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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第二章 少年少女の戦場
80/112

復讐者の凶刃、守護者の剣

いきなりですが、タイトル変えました。これからもちょいちょい変えるかもしれませんが、御容赦ください。

ごめんなさい。また割に、七千ちょいしか書けませんでした。

遅れた理由について。このシーンは影騎士戦同様、個人的にすごく重要なシーンでもあったりします。なるべく妥協をしたくなくて、ずっと展開を上手くしようと考えていたら、遅れてしまいました。すいませんo(_ _)o ペコリ


「──────貴方に昔、何があった?」


悠斗が発したその問いに、男はしばし呆けた様な顔になり、突如笑い出した。


「く、くはははははははッ!!!」


ひとしきり笑って満足したのか、男は急に真顔になった。


「あァ……そうか。君も(・・)か」


そして何かに納得するような顔でボソリと呟いて、男はゆっくりと口を開いた。


「俺は……そうだな、復讐者なんだ。冒険者と言う存在に対する、ね」


「……」


静かに語られた第一声は、悠斗になんの衝撃をも与えていなかった。

男が悠斗の一言で何かを理解したように、悠斗もまた幾多の切り結びと言動である程度予測していたからだ。


「俺は昔、都市の郊外にあるそこそこの規模の村で衛兵をやっていたんだ。歩法を身につけたのは、その時になる」


少し前まで滲み出ていた狂気は消え失せ、そこには何かを懐かしむ顔をした男がいた。

あまりにも様変わりした男の様子は、白刃達を相手にした時に自分の名前を思い出せなかった男とは思えない。


「とてもいい村でね。住人は皆優しく、隣人間の仲も良かった。俺もそこが気に入っていてね、その村の女性と結婚して、娘も産まれた」


声だけで察せるほど、幸せな生活だったのだろう。

特別なことはなくても、平和な村で、様々な人と交流して、妻と子供と一緒に毎日を過ごす。

それがこの世界においてどれだけ素晴らしことか、想像に難くない。


「俺は弱かった。でも村にいた武芸家や元・冒険者の住人のおかげで小細工で色んな戦い方を教わった。君が抱いた違和感のきっかけは、その時の名残だ」


「……」


男の言葉を押し黙って聞き続ける悠斗。

それを見る凛紅の表情は不安げで、白刃は目が離せないといった様子で悠斗を見ている。


「ある日の事だ。近くで魔物の大発生(スタンビート)が起きた。原因も発生源も不明。ただ大量の魔物が村に攻め入ってきたよ」


魔物の大発生(スタンビート)

普通はダンジョンや特別な地域などで魔物が一気に発生して、大移動などをする現象。

一瞬の災害とされ、一度起これば必ず犠牲者が出るとも言われている、正しく天災だ。


「たまたまウチの村には《遠見》スキルなどを持って、周辺警戒に優れる人材がいたから、村に迫ってる半日前には分かったよ。だから俺は村を代表して、近くの都市に援軍を頼みに行った。都市には三時間位で着いた。都市の騎士団に頼めば、隊を動かすのに時間がかかるから、冒険者ギルドにいったんだ。冒険者なら、すぐに動ける者が多いからな」


そこまで言って、男の顔は憤怒に歪み、一拍後には自嘲気味なそれになった。


「今思えば、それが間違いだったんだ。ギルドは確かに援軍を用意して一時間以内には寄越すと言っていた。俺は安心して村に帰ったよ。すぐに冒険者達が助けに来る。だからそれまで頑張ろうって」


「……」


やはり悠斗は、なにも喋らない。

でもその眼は、顔は、まるでその先を既に知っているかのように昏い炎が燃えていた。


「君なら、想像はついているだろう?そう、結局奴らは来なかった。村人を比較的安全な所へ避難させて、俺含め戦える者は村を守ろうと必死に戦ったさ。結果は惨敗。衛兵の大半は死に絶え、村の畑は、柵は、家屋は、家畜は、景観は、無残に荒らされた」


