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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第二章 少年少女の戦場
66/112

激戦の後

いやー、短いけどキリが良かったんで一旦投稿します。


※悠斗のステータスを変えました。

※ステータス表記を変えました。

※能力値の【魔力】を【知力】に変えました。

※ステータス欄の能力値に【耐久】【技巧】を加えました。

「知らないけど嫌でも分かる天井だ」


目を覚ました悠斗の第一声が、それだった。


「……随分長いね」


「ん?……って、神川さん!?」


悠斗的には独り言として言ったつもりだったが、なぜだか返事が返ってきた。

返事の主は神川希理かみかわきりだ。

彼女は悠斗を覗き込むように見ている。


後頭部に意識を集中させると、何だか柔らかい感触を感じた。

最早三度目ともなると、某ゲームの英霊のスキルのように直感してしまう。


これは膝枕だ。


大事なことだから二回言うが、これで三度目だ。

どうやら悠斗は異世界に来たと同時に女の子に膝枕してもらう運命を得たのかもしれない。

……勿論、役得ではあるが。


「さて、冗談はこの変にして……どのくらい寝てた?」


「……十分位。他のみんなもまだ寝てるっぽい」


希理の言うことは本当のようで、広いボス部屋にクラスメイト達が倒れて眠っている。


東京ドームを思わせるかなり広い空間は少し前まで激戦を繰り広げていたとは思えないほど閑散としていた。


「ボス部屋はリスポーンが遅いとはいえ、このままみんな気絶状態は良くないな。取り敢えず────」


取り敢えず起きよう、と言おうとした悠斗であったが、その言葉は希理によって遮られた。

……肩を押さえつけて悠斗の頭わ自分の膝に押し付けることで。


「……神川さん?」


「……希理」


「へ?」


「……私のこと、希理って呼んで。私達と貴方は一緒に戦った仲間。なのに瑛士達だけ名前呼びで、私だけ仲間外れはいや」


「え、いや、その……」


「……」


「……分かったよ、希理」


「……うん、それでいい」


悠斗はあっさり折れた。

こんな風に(膝枕で)名前呼びをするよう頼まれたのは、これで二度目だ。

……ステータスに幸運があったら、悠斗の幸運値は異様に高いかもしれない。

尤も、それは対異性限定だろうが。


「いや、そうじゃなくてね、……なんで僕を強制的に膝枕状態に?」


どうやら悠斗が言いたかったのは何故起き上がろうとしても無理やり膝枕の状態に戻すのかその理由が知りたかったらしい。


悠斗も男だ。希理のような可愛い女の子に膝枕されて嬉しくないわけが無い。

とはいえ、だ。さすがに気恥しさはどうしようもなかった。

故に、多少名残惜しくはあったが膝枕から脱出しようとした。

だが、驚くべきことに膝枕をしている希理の方が悠斗を逃がしてくれなかったのだ。


「……悠斗の受けたダメージは大きい。傷は治っても戦闘での疲労やダメージそのものはまだ残ってる。だから休んで」


「うっ!それは……そうだけど」


事実、黒騎士が呼び出した大量の魔物と影騎士との戦いで受けたダメージは相当なもので、まだ回復には至っていない。

《竜ノ因子》の再生能力は傷こそ癒せどそれ以外を回復にはする効果はないのだ。


「……それとも、私の膝枕はいや?」


悲しげな顔で、そんなことを聞いてきた。

希理の膝枕はいやかどうか。そんなことを聞かれたら十人中十人は確実にこう答えるだろう。

『ノー』、と。


「そ、そんなことは絶対にない!」


そして悠斗も、『ノー』と答える側の人間だった。


「……じゃあこのままで」


とはいえ、やはり気恥しさだけはどうしようもなく、ジレンマの中で悶々としていた時、頭上から、今にも消えてしまいそうな声が掛かった。


「……あの時、精神汚染で心をやられた私達を助けてくれたのは悠斗、だよね?」


突然と言えば、突然の話題。

軽く驚いたが別にやましいこともないので、素直に答えることにした。


「まあ、助けるなんて大それたことじゃないけど、解除を試みたのは確かだよ」


「……あの時、私の意識がぐちゃぐちゃになりそうになった時、私を助けてくれたのは悠斗だった。

