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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第二章 少年少女の戦場
75/112

圧倒的

キリがいいので早め投稿

やはりだ。

やはり、ニンゲン共コイツらは侮れない。


あの時もそうだった。

いつだって、コイツらは想像を超えてくる。


いつだってコイツらは思い通りに行かせない。


腹立たしい。


だから殺そう。


邪魔するやつも、しないやつも。


本能の赴くままに。


感情の赴くままに。


我は黒鬼。


殺し、喰らい、快楽を求めるモノなり。


殺戮を、ここに。








☆☆☆☆☆


オレ、桐生白刃きりゅうはくばが活動拠点に戻ってきた時には、黒いオーガが膝を付く大輝にトドメを刺す所だった。

そうはさせないと咄嗟に魔法技アーツ聖光十字波動剣ホーリーライトグランドクロスを放って阻止したが、あまりにもギリギリなタイミングだった。


大輝の死という、最悪を防いで安堵した反面、俺の胸の中をよぎったのは驚愕だった。

オレは柏村大輝かしむらだいきと言う男に、全幅に近い信頼をおいている。

それは彼がオレがいろんな意味で全幅の信頼をおいている男、桜田悠斗さくらだゆうとの友であり、彼に負けず劣らず『やる』男だからだ。


それは何も戦闘面だけではない。

確かに戦闘でも優れているが、作戦を考えることなども彼は優れている。

彼は自分のことを馬鹿だと言うが、確かな戦術眼を彼は持っているとオレは思っている。

だからこそ、そんな大輝がたった一体の魔物相手に敗北していたのが、あまりにも衝撃的だった。


だが、ソイツを目の前にして、オレは大輝が負けたことに納得せざるを得なかった。


オレの心の中で、警鐘が上がったのだ。

コイツはヤバい、と。


(恐らくこいつが、レイラさんが言ってたヤバいやつ。なんて威圧感だ……)


想像を遥かに上回る威圧感を見せたソイツを油断なく見つめ、オレはスキル《鑑定》で相手のステータスを見た。

それを見て、ああやっぱりか、という感想しか出なかった。


名前持ちネームドで、黒化状態のオーガ。

しかもランクは9。黒騎士と同じと来たもんだ。


出し惜しみしている余裕は無いと判断したオレは、虚空より一本の剣を取り出す。

大剣位の大きさの刃を持つ両手剣であるソレは、《聖剣召喚》で呼び出した、オレに心を許してくれた聖剣、【聖剣ウィルトス】だ。


純白に輝く刀身を持つこの剣は、かつてない程全滅しかけた修羅場、黒騎士戦を乗り切った所以となった剣だ。


「瑛士と凛紅は大輝達を安全な所に。双葉さんとミーシアちゃんはオレ達に補助魔法を掛けてから大輝達の回復を。終わったらオレの援護を頼む!」


「「「「了解!」」」」


簡潔に指示を出して、黒鬼に向き直る。

濃縮された闇のオーラを滲ませ、こちらを覗いてくる黒鬼から発せられるプレッシャーは凄まじいものだが、怖気付いては居られない。


「悪いが最初から全力だ!《制限解除リミットブレイク》、《勇者降臨》!」


「援護します! 『光明の加護』、『聖光纏鎧』!」


「『強化付与フォースエンチャント全能力値オールアビリティ』!」


オレが持つ強化スキルを自身にかける。

そこに双葉さんの光属性魔法Lv6『光明の加護』、神聖魔法Lv4『聖光纏鎧』とミーシアちゃんの付与魔法Lv3『強化付与:全能力値』が加わり、今のオレはステータス上なら相当な力を持っていることになる。


「まだだ! 『光纏』!」


さらにオレは光属性魔法『光纏』を発動。

この魔法は剣に攻撃性の光魔力を収束、留めることで、常に魔法技(アーツ)、《光剣》を放っているのと同じ状態にするオレのオリジナル魔法だ。


「行くぞ!!」


掛け声と共に地を蹴り、走り出す。

途中で強く踏み込んで、一気に黒鬼との距離を詰める!