男の顔にはやるせなさばかりが張り付いていた。

自分にもっと力があれば。そう思っている者のそれだった。


「今でも夢に見る。倒れていく同僚の、まるで信じていたモノに裏切られたかの様な顔を。アイツらも、俺も、最後まで助けは来ると信じて戦ったのに、その助けは来ないで、失わなくて済んだかもしれない命をこぼしていく。その時のアイツらがどんな想いだったか、どれほど無念だったか、俺には分からんよ」


「それが……貴方が冒険者に復讐心を燃やす理由ですか?」


俯きながらも、悠斗はぽつりと問う。


「まさか。こんなモノなら、俺の復讐はとうに終えているさ」


だってそのギルドを潰す、或いは告発すればいいのだから。

そう男は言って嗤った。


「そんなっ、後これ以上に何があると言うんだ!」


たまらず、白刃は声を上げた。

彼は人の悪意というモノをあまりにも知らなすぎた故に、既に男が語ったことさえも完全に呑み込めずにいる。彼は信じていたのだ、人の善性という、あまりにも儚い幻想を。

男は白刃の方を向かず、ただ悠斗のみを見据えて再び語り出した。


「野営用のテントも、食料も満足ない残った村人は、荒らされた村に戻って、泣き崩れた。愛する妻と娘に、仲が良かったお隣さんの奥さんに、同僚の家族に、友人に、どうして助けは来なかったんだ、と責められる度に、俺の足元はふらつき、今にも倒れそうになった」


たとえどれだけ隣人間の間柄が良くても、大切なモノを失えば、それは容易く崩れさる。

人は嫌なことがあった時、何かに当たらずにはいられない生き物だ。何かに責任を押し付けて、それを糾弾したがる生き物だ。

その時の人柱が、彼だったのだろう。

助けが来ると嘘をつき、村を壊滅させた最悪の人間として、彼は糾弾されたのだ。


「俺はその時、一度死のうとも考えた。でも、出来なかった。怖かったんだ。死ぬのが。俺は、俺は最低だった」


その瞬間、自嘲的だった男の雰囲気がガラリと変わる。

怒りと殺意をごちゃ混ぜにした、恐ろしいモノだった。


「村が壊滅して、すぐの事だった。深夜、壊れた家屋で何とか眠ろうとした時、数十人単位の人間が村に侵入してきた。最初は野盗かと思った。けど違った。誰だと思う?」


そこまで聞いて、白刃ですらその後を察した。

人の善性を信じたかった彼は、男が体験しただろう悪夢を予想して、「嘘だ、嘘だ」とその事実を呑み込めずにいる。


「そいつらは、俺が増援を頼みに行った都市の冒険者だったよ!」


故意か、或いは無意識か、男の身体から闇のオーラが吹き出した。

黒鬼が放っていたそれ以上の出力を放つオーラは、地にへたり込む白刃や凛紅の体を吹き飛ばそうする。


「そいつらはな、あろう事かわざと大発生(スタンビート)から圧倒的に遅れてやって来て、魔物達に荒らされて俺たちが疲弊し切ったところで村のモノを奪いにやって来たんだ!」


男から放出される闇のオーラは、いつまで立っても収まる気配を見せない。それほど男の怒りは激しく、恨みは深いのだろう。

それを真っ向から受けてもなお、髪と戦闘服(バトルクロス)を揺らすだけで微動だにしない悠斗は、やはりなにも言わない。

対象的に、凛紅と白刃は気圧されていた。

男が出す闇のオーラの濁流に、そして男が見せた物理的重圧すら伴ったと錯覚するほどの怒気に。


「気づいた時にはもう遅かった。武装の大半は壊れ、魔力も尽き、そもそも戦える人間がほとんど残っていない俺達が、万全の状態で武装までした冒険者達に適うわけがなく、あっという間に制圧されたよ」