あの悠斗と貴方は、その……記憶とかを共有とかしてるの?」


「ううん、してないよ。あの時僕は状態異常解除の代わりに君達に精神汚染を上掛けして精神汚染の相殺を図ろうとしたんだ。

精神汚染スキルは使い方次第で色んな指向性を持たせられるからね。

希理が見た僕は皆に掛かっている精神汚染を打ち消そうとした僕の精神汚染がわかりやすい形で具体化した姿……まあ、あれそのもが僕が発動した精神汚染汚染スキルなんだ。

だから僕は君達がどんな悪夢を見せられて、そしてスキルの僕がどんなふうにその精神汚染を相殺したかは分からないよ」


「そ、そんなんだ………………良かった」


最後の方はよく聞こえなかったがどうやら理解して貰えたようだった。


「……本音を言えば、怖かったんだ」


「……怖かった?悠斗が?」


怖かった。その言葉を聞いて希理は不思議に思った。

百を超える魔物の使い魔の群れにも、恐ろしい悪魔(レッサーデーモン)にも、あの影騎士に対してさえも果敢に挑んだ悠斗が漏らしたその言葉を、希理は不思議に思ってしまった。


でもそのすぐ後に、彼女は思い返した。

自分の知る桜田悠斗という少年は、元を辿れば自分達と同じただの学生だった、と。


悠斗はこれまで、【光の勇者】たる白刃に並ぶ獅子奮迅の戦いをしてきた。

いや、活躍、という面で見れば悠斗の方が上かもしれない。


黒騎士の使い魔の大多数を一撃で殲滅した動き。

あらかじめ予測してたとはいえ、完全な非常事態(イレギュラー)である影騎士との死闘と勝利。

さらに前を考えてもタートルモックやサイクロプス戦の勝利も最終的には悠斗がいた事が大きい。


だから忘れていた。

彼は特別な存在なんかじゃない。

自分達と同じ一般人……いや、むしろ世間一般的にはステータスが他より劣る低ランク加護(加護:C)であることを。


不思議と、異世界転移組(白刃達)は戦いで恐怖というものを感じなかった。

だが、それは最初の頃の話だった。

戦えば戦うほど、戦闘での恐怖は増して行った。


弱い敵と戦うならいい。

だが、自分より格上、或いは強大な敵を前にしたとき、思わず考えてしまうのだ。

『あの体躯から繰り出される攻撃を受ければ自分はどうなる?』と。

そうして、身体が竦む。

でも気が付いたら、その恐怖が抜けているから、戦える。


こうした恐怖は本来、間違ったものでは無い。

ただこれは彼らに与えられた異世界転移特典(チート)が及ぼした弊害だ。


この世界の住人は村や街の外には魔物が跋扈しているのが普通・・で、魔物との邂逅もまた普通なのだ。

だから彼らは危機によく直面する。


村の外に出た子供が、新米の冒険者がゴブリンに出くわす。

ヤツらは貧相な身体付きで、小さくて、弱そうだ。

だが、ヤツらが持っている粗悪なナイフは、棍棒は、弓は、槍は、当たれば自分は死ぬ。

驚くほどあっさりと。

もし相手が賢かったら?

もし何かの拍子にナイフが当たったら?

そう考えて、彼らは恐怖を学習し、危険が付きまとう世界(この世界)に順応する。

戦闘自体に恐怖をあまり感じなくなり、戦える。


だが、異世界転移組は違う。

彼らは凡庸で平和な世界から来た人間だ。

地球に戦いが無いわけではない。

だが、少なくとも一般人には中々無縁のものだ。

だから死の恐怖を学習するための経験がほとんどない。

それこそ、通り魔にでも襲われない限り。


だから彼らは本来なら戦えない。

それを補っているのが異世界転移特典チートだ。

これにより、彼らはこの世界の戦闘をどこかゲームのように感じる。

命のやり取りであることは、理屈的には分かっている。

でも理屈ではないところで、ぼんやりしているのだ。

それが異世界転移特典の一つ、対戦闘恐怖阻害である。


だから、始まりの森でゴブリン達と対峙しても、戦えた。

だが、敵が圧倒的に強くなると、死に瀕すると今更ながらに感じるのだ。

これが命のやり取りであると。

理屈ではなく、本能で、ようやく。


長くなったが、そんな恐怖をこれまで希理達は感じてきた。

だが、それは悠斗も同じだった。

でも言えなかったのだろう。

彼はリーダーだから。

弱音を吐かないようにしていたのだろう。


そう考えて、自分だけは彼の弱音を受け止めようと、希理は思った。


「……それは戦いが?」


「まあ、それもあるけど、少し違うんだ」



…………………………あれ?


