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AI  作者: 陰宗
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第8話 不知夜月

今、一つの物語が終わろうとしている。いや、始まろうとしていると言った方が正しいのかもしれない。


机の上に置かれている一枚のタブレット。アンドロイドが配布される際に皆に配られるタブレットだ。その闇の深さは深淵を思わせ、一切の無駄を切り落としたメタリックで無骨なフォルムは冷徹で非道なイメージを沸き起こさせる。そこに、一件のメールが送信されていた。


「あなたのアンドロイドを初期化してください」


何を言っているのかわからなかった。いや、頭が理解しようとしなかった。だけど、アイちゃんがピンチだということだけは理解することが出来た。


「あなたのアンドロイドは人間に対して犯意を抱きました。手順に従い、アンドロイドの初期化をしてください。なお、三日後の5月15日に代えのアンドロイドと共に回収に参ります。ご迷惑をおかけしますが、これからもWOP社をよろしくお願いします。」


WOP社。アメリカの会社だ。正式名称はWorld Order Protect Corporation。直訳すると世界の秩序を守る会社だ。ダサい。余りにも大企業なうえ、専用のタブレットにメールがきているから、おそらくイタズラメールとかの類ではない。


「あの事件」がおきてからアンドロイドの安全性が向上したということを聞いた。そう、ニューヨーク無差別テロ事件。死傷者32名、軽度・重度の怪我人188名のアンドロイド廃止の世論が一層高まる原因となった事件。風の噂によると、一人の男が自分の手持ちのアンドロイド10体に自分以外の人間への犯意の気持ちを抱かせ、テロを起こしたということらしい。


ヒヤリと首筋に冷たいものが走る。マズイ、マズイまずいマズイまずい!


予感は的中してしまった。


「え、そんな、どうして……!」


背後に音も無く立っていたのはアイちゃんだった。いや、音はあったのかもしれないがメールの衝撃で何も聞こえていなかったのかもしれない。


「ご主人様。私は消されるんですか?」


何も答えられなかった。答えられるはずがなかった。ここでアイちゃんを初期化しなければ僕は社会に消される。そして、その後にアイちゃんも消される。どうすれば良いのかなど一目瞭然。迷うことすら愚かだ。


「アイちゃん……」


「ここで消されるくらいだったら……!」


今宵は不知夜月。「いざよい」というのは古語、「いさよう」からとられたのだという。ためらう、という意味を持つ不知夜。その言葉を冠す月が今宵出たのはただの偶然であろうか。空に出た月は静かにこちらを見て、深い深い雲の底にひっそりと隠れてしまった。

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