当然の結果だろう。

疲弊、消耗しきった戦闘員と非戦闘員しかいない村に冒険者が数十人単位で襲いかかって制圧出来ない方がおかしい。


「そこからは言うまでもなく地獄さ。男は例外なく殺され、女性は当然犯された」


その光景を想像してしまったのだろう。

凛紅が不快感を顕にしている。


「俺の妻も娘も例外じゃなかったよ……っ」


男の握った拳から、血が滲み出ている。

食いしばった歯から、開ききった目から、悲しみと怒りの紅が流れた。


「妻を、娘を、助けようとした俺は複数の冒険者達に囲まれ、為す術なく叩きのめされた。拳を、蹴りを、斬撃を、魔法を、身体中に受けて、最後は胸を刺された。受けた場所が良かったんだろうな。俺はすぐに死なず、妻と娘が女としての尊厳を踏みにじられ、男達に蹂躙されていく様を見るしか出来なかったっ!」


それは一体どんな心境だろうか。

いたぶられ、傷付けられる。

それが自分だけなら救いはあった。

なのにその魔の手は身内にも、大切なヒトにも及んで。

絶対に失いたくない、絶対に穢されたくないモノが、目の前で穢される様を、動かぬ体を引きずって、見ていることしか出来ない。

それはきっと、千の刃を突き立てられるよりも、万の魔法を受けるよりも、苦しいことに違いない。

いや、或いは最早既存の言葉では到底表し切れないモノかもしれない。


「それが冒険者の一団なら、ワンパーティなら、そいつらがただのクズだったって、ことで終わったさ。そいつらを惨たらしく殺して終わりだったさ……」


項垂れ、ボサボサの髪で顔を隠した男は独白するように呟く。


「だけどっ!奴らは違った!間違いなくあの場所にいた冒険者達だった!俺がなんでこんなことをするか聞いた時、奴らはなんて答えたと思う!?」


急に顔を上げ、叫ぶように話を進める男。

話している間少しは見えた理性の光が徐々に消えている。



「『命をかけてはした金手に入れるより、荒らされた村襲った方が効率が良いに決まってるからだろ』って言われたんだよ!」


「酷い……」


さすがの凛紅も、その返しにそう呟いた。

だが、倫理観や人道などを別にすれば、その冒険者達の言葉は間違ってはいないのもまた事実。

大発生(スタンビート)が起きた場合、ギルドから冒険者に支払われる代金は意外に少ない。

理由としては咄嗟の事態になることが多いため、正式に資金を納めて依頼することが出来ず、冒険者ギルドが報酬金を自前で用意しなければならないからだ。

通常、冒険者ギルドに貼られる依頼は、依頼主が依頼金を払い、ギルドを介することによって冒険者に行き渡る。依頼(クエスト)をこなした際に貰える報奨金は、依頼主が支払った依頼金から仲介料を差し引いたモノだ。

絶対中立を謳う冒険者ギルドだが、その運営自体は割とカツカツだったりする。正確に言えば、その需要故に冒険者ギルドが無くなることは滅多にないが、最低限の運営資金以外はあまり無いのだ。

そんな冒険者ギルドが自前で報奨金を払うとなれば、当然、各員に渡る金額は少ない。それも受ける人数が多ければ多いほど。

大発生(スタンビート)は一種の天災。故に、それによって襲われた村や都市は、被害次第で依頼金を後払いする必要もないと言う条例もあるのでどうしても金払いが悪いのだ。

下手に高ランクの魔物と戦うよりも命の危険が付き纏うのに、支払われる報奨金は僅か。武具やアイテムの消耗などを差し引けばほとんどが赤字。そんな仕事、誰もやりたがらないのは当然といえる。

