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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第二章 少年少女の戦場
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クリスマス閑話 王国のホワイトクリスマス

メリークリスマス!ってことでギリギリですが投稿しました!

家族と過ごす方も、恋人と過ごす方も、友人と過ごす方も、暇つぶしとして読んで頂ければ幸いです。

………え、自分?HAHAHAHA、当然、クリぼっちですよ(涙)


※召喚された時期を二月から十一月に変更しました。

異世界に四季という概念があるのかどうか。そんなこと考えていた時期が悠斗にもあった。


異世界に来た今でもその疑問は晴れないが、どうやら冬に近い日はあるらしい。


「へくちっ」


魔法書を読んでいた悠斗の意識は、ミーシアの可愛らしいくしゃみによって引き戻された。


「どうしたのミーシア。風邪?」


「いえ、多分違うと思う……いますけど、少し寒くて」


背伸びして無理に敬語を使っているせいか時折年相応の言葉遣いになってしまうミーシアを微笑ましく思いながら、外界に気を寄せてみる。


確かにここ数日気温が下がりつつある。

クレド達と訓練することが多い悠斗はあまり気にしないのだが、まだ幼いミーシアにはこの寒さは少々酷だろう。


「おっ、雪だ」


何気なく窓に近づいて外を見ると、いつの間に降り出したのか雪が降っていた。

しかもそれなりに積もっている。


異世界で初めて見る雪だが、世界が違っても雪は変わらないらしい。

まだまだ十五歳の悠斗は少しだけ興奮していた。

だから、その気持ちを抑えきれなくて、こう言った。


「ミーシア、外に行こうか」


☆☆☆☆☆


「うぅー、寒いです……」


猫は寒いところが嫌いと言うが、どうやら猫の獣人も同じらしい。

暖かそうなコートを着ても、まだ寒そうに震えている姿は、庇護欲をかきてるものだ。

悠斗達は今、王宮の第一庭園にいた。

庭園、といっても花が咲き誇っている訳ではなく、芝生と木々があるシンプルなものだが、今は白銀の輝きに包まれていた。


「悠斗ー、かまくら作ろーぜ!」


声の主は大輝だ。そちらに顔を向ければ凛紅、双葉、そして神崎パーティーの面々も揃っていた。


せっかく外で遊ぶのに二人じゃ味気ないと思って悠斗が各部屋を回って呼びかけたのだ。全員二つ返事でオーケーしてくれた。

若干一名、二人きりになれなくてむくれているが。


「私達は雪だるまでも作ろうかしら」


「そうしましょう。ミーシアちゃんもおいで!」


女子陣は雪だるま作りにしたようだ。


「ミーシア、行っておいで。僕は大輝達とかまくらを作っているから」


「はいっ!行ってきます!」


年相応の無邪気で女子陣にかけて行くミーシアを見送ったあと、悠斗も大輝達の方に向かった。


「よし、男子と女子、どっちが作るの速いか勝負だ!」


「お、いいねー!やろうぜやろうぜ!」


瑛士が勝負を煽り、大輝も乗っかる。

そして────


「望むところよ!」


「男子達なんかに負けてらんないわ!」


割と積極的に、女子達も乗ってきた。

こうなってくると、悠斗も俄然やる気が出るというものだ。


「よし、やるぞ!」


かくして、少年少女達の熱き戦いの火蓋が切って落とされた!



☆☆☆☆☆


「何やってんだ、あいつら」


宮廷魔術師、クレドは第一庭園を通る廊下で呟いた。

彼の視線の先には、やけに光沢感のある雪のドームと、全長三メートル近くあるだろう二つの雪玉から出来た巨大な物体がある。


そして何より、それらを背景に騒がしくも楽しそうに、雪玉を投げ合う少年少女達の姿が。


勇者の同郷の人間として、王宮の人々の期待を背負う彼らだが、この姿を見てはただの子供のようにしか見えない。


実を言うと、ワクワクしている自分のこころを抑えて、クレドは悠斗達の方へ近づく。


「おーいお前ら、楽しむのはいいが、はしゃぎすぎて窓ガラス割ったりするなァふぉっ!!??」


途中で流れ弾を顔面に頂いた。



「あ、すいません師匠。流れ弾がそっちに……大丈夫ですか?」


心配そうな声で悠斗が尋ねる。

クレドの身体は心無しか震えているようで……。


「だああああ!!やってろうじゃねぇか!悠斗、てめぇに稽古つけたらァ!」


……爆発した。


いつの間に作ったのか手に持った雪玉を悠斗目掛けて投げ飛ばす。

彼我の距離は一メートルもない。

普通なら避けられないはずの一投を悠斗は驚くべき方法で防いで見せた。


「『魔弾』!」


そう、無属性魔法Lv1『魔弾』である。

ぱぁん、と小気味よい音を立てて二つの弾は相殺。粉雪と魔力の残滓が空を舞う。


「ほぉ、やるじゃねぇの。だが、これは捌ききれるか?」


ふわりと、クレドの周囲の雪が宙に浮いた。

それらは雪玉となり、クレドの周りを漂う。


これは無属性魔法Lv4『浮遊レビテーション』と『魔弾』の応用だ。

『浮遊』で雪を浮かし、『魔弾』の要領で形を作る。


普通に考えれば、とんでもない反則だ。

しかし、悠斗はそれを言及せず、むしろ不敵に笑ってみせた!