速度を変えたことで虚をつかれ、まんまとオレを懐に入れた黒鬼に一刀を放つ。


「ッ!?」


「『光砲』!」


その一撃は防がれてしまったが、それは別に計算内だ。

片手を黒鬼に向け、光属性魔法Lv3『光砲』を至近距離で放つ。

爆炎はオレの所まで届くが、散々補助魔法をかけたオレには痛くも痒くもない。

それは黒鬼とて同じこと。だが、意表を突く位は出来ただろう。

黒鬼は一瞬硬直し、オレはその隙に距離を取る。


「『光束輪』、『アイスロック』!」


すかさず光属性魔法Lv3『光束輪』、氷属性魔法Lv2『アイスロック』の二種類の拘束系魔法で、黒鬼の動きを阻害する。

どちらもレベルは高くない魔法だが、オレの魔力を込めれば、威力は段違いだ。

いかに黒鬼とて、早々は動けないだろう。


その隙にオレは黒鬼に肉薄する。

ただ近づくだけじゃダメだ。もっと速くする必要がある。

そこでオレは、黒騎士戦後考えていた移動方を使う。


魔力を放出し、推進力とすることで、通常よりも速く動く。

当然、消費魔力も馬鹿にならないが、そこはオレが持つ膨大な魔力で何とか補える。


「はぁぁぁっ!」


結果は成功。一気に黒鬼までの距離を駆け抜けたオレは、そのまま攻撃せずに後ろへと回り込む。

がら空きの背中を攻撃しようとした矢先、黒鬼は闇のオーラを大量放出し、オレをその場から吹き飛ばした。

その拍子に魔法拘束は壊れた。


「ガァアアアッ!!」


「ならこうだ、『グラウンドダウン』!」


拘束が無くなったことでこちらを向き、強烈な一撃を叩き込もうと大きく足を踏み込んだ黒鬼に対し、オレは地属性魔法Lv2『グラウンドダウン』を発動する。

この魔法は一定範囲内の大地に落とし穴を作る魔法だ。

効果こそ地味だが、この局面でこの魔法大きな威力を発揮する。


オレが『グラウンドダウン』を掛けたのは黒鬼の踏み込んでいる方の足下だ。

当然、そっちには大きな力と体重が掛かっている。

そうなれば必然的にバランスを大きく崩すのだ。


「ッ!?」


「もらった!」


生まれた決定的な隙。

それを逃さず、まずは『光槍ライトスピア』を複数発動し、黒鬼へと叩き込む。

そして魔法が着弾する前に魔力放出加速で高速移動し、黒鬼へと詰め寄った。

このタイミングなら、魔法をガードしようが避けようが、オレの斬撃から逃れることは不可能だ。


「ォオオオオオッッッ!!」


黒鬼は闇のオーラを放出することでオレの攻撃を防ごうと試みる。

それが奴なりの防御なのだろう。確かに強力で、堅牢だ。

だが、そんなものでオレは止められはしない!


「はぁっ!」


ヒットの瞬間に魔力をさらに込めて、刀身を一時的に肥大化する。

聖剣の大きさを含めれば、黒鬼とて両断するのは容易いだろう。


「なっ!」


思わず声を上げてしまう。

何故なら、両断するつもりで振るったオレの剣は、黒鬼の腹部に深く斬りこんで止まっていたからだ。

見れば、腹部の辺りに闇のオーラが密集している。

恐らく、それでオレの斬撃を緩和したのだろう。


「ガァアアアッ!」


「しまった!」


驚いて硬直している間に、黒鬼の身を守っていた闇のオーラが聖剣にまとわりついてきた!

黒鬼はニヤリと大きな口を歪めて、オレの腕を強く握りしめる!