そう考えれば、あえて大発生(スタンビート)に襲われてガタガタになった村を襲撃した方が稼ぐには手っ取り早いともいえる。

なんせどこまで行っても村なので防衛戦力は少なく、事の後なので被害は甚大。村人とは貯金や売れそうな家財を含めればトータルでそこそこの金額には行く。

村の人間の数などたかがしれているので制圧後誰も逃がさずにすることも容易。

後は村で好き放題やった後、村人を全員殺してしまえば証拠隠滅は完了。冒険者ギルドには「間に合わなかった」とだけ報告すればいい。

その後被害地に調査しに来た騎士団達が家財がないことに怪しむかもしれないが、野盗が入ったと言えばなんとでもなる。

確かに、命をかけるよりも安全で確実だ。


「奴らは最後に、村に火を放ったんだ。燃えていく村を眺めながら、俺は陵辱の果てに耐えきれず死んでしまった妻と娘の亡骸を抱き寄せることも出来なかった!」


身体は死に体。

意識は明瞭。

激しく自己主張する肉体の痛みと、それ以上の心の痛み。

涙は枯れ果て、慟哭の叫びすら上がらない。


男はその時の気分をそのように語った。

その一句一句に、言い様もない重みがあった。

それは正しく、その経験をしたからこそ出せるモノだった。

だが同時に、一つの疑問が残る。


「妻と娘は炎に巻かれ、俺は立ち込める煙を吸い込んで意識を失った。ぁあ、これでやっと地獄から解放される、そう思ったよ」


肉体、精神問わず、苦痛に苦しむ者にとって、死はある意味解放だ。

だって死ねば、なにも考えないから。苦しむ必要も、その理由もないから。


「でも俺は、何故か生きていた。炎を受けて皮膚は焼かれ、全身に傷を負っていたはずの俺は、俺だけが生きていた。最初は絶望したよ。なんで俺だけ死ねないんだって。こんなにも苦しんだのに、まだ苦しませるかって。でも、答えは出なかった。出せなかった。だから、俺は生きることにしたんだ」


愛する人も、親しかった友人も、大好きだった村も、何もかもが灰になって、最後に残ったのは痛みだけ。

そのあまりの理不尽に普通は心折れるだろう。

だが、その男は折れなかった。


「そして決めた。復讐してやるって。村を襲った奴らに、自分のことしか考えない冒険者と言う存在そのものに!!!俺と同じ苦痛を、俺と同じ屈辱を、妻と娘が与えられた恐怖と屈辱と痛みを、それ以上にして奴らに返すとなァ!!!」


