悠斗の修行ー序ー
時刻は既に昼を越し、夕方に近づいていた。
ゆったりと沈みかけている陽がオレンジ色の輝きをもたらし、室内を仄かに染め上げる。
そんな孤児院の中の元・祈りの間では三人の大人が二人の子供を囲んでいた。
「で、お前ら何か言うことは?」
「「ごめんなさい.......」」
誤解のないように言っておくが、別にリンチしている訳では無い。
さきの騒動に巻き込まれた二人の少年少女だが、そもそも彼らがただ訓練をするために外に出たなら、十分すぎる広さを持つ孤児院前にいるはずだ。
つまり、彼らの本来の目的はそっちではないことになる。
冷たい言い方だが、これは半ば彼らの自業自得でもあるのだ。
年長者として、クレド達は二人の少年少女ーーーアゼルとフランを叱らないといけない。
そしてわざわざその憎まれ役を買ったのが、クレドだった。
「.......別に外に出るな、って言いたい訳じゃねぇよ。だが、お前らはまだ子供。半分位は俺の責任だが、少なくともここらが力の無いガキだけで歩いて良い場所ではないことは確かだ。なのにお前らはたった二人でほっつき歩き、あのザマだ」
「「.......っ」」
「話せ。なんであんなことした?」
小さな体を震わせる二人に、クレドは容赦なく冷たい言葉をかける。
だが、彼のことをよく知る人間にはその言葉に深い親心、いや兄心が込められていることがよく分かった。
「「.......」」
「だんまり、か」
何も言わない二人。
だが、彼らは決してクレドから目を離さなかった。
「.......エルザ、来てくれ」
「私?」
クレドは後ろに控えていた二人の義母、エルザを呼ぶ。
クレドの元まで来た彼女をそのまま待たせ、クレドは二人に声をかけた。
「ほら、立て。言いたいことがあるんだろ?」
「.......っ!」
促すように背中を押し、クレドはシャルルと共に後ろへ下がった。
「.......」
戸惑うように棒立ちするエルザの前には、覚悟を決めるようにギュッと目を瞑って、開いた少年少女が。
「「お、お義母さん!これを.......っ」」
二人一緒に声を合わせ、差し出したのは包みに覆われた何か。
それを受け取ったエルザは、二人に「開けてみて」と言われるがままに、丁寧に包みを開いて中を見た。
「これって.......お洋服?」
包みの中身、それは翡翠色に染められた絹のドレスだった。
手触りは上々で、色艶も美しい。
エルザ程の美女が着れば、豪奢な衣服に身を包んだだけの貴族女性達よりもその美しさが際立つだろう。
だが当然、そんな立派な物をただの子供達が変えるわけが無い。
とはいえ、包みがちゃんとある以上、盗んだというのは無いだろう。
「これ……どうしたの?」
両手で広げながら服を持って、エルザは子供達に問うた。
盗みでなければ非合法な手段か。
とにかく、一体どうしてこんなモノを渡したか、気になった。
「……お義母さんへのプレゼントなの」
「最近、お義母さん同じ服しか来てないから、お金が大変なのかなって思って、二人でお金貯めて買ったんだ」
「……っ!?」
エルザにとって予想外の答え。
まさかこの高そうな服が自分へのプレゼントだと思わず、一瞬目を丸くして、その後に瞳に涙を溜めた。
「ありがとうっ!」
服を机に置き、二人をエルザは優しく抱きしめた。
貰ったモノが上質な服だからでは無い。
ただ二人が、自分の子供がくれたということが嬉しかった。
そんな様子をクレドとシャルルは、とても微笑ましそうに見ている。
「でも一体どうやってお金を貯めたの?」
「僕達のお小遣いだけじゃ足りなかったから、クレド兄ちゃんに頼んだ。そしたら『事情は聞かない。でもタダで金を渡すわけには行かないから、俺の手伝いでもしろ』って言ってくれて……」
驚いた表情でクレドを見るエルザ。
だがなんでもないような顔をしているクレドを見て、エルザは彼の意図を汲み、子供達を褒め続けた。
