表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/391

何かを辞めるのにも、エネルギーが要る

表彰式の対象は、3位以上の選手で、表彰台に上がって、表彰されていた。


6位の冬希は、受付で賞状と賞品だけ受け取った。


賞品はホイールバッグだった。

高そうだが、ホイールは現在ついている2つ以外持っていない冬希に、使いどころがあるかどうかは微妙だった。


冬希は、いまだに信じられない気持ちでいた。

6位入賞。それも、あれほどの大人数の中でだ。


それが自分の実力だとは思わない。

レースは、ずっとプロのチームが引っ張っており、一度も先頭を曳かなかった。

冬希自身は、前を走る選手の後ろを、ずっと走っていただけ。


他の多くの選手が、集団から脱落していくことによって、結果的に入賞できただけだ。


ただ、8年間も勝てない柔道を続けてきた冬希にとって、その6位の賞状は、何物にも代えがたい特別なものに思えた。


帰宅後、なんとなく姉に聞いてみた。

「なんで俺、8年間も柔道やってきたのかな」

「はぁ?なに、いきなり」

気持ち悪いっと、ゴミを見るような目で見てくる。


「辞めようと思うほどの、何かが無かっただけでしょ。何かを始めるには、大きなエネルギーが要るけど、何かを辞めるにもそれなりにエネルギーが要るからね」

「辞めるのにも?」

「そう。だって環境が変わるわけだから。自分の意志で環境を変えるのって、すごい大変なことなのよ?」

姉は、冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに注ぐ。


「何が何でも続けたいと思うほど、好きでもなかったかもしれないけど、何が何でも辞めたいって思うほど嫌でもなかったんでしょ」

「え、キツかったし、いじめっ子みたいな嫌な奴もいたし、だいぶ辛かったんだけど」

「そういう時でも辞めるって発想はなかったでしょ。流され体質っていうか、あんたはそういうところあるから・・・」


流され体質・・・そうかもしれない。


「今まで辛い思いをした分、きっと今後が楽しいと思えるだろうから、まぁ、それも悪いことじゃなかったんじゃない」


そうかもしれない。

今は、自分からやりたいこともできた。

最初は、スポーツ推薦での入試のために始めた自転車だったが、今は趣味であり、特技と言ってもいいかもしれない。


スポーツ推薦がダメだった場合、恐らくまた神崎高校を一般入試で受けることになると思うので、今度こそ死ぬ気で勉強しなければならない。

その前に、もう1レースぐらい出ておこうと手ごろなレースを探す。


JCSCというところが主催するレースがある。

日本サイクルスポーツクラブ協会というらしい。


場所は、前回惨敗したフレンドリーパーク下総で、初級クラスが10周。

事前に登録申請が必要なようで、申請を行い、後日エントリーまで完了した。


そして、ついに神崎高校のスポーツ推薦入試の、入学試験要項が掲出された。

問題のセレクションの内容は、渡良瀬遊水地での、タイムトライアルだった。


「がーん・・・」


冬希は項垂れた。

ヒルクライムほどではないが、たぶん2番目に苦手なやつだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