「ぅがぁああああああああっっっ!!!」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

想像を絶する激痛が腕に走り、ゴキッ!と嫌な音が耳に届いた。オレの右腕が砕かれたのだ。


「放……せよっ!!」


とにかくこの痛みから逃れたくて、左腕で火属性魔法Lv3『爆破ブラスト』を放つ。

激痛でコントールなんてあったもんでもなく、爆炎が広範囲に広がって、オレごと黒鬼を包み込んだ。

オレの魔法に不意を突かれ、驚いた黒鬼はオレの剣の拘束を外し、右腕を握り潰していた手も放した。

そのまま爆炎に乗じてオレの身体は宙を舞い、そのまま地面に落下した。


「がぁっ、うぅ……」


背中に来た固い衝撃が、オレの息を詰まらせる。

それすらも気にしている余裕はなく、今もまだオレは腕を焼くような激痛に悶えていた。


「ガァ……」


ヤツが来る。

痛みに悶え、滑稽に喘ぐオレを殺しに、ヤツは来る。

それでもオレは、オレの身体は、言うことを聞かない。

痛みに耐えて、歯を食いしばるだけで精一杯だ。


ヤツは、オレの腕を砕いたその時のように、神経を逆撫でするような笑みを浮かべる。

見れば、オレが黒鬼に与えたはずの傷は塞がっていた。かなり深く斬り裂いたはずなのに、だ。

もしかしたら、黒鬼は再生能力を持っているのかもしれない。

だとしたら相当厄介だ。

そんなことを激痛の中考えていたら、黒鬼はオレから目を放した。

その視線は、オレの近くに注がれている。

黒鬼には武器がない。それは恐らく、大輝が壊したからだ。

その証拠に、刀身が溶けて使い物にならなくなっている大剣の残骸が近くに転がっている。

だがヤツは、その残骸を片手で拾うと、無くなった刀身辺りに闇を集めた。

するとどうだろう。闇は刃へと姿を変え、異様な圧を放つ武器へと変わった。


「っ……」


心とは裏腹に、ビクついてしまったオレの身体を見て、黒鬼は凶悪な笑みをより一層強めた。

闇の剣を振りかぶる。

後数秒でオレの生命は終わるだろう。


だが、その時が来ることはなかった。


「《居合い・飛剣ひけん》!」


「『火炎連剣フレイムソード』!」


「『風爆弾』!」


オレにトドメを刺そうとする黒鬼に、大輝達の避難を終えた凛紅達が攻撃をしかけたからだ。

がら空きの背中に攻撃をモロに受けることになった黒鬼は、咆哮を上げて凛紅達に向き直る。


黒鬼は今度は待つことなく、自分から仕掛ける。

丸太のように太い脚で大地を蹴り、圧倒的な身体能力で凛紅達へ詰め寄る。


「させるかよっ!」


凛紅の前に割って入るように黒鬼と相対した瑛士は、驚くべきことに黒鬼の剛腕から放たれる闇の剣の一撃を青龍刀に似た刀で受け流した!


「《舞翔輪斬》!」


そのままスキルアクションを発動して黒鬼に斬り掛かる。

瑛士のユニークスキル《舞剣術》は相手の攻撃を踊るような剣でいなし、カウンターを叩き込むスタイルだ。

それ故に自分からうって出る攻撃系スキルは余り多くはないが、その分その威力はとても高い。

身体を捻り、飛び上がってそのまま空中で回転斬り。

刀身には瑛士の第二ユニークスキル《風纏剣》によって風の魔力が纏われている。

それにより射程、威力、切れ味全てが上昇し、その一撃は高い威力を発揮する!