ここで、本来ならエルザお義母さんによる微笑ましいニヤニヤを頂戴し、クレドは赤面しながら誤魔化すという一連の流れがあるはずなのだが、エルザが珍しくその役割を放棄したため、シャルルが引き継いた。
「……なんだよ」
「いや、別に。素直じゃないねぇ、て思ってなんかいないよ?」
「思ってんじゃねえか!」
羞恥からか、繰り出された拳をシャルルは悠々と躱す。
親友であり切磋琢磨し合う好敵手同士だった彼らは、幼き頃より何度も何度も手合わせや訓練を共にしてきた。
今更、強化もされていない拳がシャルルに当たるわけないのだ。
「ちっ!」
「ふふふ、甘いよクレド」
渾身のドヤ〜顔がクレドの頬を引き攣らせる。
怒りの決壊はもう目前。
「くくくっ、面白いじゃないかシャルル。表出ろや」
満面激怒のお顔で肩を掴むクレドにシャルルはからかい過ぎたかなぁ、と思いつつ、顔を青くして弁明する。
ひとえに、クレドとの喧嘩を避けるために。
「お、落ち着きなよクレド。まずはその手を離してくれ。死ぬほど痛い。それに子供達の前だ。僕らが喧嘩するのは良くないと思うんだ。うん」
「はっはっはっ、知らん」
ギチギチ。
いくらクレドの拳を避けれるとは言え、それは彼が慣れているだからであって、シャルルの肉体強度は決して高くない。
肉体的貧弱な魔道士の肩は魔法拳闘士であるクレドの握力によって悲鳴の如き軋みを上げていた。
そもそも、この場でクレドとやり合うこと自体が負け確定だ。
なんでもありの戦いなら、広域制圧や変幻自在の攻撃手段に長けたシャルルが有利だ。
だが、ここらは人の生活圏。周囲の建物を壊さないように、人を巻き込まないように立ち回るには、クレドは相手が悪すぎる。
「ちょっ、悪かったから……離して」
「はははははは」
肩を組み(強制)、微塵たりとも笑っていない目でシャルルを強制連行するクレドだったが、孤児院の扉を開けた瞬間、目を丸くした。
「何してんだ、ユウト?」
「っ、師匠……」
何せ扉の向こうでは、彼の弟子がまごまごしていたのだから。
☆☆☆☆☆
禁忌研究所の尖兵、タルザード・ルクセントを退け、彼の置き土産となった黒ローブ達の成れの果てを始末して戻ってきた悠斗は、孤児院の前でまごついていた。
元々人付き合いが得意な方ではなかった悠斗だが、それも関係なしに今この状態で孤児院に入るのは気まずかった。
というのも、いくら子供たちを助けるためとは言え、保護者と本人達の前で子供達を殺しても構わないと言い放ち、挙句の果てに地獄絵図を見せつけた。
これで何事もなかったように入れれば、そいつの面の皮は鋼鉄で作られているのかもしれない。
そんな訳で、悠斗は今中々孤児院の扉を開く覚悟が決められなくてまごついていた訳だ。
是が非でも生き残る覚悟や例え何百人を殺そうとも大事な人達を守る覚悟はあっさり決まるのに、こんな簡単なことも容易く決められないのだから笑えてくる。
そうして、まごまごしている内に、孤児院の扉が勢い良く開かれた。
「何してんだ、ユウト?」
「っ、師匠……」
如何なる神の嫌がらせか、向こうの方から先にやって来てしまった。
このままでは永遠に動かなかったかもしれないので、有難いと言えば有難いが、これでは覚悟も何もあったもんじゃない。
「……取り敢えず入れ」
クレドもまた気まずいのか、短い言葉だけ告げて中へと引き返す。クレドと肩を組んでいたーーー組まされていた?ーーーシャルルが一瞬ホッとしたような顔をしたのは、気のせいだと思いたい。
悠斗は息を整え、内心「ええい、ままよ!」と叫んでクレドに続いた。
クレドとシャルルが仲良く(?)している間に、エルザとアゼル、フランの会話はほとんど終わっていた。
そして二人の子供達は中に入ってきた悠斗を見て顔を強ばらせる。
それは悠斗も同じで、子供を見た後一瞬硬直したがすぐに二人の元へ向かって、
「ごめんなさい」
と謝罪し、頭を下げた。
「「へ?」」
