異形の子ども
アノ男ガ殺シタ
重ぐるしい薄紫の空
天と地の境が曖昧な空間に
裁判官席、その前には少年が立つ証人台がある。
少し離れた被告の席には
笑っているのか
泣き出しそうなのか
判断のつかない異様な表情をした、愚鈍そうな大男が座っている。
裁判官は言った
「罪を追った者は決して逃げられ ない」
裁判官は鐘を鳴らした。
淀んだ空気を裂くようにその音が響く。
モヤモヤっとした霧が立ち込み始めた。
その霧の中から何人もの子どもたちがゾロゾロと現れ
ゆっくりと男の周りに集まる
異形な姿をした子ども
大人に殺された子ども
真っ白な肌 白目が全くない黒い目をした子ども達の群れ
そのすべての手が男を捕まえようとしている。
「ガタンっ!」
愚鈍な男は怯え始め、逃げようとして椅子から転げ落ちた。
…遠くには何万という人々が列をなしている。
裁判の様子を興味しんしんと見る者、我関せずといった顔をしている者、真っ青な顔で震えながら見ている者
黒い目をした子供たちは
逃げようと床を這いずる男の周りにさらに群がっていく。
ヤメロ ヤメテクレ…
ワルかった、ユルシテクレ
来ルナ…
男は霧の中へゆっくりと引きずり込まれて行き
最後の断末魔の後見えなくなった。
…男は亡者達に生きたまま喰われ、もがき続ける事になる。