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出願

神崎高校のスポーツ推薦のセレクション内容が、ヒルクライムでも、タイムトライアルでも、クリテリウムでも、なんだったら蕎麦屋の出前レースでも、受験することは決めていた。


そこで、冬希は受験の意思を、担任の安田先生ではなく、副担任の橋口先生へ相談した。


冬希は、担任の教師を一切信用していなかった。

願書に難癖をつけて受理しなかったり、もしかしたら願書を送るのを忘れていたとか、そんなものは受け取っていないと言い出して、受験出来ずに終わるかもしれない。


冬希は、中学を卒業したら二度と会わないであろうこの男のことを、出来るだけ考えたくなかった。

ここまで関係を悪化させた理由が自分にあるとは、どうしても思えなかったのだ。


彼女は、冬希が安田から不当に扱われていることを知っていたため、安田には話さずに、直接学年主任の浜池先生へ話を通してくれた。


安田は、温厚なおじさん先生といった風貌だったが、先日の女子生徒へのラブレター事件で、教師間での安田への認識も変わりつつあった。


浜池も、橋口からの安田の冬希に対する接し方についての状況説明を、頭から否定することもなく、バーコードになっている頭を押さえながら聞いていた。


「安田先生に任せるのは問題があるということはわかった。手続きは私の方でやろう」

「ありがとうございます。本当に助かります」

「だが、本校のルールで、調査書だけは担任が書くことになっている。そこは変えられんぞ。橋口先生、調査書のフォーマットに指定はあるのか」

「いえ、入試要項には、フリーフォーマットという一文のみ書いてありました」

「わかった。じゃあ、うちの学校の形式で書かせておく。確実に期限までにな」


苦労させる人が多いせいで頭がバーコードになってしまったのか。

頭を押さえながら、浜池先生は、進路指導室から出ていった。


授業中に冗談を言ったりはしないが、この理科担当の学年主任のことを、冬希は嫌いではなかったし、好意的に思っている生徒は多かった。


願書締め切りまで2週間。受験日までは更に1か月。


冬希にできることは、自転車の練習と学力の底上げだけだった。

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