悠斗がいきなり謝ると思ってなかったのか、二人は驚きを見せ、少し間抜けな声を上げた。
そんな二人のことを知ってか知らずか、悠斗は顔を上げ、二人を見据えて淡々と語る。
「言い訳にしか聞こえないと思うけど、僕はあの時君たちを助けようとしていた。君たちを傷つけないように助けるにはああ言って気を逸らすしかなかったんだ。でもそれで君たちを傷つけたのは事実。だから、許して欲しい」
再び頭を下げる悠斗。
アゼルもフランも何も言わない何もしない。
いや、言えないし出来ないが正しいか。
あまりにも目の前の少年と黒ローブを脅していた悠斗が結びつかず、彼らの頭が現在を処理しきれていないのだ。
彼ら自身、悠斗がなんのためにあの言動を取ったかは知っている。
だが、それでもあの冷たさと殺意はどこか本物地味ていて、まだ十年しか生きていない少年少女達にとっては恐ろしすぎた。少なくとも、幼い彼らに軽くトラウマを刻むくらいには。
だからこそ、今目の前で自省の色が浮かぶ表情で頭を下げている少年が不思議だったのだ。
「あ、頭を上げてください。その……怖かったのは事実ですけれど、後から考えたらなんであんなことを言ったのか分かったし、助けて貰ったのも分かっていますから……。だから、その、ありがとうございました」
そう言って、子供達も頭を下げた。
予想とは違う反応が返ってきて、悠斗は僅かに驚きつつも、胸を撫で下ろして言った。
「……うん。それは良かった」
こうして、どこかたどたどしい子供達の謝り合いは終了したーーーと思いきや、悠斗は二人の前から立ち、今度はエルザの前に立ち頭を下げた。
「事情ありとは言え、貴女の子供達を怖がらせたことを深く謝罪します。ごめんなさい」
頭を深く、深く下げた悠斗からはエルザがどんな顔をしているかは分からない。
ここまでの非礼を働いたのだ。或いは、訓練の話は完全に無くなり、追い出されるかもしれない。それでもまだいい方で、下手すれば攻撃されるかもしれない。
ただ、たとえどうなったとしても悠斗は謝罪だけはしておきたかった。
それが多少なりとも日本国で、それも礼儀作法を重んじる武道の道を歩んだ者としての、誠意であった。
「謝罪は受け取ります」
簡素な一言。
予想よりも声が柔らかく、攻撃の意思もなさそうで少し安心した悠斗が「ありがとうございます」と言いかけた時、エルザは「ただーーー」と続けた。
「私からも謝罪とお礼を。辛い役目を押し付けてしまってごめんなさい。そして子供達を助けてくれてありがとう……っ」
悠斗の手を取り、エルザは頭を下げる。
手から僅かに伝わる震えからは、子供を失うかもしれなかった恐怖と、結果的にそれを防いだ悠斗への深い感謝が感じ取れた。
「……っ」
そして悠斗は何故か動揺していた。
理由は分からない。ただ、
罵倒されると思っていた。
忌避されると思っていた。
激怒されると思っていた。
なのに、そのどれでもなく、感謝された。
それが、悠斗にとっては不思議で。
けれども、どこか嬉しかった。
自分のしたことが、することが間違いだけではないと、少しだけそう思えたから。
その後、悠斗はどう反応したらいいか分からず、あたふたしていた所をクレドやらシャルルに絡まれて、その場はあやふやになって終わった。
☆☆☆☆☆
「で、お前遅かったがどうした?」
アゼルとフランを精神安静を兼ねて休ませるため、エルザは子供部屋へと二人を連れて入って行った。
そしてその場にいるのがクレドとシャルルと悠斗の三人になったところで、クレドはそ 口を開いたのだ。
「それが……ちょっとタルザード・ルクセントと交戦する羽目になってしまって……」
「「は?」」
全くもって想像していなかった単語が飛び出してきて、クレドとシャルルは一瞬呆けた。
タルザード・ルクセントと言えば、最近良く名を聞くようになった組織、禁忌研究所の尖兵であり、かなりイカれた戦闘狂の狂信者でもある、相当に危険な輩だ。
