に出場できない。

 各ステージで1位25pt、2位18pt、3位15pt、4位12pt、5位10pt、6位8pt、7位6pt、8位4pt、9位2pt、10位1ptとなっており、第1ステージと第2ステージの獲得ポイントの合計で順位が決まる。複数チームが同ポイントの場合、2つのステージでの最高順位が上のチームが、チーム順位の上位となる。

 東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県の計10都県は、各4名でチームを組んで出場してきている。

 つまり、ブロック大会に出場している選手達で、本戦でも全員出場できるのは、5名と4名の枠が与えられる上位2チームまでということになる。チーム内の優先順位が低い選手は、自分が本戦に出場するため、死に物狂いで走ることになる。


 東京代表チームのテントでは、チームリーダーの植原が中心となり、ミーティングが行われていた。

 メンバーは、同じ慶安大附属の2年生、麻生と夏井、それに中学生の伊佐だ。

「青山冬希は、突出したトップスピードと、キレのある加速力で、国内では敵なしと言っていい実績を残していた。真っ向からスプリントして青山に勝ったのは、露崎さんだけだ。だが、その分スプリントの持続距離が短く、惰性でゴールになだれ込める降り、もしくは平坦基調のゴールの場合は130m、多少の登りゴールの場合はに至ってはゴール前100mから仕掛けている」

 植原は、伊佐に言い聞かせるように説明している。

「青山のようなタイプのスプリンターの場合、ゴール前で横並びでヨーイドンのスプリントでは滅法強いが、ゴール前である程度の距離を先頭から離されている場合、長続きしない脚を追いつくために使ってしまう。実は器用さに欠ける脚質なんだ。では何故勝ち続けられているか」

 伊佐も、食い入るように聞いている。

「青山には、どんなレース展開でも、勝負できる位置まで引っ張り上げてくれる強烈なアシストが居たからだ。郷田隆将選手。今年の全日本チャンピオンだ。しかし、郷田選手は今日のレースには出場していない」

「郷田選手は居ませんが、その代わりに千葉のアシストに大川選手がいますよ」

「ああ、個人タイムトライアルで全国トップクラスの実力者だ。一定のペースで走ることに長けた強力なルーラーだ。しかし、大川選手はロードレースを走った経験が少ない。厳密に言えば、少なくはないのだろうが、ロードレースで全国の強豪と戦ってきた神崎高校の平良兄弟や青山冬希との実戦経験の差は明らかだ」

 植原は、メンバー全員を見渡し、伊佐のところで視線を止めていった。

「最終周までにアタックをかけようとするチームが居たら、追う。それは麻生さんと夏井さんがやる。伊佐は、大川選手の隙を見逃すな」

「わかりました」

 作戦会議が終わり、伊佐はテントの外に出る。

 植原からは、他の都県の選手の名前は、1つも上がらなかった。伊佐はその点、疑問に思ったが、植原は、他の選手は気にしなくていいと、まるで取り合ってくれなかった。

 青山冬希という選手は、そこまで恐るべきスプリンターなのだろうか。

 千葉のテントの方から、平良柊と青山冬希が歩いてきた。平良柊は、何かを探しているように、キョロキョロとしている。

「冬希、先に戻ってろ。俺はしょんべんする場所を探す」

「電柱ですか?」

「トイレだよ!!」

 犬かっ、と柊はぷんぷんと怒って歩き去っていく。冬希は、やれやれと千葉のテントの方に戻っていった。

「恐るべき・・・選手?」

 伊佐は、しばらくずっと首を傾げていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 電柱はずるいw
[一言] 柊いじりすこですww
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