第1話 繊月
僕には好きな人がいる。いや、厳密に言うと人じゃない。アンドロイドだ。
彼女は顔が可愛くて、真面目で、何をやらしてもそつなくこなす。そんな、クールな彼女を見ているとつい、イタズラをしたくなる。
「アーイちゃん! 」
料理を作っているけど構わず後ろから抱きつく。
「ご主人様、調理中ですので。怪我をしてしまいますよ」
いやー、アイちゃんは可愛いなぁ。
今にも流れだしてしまいそうな、艶やかでサラサラした黒髪。普段は肩まで髪をおろしているが、料理中に髪が入らないためか今はポニーテールにしている。包丁で食べ物を切るたびに、リズミカルに髪が揺れる。まるで、大草原を駆け巡る馬の尻尾だ。アイちゃんの髪を見ていると、今にもパカラッパカラッと大草原を疾駆する馬の蹄の音が聞こえてくるようだ。
そして、なんといっても素晴らしいのはアイちゃんのスタイル。キュッキュッボンのこの感じ。まさにベスト!身長も160センチと、僕の身長からしたらちょうどいいサイズだ。後ろから抱きついた時のちょっとプニってしてるところもいい。個人的にはもう少しぽっちゃりでもいいかなぁって思うけどね。
最後は顔だ。一世代前の漫画で書かれたキャラクターのような感じ。例えるなら、君に届けという漫画の黒沼爽子。二百年ちょいくらい前の漫画で知ってる人は少ないけど、禁止リストに入っていない漫画だから読もうと思えばすぐ読める。
それにしても、本当に運が良かった。あの事件が起きてからアンドロイドは配給制になってしまって、一人一台までしか持てなくなってしまった。そんな中でアイちゃんが僕の下に送られてきたことはまさに奇跡。いや、運命というべきか。
「……様? ご主人様? どうしました? 突然黙られて? 」
「いや、お前のことを考えててな」
アイちゃんは、恥ずかしそうにうつむく。うん、可愛い。
「あ、あまりからかわないでください」
「からかってないよ。本気だよ。」
「も、もう! 調理中ですのでくっついてないでどいてください! 」
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夜!飯時!アイちゃんの美味しい晩御飯!
今日の晩御飯はシチューだ。ん〜、絶品。口の中に牛乳のまろやかな甘みが広がる。人参やジャガイモもちょうどいい大きさに切ってあって食べやすい。最高だね。
夕食を済ませて僕とアイちゃんはベランダに出る。街の灯りが幻想的で美しい。昔は夜空にこのような光景が浮かんでいたのだろうか。今となっては見る影もない、月だけの夜空を見上げて言う。
「月が綺麗ですね」
「それは……どういう意味ですか? 」
「こういうときは、ただ、死んでもいいわっていうんだよ」
アイちゃんのほおが紅く染まる。そのほおの色は椿のようで、いつかポトンと落ちてしまいそうで、愛おしくて、儚げだった。
きっと僕は、アイちゃんのあの表情を、あの言葉を、生涯、忘れないだろう。
結構気合い入れて取り組みました。数々の伏線やギミックを小説の中に入れたのでこの後の展開でああ〜となってくれたら嬉しいです。お楽しみください!言い忘れてましたがこの作品のタイトルはAIです。