「ガァアアアッッッ!?」


胸元をバックリ斬られた黒鬼。そのダメージは計り知れないが、効いているはずだ。

だが、その傷すらも、再生される。


「やぁあああっ!」


「『ブレイズミサイル』!」


そこに、凛紅とミーシアも入る。

瑛士が一撃必殺な黒鬼の攻撃をいなし、凛紅が斬りこんで、ミーシアが魔法で削る。

各々自分が出来ることを最大までやりきることを意識した動きが、自然と連携へと繋がっているのだ。


「白刃君、今治します!」


凛紅達が黒鬼の気を引き付けている間に、大輝達の回復を終えた双葉さんがオレの元へ来て、治癒魔法を掛けてくれる。

砕かれたオレの右腕から痛みは少しずつ引いていき、数秒後には問題無いくらいにまで回復していた。


「すまない、助かった」


「どういたしまして。それよりも前線に戻ってください。後方支援は私達がやりますから」


そう言って、いくつか追加の補助魔法を掛けてもらい、オレはもう一度戦線に立った。



「目覚めよ光、聖なる竜よ。汝の吐息で邪悪を滅ぼせ! 『神聖白竜砲』!」


神聖魔法、『神聖白竜砲』を発動。

オレの背に全長三メートル位の光で形作られた竜が顕現する。

竜は口に強大なエネルギーを蓄え、そして竜の吐息ブレスを彷彿とさせる魔力を放出する。


純粋な威力攻撃が少ない神聖魔法の中でも上位の威力を持つ攻撃魔法だが、オレはあえてこの魔法を黒鬼に当てない・・・・


その代わりオレの聖剣に当てて、魔法を聖剣に留める。

この方法自体は『光纏』と同じ要領でやれば問題ない。

ではここからどうするか。


聖剣に留めている魔力により一層魔力を注ぎ、強化する。

足を踏ん張り、大上段の形になるよう構えた!

そしてスキルを発動する。


「《聖剣解放》!」


聖剣には、その一個体にしかない特殊能力がある。その力は例え聖剣を持っていたとしても聖剣に認められた者しか使えない。

《聖剣解放》スキルは、そんな聖剣の固有能力を発動するスキルだ。

そしてオレの聖剣ウィルトスの固有能力は【昇華】。

対象の存在を、一段階格上げする力。

単純に言うのなら、威力の倍加。だが、昇華の力はそんなもんじゃない。

昇華の本質は『存在の次元を引き上げる』力だ。

それ即ち、技を奥義に、魔法を魔導へと強制的に促す力。

今、オレの聖剣に宿る魔力の一撃は、一種の奥義へと姿を変える。


「みんな、でかいの行くぞ!」



オレの合図に応じて、みんなが黒鬼から距離を取る。

敵が退いた事に違和感を感じたであろう黒鬼はオレの方を見て、退避しようと試みる。


「させませんよ、『フレイムストーム』四連発動、『炎の大監獄フレイムプリズン』」


だが、黒鬼を逃がさまいと、ミーシアちゃんが火属性魔法Lv4『フレイムストーム』を四つ同時発動し、オリジナル魔法の『炎の大監獄』を発動した。

広範囲魔法である『フレイムストーム』が四方から襲いかかり、まさに監獄と化して黒鬼に迫る。

炎の渦は容赦なく黒鬼を包み込んで、その身体を焼き尽くす。

とは言え、再生能力を持ち合わせる黒鬼を倒しきることは出来ないだろう。

だが、拘束としては十分だ。



「これで決めてやる! 擬似奥義《白竜天衝》!」


擬似奥義、《白竜天衝》。

これは元々、『神聖白竜砲』を纏わせた剣に《天衝撃》と言う剣術上位スキルアクションを組み合わせた魔法技(アーツ)を昇華の力で擬似奥義にした物だ。

その威力は《聖光十字波動剣ホーリーライト・グランドクロス》のそれとは比べ物にならない。昇華の力を使わない《勇者の一撃ブレイブストライク》とほぼ同等だ。

この一撃なら、黒鬼にさえも滅ぼせる。


「消し飛べぇぇぇぇぇっっっ!!!」


放つ一撃に、ダメ押し気味に魔力を注ぎ込む!

極太の白い一撃は、そのまま黒鬼を呑み込んで……















……

……

……



「……ははっ、そんなのありか」



黒鬼は、生きていた。


とでもではないが無傷とは言えず、全身に酷い裂傷と火傷を負っていながらも、五体満足で立っていた。


「くそっ……」


身体から力が抜ける。

勇者の一撃ブレイブストライク》でなくても、擬似奥義は体力を食う。

全身を襲う脱力感に耐えきれず、膝をついてしまった。


「『爆炎連槍ブレイズスピア』!」


トドメを刺さんと、ミーシアが火属性魔法Lv5『爆炎槍』を多重発動する。

対象に突き刺さったまま爆発して内部から破壊する恐るべき殺傷力の魔法が黒鬼に迫る。


「ォオオオオオオッッッ!!」


だが、咆哮を共に吹き出た闇のオーラが、魔法の槍を防いだ。

そしてそのオーラを鎧のように身に纏い始めた!