『……っ!!??』


ある意味、めちゃくちゃな理屈だ。

だが、そこに込められた圧倒的な決意と怒りが、白刃達を黙らせた。



「……なんだよそれ。じゃああんたがこれまで殺してきたのは、なんの関係もないただの冒険者もいるってことか!?」


だが、それでもなお、白刃は吼えた。

復讐者に至った経緯は分かった。理由も理解できる。だが、どうしても納得出来ないことがある。

その復讐に、全く関係のない冒険者が、そして自分達が巻き込まれていると言う事だ。


「ぁあ、そうだ」


「っ、この!」


悪びれもせず、男は答える。

カッとなった白刃は、男に飛びかかろうとするも、まだ毒が抜けきっていない身体では、満足に動けなかった。


「ふざけんなっ!それはただの自己満足だろ!?なんであんたの自己満足のために他の人の人生を無駄にしなきゃならない!?」


「……じゃあ逆に聞くけど、なんで俺達はあの冒険者達のくだらねぇ金儲けのために人生を狂わされなきゃいけねぇんだ?」


「っ、だからって……他の人を復讐に巻き込むことはないだろう!?」


「じゃあ復讐じゃなければ他人を巻き込んでいいのか?」


「……っ!?」


言い返せない。

何も。


だって白刃は知らないのだ。

大切な人を失う痛みを。

この世の理不尽を。

知識としては知っていても、体験として知らない。

だから、男に言葉が響かない。


「そもそも、俺と対話しようなんて考え自体がダメなんだよ。お前がなんと言おうと、俺の復讐は止まらない」


「でもっ、でも!復讐なんてなにも生まない!例え成し遂げたとしてもその先にあるのは復讐心と言う生きる理由を失った空っぽの自分だけなんだ!」


その若さにしては、良く真理を捉えた言葉だった。

そう。復讐心とはそのほとんどが動力源だ。

  その怒りが、嘆きが、悲しみが、悔しさが、生きる為の、努力する為の、動力源になる。

全ての復讐を終え、復讐心を無くしてしまえば、男の様な存在は完全に生きる意味を見失い、ただ空っぽな存在になってしまう。

確かに復讐は何も生まない。

そのことに関しては、きっと白刃が正しいのだろう。


だが────



「それは違うよ」


白刃の言葉を、意外な人物が否定した。

いや、意外ではないのかもしれない。

だが、この場において正しい(間違っていない)言葉を、この場で最も怒っている人物が否定した。


「なっ、何故そんなことを言うんだ……悠斗君!」


そう。白刃の言葉を否定したのは、他でもない、悠斗だった。


「確かに復讐は何も生まない。だけどさ、そうじゃないんだ。たとえ意味がないとしても、空っぽになってしまうとしても、理屈とか正論とかじゃ絶対に抑えきれない感情が、体を動かすんだよ」


その言葉は、まるで復讐を体験したことがある様な重みを秘めていた。


「ダメなんだ。やっちゃいけない、やっても無駄だと理性が働いても、どうしたってこの感情(ココロ)は言うことを聞いちゃくれない」


胸に手を当て、苦しそうに胸元で拳を作る悠斗。

その様子を、凛紅は痛ましそうに見守ることしか出来ずにいた。


「復讐は確かになにも生まない。だけどね、一度その道に堕ちた人間はさ、止まれないんだ。そうじゃないと自分を保てない。そうしないと体がはち切れちゃう。だから復讐者(僕ら)は、止められないんだよ」


「悠斗君……君は一体っ!?」


────何を経験したんだ。

そう言おうとしても、口が開かなかった。

その先を聞くのが、あまりにも怖かったのだ。


「……さて。これで君の質問には答えた。それで、君はどうする?君は俺と同じ復讐者だ!ならば、俺の気持ちも少しは分かるだろう?」


正直な所、白刃はこの時、まずいと思っていた。

悠斗の過去について、なにも分からないが、少なくとも悠斗は復讐と言うモノにどこか肯定的であることだけは白刃にも感じ取れていた。

同じ思想を持つ者との戦いは、精神的に不安を招く。

それが油断となり、敗因になることだって有り得るのだ。

今悠斗までやられれば、この場にいる全員の全滅が確定する。

だから悠斗には出来れば心を乱さず戦って欲しいと白刃は願っていた。

だが、そんな願いも杞憂に終わる。


「確かに貴方の言い分に僕は何も言わない。言う権利もない。何より、僕は貴方の気持ちが……少しは分かる。だけど、それとこれとは話が別だ」


そう言って、悠斗は男に魔剣ノクスを向けた。


「貴方の気持ちは分かる。だからこそ、何も言わない。だが、大切なモノを奪われた人間として、貴方は分かるはずだ。その苦しみを、痛みを。だから、例え貴方の過去に何があろうと、僕の大切なモノを奪おうとする貴方を、僕は斬り捨てるっ!!!」


悠斗が示した、確固たる意思。

その啖呵を裂帛の気合いと共に受けた男は、ニヤリと嗤った。


「そうか。そうだったな。確かに奪われる痛みを俺は知っていた……。だが俺は止まらないし、容赦はしないぞ。守って見せろ、少年。俺がかつて出来なかったことを、やれるものならやって見せろ!」


男もまた、魔剣を構え直した。


お互いに剣を向け合う二人。

一人は復讐心を剣に載せ。

一人は静かな怒りと覚悟を載せる。


二人が放つ闘志が、大気を震わせる。

これから始まる決戦を見守る少年少女は、息を飲むことしか出来ない。


「僕は────」


少年は、大切なモノを守るため。


「俺は────」


男は、ただ自分を満たすために。



「「お前を斬り捨てるっっっ!!!」」



そして、復讐者と悠斗の、決戦が始まった。

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