「貴方の弟子たる僕が!出来ない訳ないでしょう!」


悠斗の周りにも雪が。そして、それらもまた弾丸へと形作られていき……


全弾投射フルファイア!』


その全てが解き放たれた。

雪合戦で聞こえるはずのない、やけに物騒な音が周囲に反響し、それを見ていた大輝達もそのえげつなさに顔を引き攣らせる。


「ふっ、やるな悠斗。しかし、魔弾の扱いは、師である俺の方が上だっ!」


数の差か、エイムの差か、何発かの雪弾が悠斗へと迫る。


(勝った!)


クレドが内心ほくそ笑む。

大人気ないことこの上ない。


しかし……


「なっ、なにぃっ!?」


その弾丸は悠斗の身体に当たる前に撃ち落とされた。

他でもない、悠斗攻撃によって。


無属性魔法『幻想剣』。悠斗が作った、無属性魔法の魔力による刃だ。


「っ、そうか、お前にはそれがあったな」


真剣な表情で、呟くクレド。雪合戦であることをわすれていないだろうか?


「いいだろう、お前がその気なら、こっちも本気だっ!『身体強化』!」


『なにぃ!?』


流石にこれには皆つっこんだ。どこの世界に雪合戦で肉体強化の魔法を、それも己の切り札を切る人間がいようか。

しかし、そんなバカはここにいた。


「師匠……。分かりました、僕も本気で行きます。『身体強化』!」


『悠斗ぉ!?』


しかも二人。

思いのほか、ノリがいいのか悠斗も『身体強化』を使用。周りはドン引きだ。


「行くぜ、ユウト!」


「はい、師匠!」


「随分楽しそうですね」


ピタッと。今にも飛び出しそうな二人が静止した。

まるで油を指し忘れた玩具のように、首を動かす。


視線の先には、総合騎士団長レイラが。

心無しか、オーラのようなナニカを纏っている。


「あ、あの、いや、これはその……」


「べ、別に遊んでた訳じゃねぇぞ!これもコミュニケーションの一環で……だから怒らないでぇ!」


必死に弁解する悠斗とクレド。二人とも、彼女の怖さをよく知っているのだ。

そう、嫌という程。


「別に怒りませんよ」


『へ?』


本当になんでもないような口調で、レイラは語り出す。


「ただし……」


その瞬間、どこからともなく、複数の人影が飛び出してきた!


「ずるいぞ、クレド!」


「私達を仲間外れにするなんて!」


「俺達も混ぜろ」


飛び出してきたのは宮廷魔術師のシャルル、遊撃騎士団団長のリューナ、重装騎士団団長アルフレイドだった。


「さあ、大人対子供の始まりです」


笑顔で、それはもう、その美貌も相まって天使のような笑顔でレイラは処刑(雪合戦)の開始を告げた。


………

………

………



そこからはもう、混沌カオスだった。


「うわぁ、なんだこの人、雪玉を全て木剣で跳ね返してくる!」


「ちょっ、アルフレイドさん、盾使うの反そくふぅ!」


「リューナ先生速すぎぃ!」


「やりますね、師匠!」


「てめぇもな、くそ弟子!」


レイラ達の超人地味た戦い(?)方に悠斗達は翻弄され。


「春樹!俺の事はいい、お前だけでも……ぐあはぁっ!」


「瑛士ー!!」


「きゃあ!背中に雪が!」


「いやぁああ、雪玉返さないでぇー!」


「俺、生きて帰ったらカノジョ作るんだ……」


「大輝!それはフラグよ!」


「そんな装備で大丈夫か?」


「双葉ぁ!?誰にむかっているの!?」


「大丈夫だ、問題ない……です」


「なんでそのネタ知ってるのミーシアちゃん!?あぁもう、ツッコミ役が足りない!」


「……凛紅、貴女疲れているのよ」


「喧しいわっ!!」


とまあこんな感じで、時は過ぎていく。


………

………

………


『はぁーはぁー、もう動けない……』


死屍累々。戦闘後のように満身創痍(精神的に)の面々が第一庭園で横たわっていた。

レイラ達は、事が終わると何もなかったかのように仕事に帰って行った(クレドは引きずられたが)。


「ああ、そうだ、みんなに渡したい物があるんだ」


『?』


唐突に悠斗が声を出した。

億劫そうに立ち上がり、魔導書のマジックチェストから小箱を人数分取り出し、それぞれに配る。


箱を開けると、そこにはアクセサリーや装飾品の魔道具が。


「いや、その、今日って地球だとあの日だからさ。用意しておいたんだ」


そう言って、何故かインターネットが軽く通っているスマートフォンを見せる。


それを見て、合点がいったようだ。


「ありがとうございます、悠斗さん」


「サンキュー、悠斗」


「大切にするね」


「ありがとう、悠斗君」


十人十色、それぞれから感謝の言葉を聞いて、悠斗は満足そうに、そして照れくさそうに笑った。


「喜んで貰えたら、何よりだよ」


「んじゃあ、俺達も渡さねーとなぁ!」


突然、大輝が声を上げる。


「え?」


「え?じゃねえよ。まさかプレゼント用意してんのが、お前だけかと思ったか?」


「全く。侮られたものね」


「私達も用意していますよ」


「……大丈夫。用意済み」


「んじゃ、そういう訳で……」


一拍。


「食堂行くぞ!」


『おお!!!』



その後悠斗達は、女子達が秘密裏に作っていたクリスマスケーキを食べ、プレゼント交換をし、大いに盛り上がった。


「それじゃあ、これまで僕達の無事を祝って……メリークリスマス!」


『メリークリスマス!!!』





次はいきなり戦闘回です。

ブクマ、高評価等、お願いします。

それでは皆さん。メリークリスマス!!!

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