「……なんて威圧感だ」


闇のオーラを纏い、黒い鎧姿へと変貌した黒鬼の放つプレッシャーは、並々ならぬものだった。

黒鬼は一歩も動いてないし、微動だにすらしていない。

なのに、直視が難しい程の重圧。

誰もが思い知る。

これが、『怪物』だと。


「だからって……負けられるか!」


自身を蝕む恐怖を吹き飛ばすため、裂帛の気合いを放つと同時に五大属性魔法を同時展開する。


五大属性魔法とは火、水、土、風、光の五つの属性魔法だ。

属性魔法には加えて雷、氷などがあるが、それらは五大属性魔法の派生から来る魔法だ。

オレの持つ《光の勇者》スキルは、全ての属性魔法に適性を持つが、それでも得て不得手がある。

五大属性魔法以外は余り得意ではないのだ。

だが、逆に五大属性魔法ならばオレはかなりの技量を持つと自負している。


五つの属性魔法を同時出すと言うのは、かなりの高等技術らしい。

実際、オレも出来るようになるまで一月は掛かったし、オレ以外にそれが出来るのはグリセント王国ならシャルルさんだけと聞く。


当然、難易度に見合うだけの高威力、高火力の魔法乱打は、一切漏れることなく黒鬼に命中した。

炎弾が、水弾が、岩弾が、風弾が、光弾が、数多の魔法弾が黒鬼の胴体を撃ち据える。


だが──────


「ガァアアアッッッ!」


無傷。

煩わしいと言わんばかりに腕を振るい、闇のオーラを解き放つ。

ただそれだけで、黒鬼の周囲の岩肌は削れ、オレの所まで衝撃が走る。


「くそっ……なんなんだ……なんなんだよ、お前!」


そこからは、やけっぱちだった。

擬似奥義《白竜天衝》を撃った反動で減った魔力を効率良く振り絞り、最低限の最大のコストパフォーマンスの魔法を撃ちまくる。

こいつの弱点はなんだ?こいつを倒す方法はなんだ?


兎に角なんでもいいから希望が欲しかった。

僅かな傷でも、塞がらず、そこに残る傷が欲しかった。

なのに、その傷はいっこうに生まれない。


裂傷も、火傷も、凍傷も、ありとあらゆる傷が受ける度に塞がれていく。

黒鬼が傷を負い、そして治っていく度にオレの心には絶望が落ちてくる。


「ぉおおおおっ!」


「やぁあああっ!」


「『聖光守護者シャインガーディアン』!」


「『爆炎弾ブラストミサイル』!」


オレだけではなく、瑛士、凛紅、双葉さん、ミーシアちゃんも各々攻撃をする。

だが、瑛士と凛紅の斬撃は何事もなかったかのように弾かれ、双葉さんの『聖光守護者』は一瞬で霧散させられ、ミーシアちゃんの魔法は黒鬼の鎧の前に散っていく。


「ォオオオオオオッッッ!」


逆に、攻撃して生まれてしまった隙を黒鬼の猛攻が襲う。

直撃こそしないまでも、振るわれた剣の衝撃波や、闇のオーラの奔流がオレ達を打ち倒す。


「ぅおおおおおおっ!」


恐怖と絶望に負けそうになる心を叱咤して魔法を乱射し、魔力加速で一気に詰め寄る。


「ガァアアアッッッ!」


案の定、黒鬼は絶対的な防御力を誇る鎧で全てを受け止める。

だが、オレもまた、黒鬼が反撃をする前に体力の許す限り攻撃を行い続ける。


「はぁあああああああっ!!」


斬撃、打撃、魔法、スキル、スキルアクション、魔法技アーツ

オレが持つ技、持つ技術、持つ全てを投入しても尚、黒鬼には届かない。

そして──────



「ぁ──────」


キンッ、と。

澄んだ音を立てて、聖剣はオレの手から飛んで行った。

見れば、つまらなそうな顔をして、純黒の剣を構える黒鬼の姿が。


次の瞬間。



オレは闇に呑まれた。

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