どうやら、希理想像とは違ったらしい。

内心希理は疑問と羞恥であたふたしていたが、無表情が幸いして、悠斗には悟られなかった。


そして、悠斗も希理の内心を知らずに話を続ける。



「戦い自体は……そんなに怖くないんだ。不思議だけど。

怖かったのは、精神汚染を上手く相殺出来たかな、とか、間に合ったかな、とか、そういうのなんだ」


(……ああ、なるほど)


ようやく合点がいった。

彼が怖かったのは、自分たちの事だったのだ。


精神汚染で心を破壊されそうになったことで、後遺症が残ってたりしないかとか、精神不良になったりしてないかとかそういうことを気にしていたんだ。


「僕にとっては、希理も、瑛士も、春樹も、河島さんも工藤さんも、皆、仲間だからさ。なるべく傷付かないようにしたかったんだ。

でもいきなり完全に予想外な攻撃食らって、挙句僕まで直ぐには動けなくて……守ろうと誓ったのに……こんな……こんなことになっちゃって……ごめんね」


そして悠斗後悔していたんだ。

地球の頃で、悠斗と希理達の付き合いはほとんどと言っていいほどない。

ましてや摩耶、綾音に至っては異世界に来ても接点はあまり多くない。


それでも悠斗は護ろうとしたんだ。

どんなことがあっても、傷つけさせないように。

それが出来なくて、彼は後悔していた。

それは優しすぎる決意だった。


きっとこれが悠斗の『素』なんだろう。

友達(仲間)を、たとえそこにメリットなどなくてもただ護る。

それが彼の内にある本質。


だから希理は、悠斗を慰めたくて、褒めたくて、感謝したくて、支えたくて、万感の想いを込めて、悠斗の頭を撫で付けた。


「っ!?」


「……それでも、それでも私達は助かったよ。

あのままだったら、私達は心が壊れて、とっくにおかしくなってかもしれない。

それ以前に黒騎士に、影騎士に、殺されてたかもしれない。

それにね、悠斗。それを言うなら私も同じだよ。

私だって、仲間(貴方)を守りたかった。でも私が弱いから、出来なくて、むしろ助けられちゃった。

貴方は悪くないし、よくやったよ。そのおかげで私達は今ここに居られる。

だからね、ありがとう、悠斗 」


言葉一つ一つに込められた感情を理解したのか、悠斗はこれ以上後悔の言葉を言うことはなかった。

ただ、ただ一言────


「そっか……それなら……良かったぁ……」


そう言って、希理に撫でられながら、彼女の膝の上で、もう一度目を閉じた。




















☆☆☆☆☆


【桜田悠斗】(通常時)

〇性別:男

〇年齢:15

〇レベル:50

〇クラス:《剣士》(10/10)→クラスチェンジ可能!

〇称号:【異世界人】【殺人者】【人外】

【半竜人】【万喰】【介錯人】

〇能力値

HP:8000 MP:3000

筋力:1500 体力:5000

敏捷:1800 知力:1200

耐久:1800 技巧:1700

加護:C



【桜田悠斗】(竜人化)

〇能力値

HP:16000 MP:6000

筋力:3000 体力:10000

敏捷:3600 知力:2400

耐久:3600 技巧:3400

加護:C

〇スキル

《剣術》《電撃》《雷属性魔法》

《双剣術》《限界加速》《飛燕》

《虎視》《感知》《帯電》《充電》

《竜魔法》《体術》《電光石火》《竜人化》《精神耐性》《精神汚染》

《拘束》《物体操作》《魔剣術》《魔剣解放》《付与魔法》《隠形鬼》

〇ユニークスキル

《竜ノ因子》《魔剣創造》《同調》《接続》《魔剣術》《魔剣解放》

〇魔法

『雷属性魔法』『無属性魔法』『付与魔法』

『竜魔法』


補足

《隠形鬼》

・姿を隠し、摩訶不思議な現象を起こす鬼の名を冠するスキル。索敵スキル同様、斥候職には必須の隠密行動スキルの一種……と言うよりそれの上位互換。要は《感知》同様レア中のレアスキルである。



……

……

……


一般的に見た場合、悠斗のステータスは加護:Cの能力を逸脱しており、また50レベルであることに対してこのステータスは異世界転移特典を外しても異常である。その背景にあるのはユニークスキルである《竜ノ因子》が関係しているのは間違いないだろう。

とはいえ、このレベルでは異常、と言うだけであり、黒騎士、影騎士達ブラットナイトオーバーロードなどの方がステータス面では普通に強いし、世界的に見れば悠斗達よりも強い人達はまだまだ沢山いる。





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