確かに孤児院周辺をうろついているという情報はあったが、何故悠斗と戦っているのか、クレド達には不思議でしょうがなかった。
色々と説明不足なのを感じ取ったのか、悠斗は昼のことを細やかにーーー微妙に脚色してーーークレド達に話した。
「そんなことがあったのか……」
「一応聞くけど、黒ローブ達は?」
クレドが吐き出すように言葉を搾り出し、シャルルは悠斗に黒ローブ達のことを聞いた。
話の中で、黒ローブ達が少なからず禁忌研究所と繋がっていたことを話したからだ。彼らを捕らえれば、情報が手に入ると思ったのだろう。
確かに悠斗自身も、一番情報を知ってそうだったリーダーの男にしか《同調》による情報収集をしていなかった。もしかしたら他のやつなら違う情報を持ってたかもしれないと考えるとあの場で怒りに任せて恫喝したのは浅はかだったと思うが、それを今考えても後の祭りだと考え直してこの思考を打ち切った。
とは言え、聡いシャルルは一連の話から多分男達がどうなったか気づいているだろう。
悠斗が何も言わずに首を振ると、納得したように言った。
「分かった。それにしても、随分大変な目にあったようだね」
「ああ。あいつは曲がりなりにも俺が決死を覚悟しないと行けない程の戦闘力の持ち主だ。そいつから生還出来たのは、かなりの偉業だぞ」
「それなんですが……」
そこだ。
悠斗もそこに違和感を覚えた。
以前クレドが戦ったタルザード・ルクセントは、グリセント王国の中でも圧倒的上位に属するクレドをして勝てるかどうか分からないと言った人間だ。
いくら市街地内でクレドは全力を出せないとは言え、それだけタルザードも強いと言うことの裏返しでもある。
だがあの時、悠斗が戦ったタルザードはどうだったろうか。
確かに強くはあった。対人戦闘経験が極端に少ないとは言え、ランク9の魔物だろうと一人で、それも分で屠れる悠斗が苦戦する程なのだから。
だがその程度クレドにだってできる。どころか、ランク10の魔物だろうと分で倒せるだろう。
そんなクレドが決死を強いられる程の相手なのに、悠斗は終始優勢で、黒ローブ達の変異というイレギュラーが起こらなければタルザードを倒している勢いだった。
いくらクレドが無属性しか使えない、悠斗が反則じみた『闇』を持っているとしても、『電光石火』も無しに追い詰めたというのは、あまりにもおかしな話だ。
相性の問題と言えば、そこまでなのだが、悠斗もタルザードもその時はお互いに『闇』を使い、中・近距離で戦い、接近戦に持ち込むスタイルだった。クレドには『闇』がないが、彼ならば例え闇分身含む三人のタルザードによる闇攻撃も凌いで接近戦で戦いそうだ。
となれば、相性も何もあったもんではない。
「……弱すぎた、か」
「はい。師匠のことを疑う訳ではないですけど、あれが師匠に決死を覚悟させる程だとは思えませんでした」
悠斗の話を聞いたクレドが、深く息を吐いた。
強化して殴るを地で行くクレドは、遠距離攻撃手段が限られており、お世辞にもバリエーションが豊かとは言えないので、タルザードとの相性はあまり良くない。
が、その程度の相性差で勝てる相手ならば、悠斗はとっくに下剋上している。
悠斗とクレドが行っている訓練は、どちらも互いに縛りをつけている。
基本、悠斗は武器なしスキル有り無属性以外魔法禁止が多いが、武器有りスキル無し魔法有りの時や、武器有りスキル有りだけなど、色んなケースでやっている。
クレドも同様、スキル無し魔法有りなどで戦うことが多いが、たまにスキルを解禁することもある。
まあつまり何が言いたいのかと言うと、クレドはたかが相性の悪い中距離多量手数攻撃くらいでは不利にはならない、ということだ。
となれば必然的に可能性は残り二つ。
一つは悠斗と戦った時は調子が優れなかったというモノ。
だが、調子が悪いのにわざわざ開幕全力攻撃をせずに、様子見みたいな戦い方をするだろうか?
調子が悪いと言ってもそこまで深刻ではなく、本人が問題ないと判断したなら対悠斗の時と対クレドの時でここまで感想の差は出ないはずだ。
となると後の可能性は一つーーー
「タルザード・ルクセントは何らかのの手段で自身を強化していた可能性があります」
その可能性を、悠斗はキッパリと言い切った。
最早、クレド達の顔に驚きはない。
そして最悪の可能性を彼らは一斉に思い浮かべた。
即ちーーー
「その手段は、他の人間にも使われる可能性が高い」
スキルの効果ならば、余程のことではない限り悠斗相手に使わないわけが無い。
条件付きならば、そもそもクレドの前に立った時、彼は強くないはずだ。
つまり、タルザードの強化手段は悠斗提案の超強化薬のような外的要因によるもの。
それならば、他の研究所員も強化されている可能性は十分にありうる。
もし敵が保有する銀等級レベルの戦力に、その何らかの強化が施されることを想像すると、ゾッとする所の話ではない。
「とにかく、こうなればユウト君達含め、僕らの戦力強化は確定かな?」
「ああ。マジでエルザに頼んだのは正解だった。ハクバの方はレイラがやってくれるにしても、ユウトの戦い方は複雑すぎるからな」
「それなんですが……日暮れちゃいましたけど、どうするんですか?」
「ん?ぁー、そうだなぁ……」
日は落ち、辺りには仄かに朱が入った藍の空が広がる時間。
戦闘訓練をするには時間的に良いとは言えない。
「なら、今日はクレド達も一緒に泊まって行きなさい。明日から始めましょう」
クレドが何か言う前に、そう提案してきたのはエルザだった。
「いいんですか?」
「ええ。ちょっと狭いけれど部屋も人数分あるわ」
悠斗はチラッとクレドの方を見る。
クレド自身は思案顔。シャルルはクレドに従うつもりなのか特に何も考えていなさそうだった。
確かに、この提案は魅力的なものだ。
王城から孤児院まで、そこそこの距離があったことは間違いないし、明日にすればここに来るまでの時間を代わりに訓練に使える。
ただ、同時に申し訳なさもある。
ほぼ初対面なのに、ここまでしてもらっていいものか、と。
だが、悠斗が思案している間にクレドの考えはまとまったらしい。
「よし。頼むわ、エルザ」
「ええ、頼まれた」
あんまりにもあっさり決まった泊まり掛け確定に、悠斗はつっこむことも忘れて呆然とした。
が、直ぐに我に返る。
「いやいや、そんなさらっと決めていいんですか?てゆうか、明日仕事はどうするんですか?」
「ん、そんなもん無いけど?」
「はい?」
この時、悠斗は知らなかったが宮廷魔道士にはあまり仕事らしい仕事は無い。
強いて言うなら新たな魔法の開発、あるいは研究や実力を高めるための訓練である。
余談だが何人かは例外で、ちょっとした雑務のような仕事をしている人もいるが、それはそれで別給になるのでむしろ美味しかったりする。
「てな訳で、何日かここで泊まっていいか?」
「ええ。ちょうど人手が欲しかった所だもの。構わないわ」
「え、えぇ……」
あまりにもポンポン決められて行くこれからに、悠斗は顔が引き攣るのを止められなかった。
「少しの間だけど、ゆっくりしていってね」
苦笑いを浮かべる悠斗に、エルザは華のような笑顔でそう言った。
悠斗はこれから数日間のことを考えて、顔を引き攣らせながらも、「はい」と言うことしか出来なかった。
ちょっと最後の方雑でしたかね。
戦闘回になれば、もっと楽なんですがねぇ……




