異質
今回は会話メインになります
短いですがどうぞ!
※悠斗のステータスを変更しました。
※ステータス欄の魔力を知力に変更しました。
※ステータス欄に耐久と技巧の能力値を追加しました。
「………知らない天井だ」
「そりゃそうでしょ。ここは余程でなければ来ない医務室なんだから」
起きがけにテンプレなセリフを言ってみると、トゲのある声音で返信が来た。
「………あ、そうか。僕は倒れたのか」
「そうよ。あなたは宮廷魔道士クレドに挑み、見事引き分けた。引き分けっていうのは、どちらも立ち会いを中止した途端気絶したからよ。」
「そうだったんですか。ありがとうございます。治療して頂き、感謝します。ええと………」
「ミリアよ。ミリア・レイフォール。一応貴族の家の出身だけど、爵位は弱いし、家督を継げなかったから畏まる必要はないわ」
「僕は悠斗です。桜田悠斗。ミリアさん、ありがとうございます」
「いいってことよ。それがだしね。何かあったら何時でも来なさい。相談も受け付けるわよ」
「まあ、来ないことが一番だけど………」とカラカラ笑うミリアに、思わず悠斗もつられる。
「訓練の方はもう終了してるわ。あなたのお仲間が見舞いに来たけど、少し前に帰らせました。怪我の方だけど………あなた、再生に該当するスキルを持っているのね。運び終わる頃にはもう大方治っていたわ。でも無理はしないこと。怪我は治っても、ダメージは残るのだから」
「………はい、ありがとうございます」
「分かればよろしいっ!あとはもう少ししたらレイラさんが事情を聞きに来るだろうから、それまではここで安静にしてなさい」
流石に、クレドと戦った疲れなどはそう簡単には取れず、悠斗は横になることにした。その後、一分も経たずして眠りに落ちるのであった。
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「悠斗くん。レイラさんが来たわよ………って、また寝ちゃってる」
「無理もないでしょう。いくら勇者の仲間とはいえ、レベルもステータスも経験の差も大きいクレドと引き分けたのですから。それで、彼の容態は?」
「正直、異質ね。いや、特に命とかには別状は無いし、これといった大怪我もない」
「いいことではないですか」
不思議そうな顔で首傾げるレイラに、ミリアは真面目な顔で答える。
「傷が少なすぎるのよ。あれだけの戦闘して、しかも彼の場合はクレドの強化魔法をLv3まで受けた。更には属性魔法による自身の強化まで。これだけのことをして、まさかこんなにも傷が少ないなんてある?」
「確かに、言われて見れば妙ですね。この子の身体はあまりに綺麗すぎる。再生や自己回復系のスキルを持っているのでしょうか?」
「一応、それも考えたわ。でもおかしいのよ」
「おかしい?」
ますます意味が分からなくなり、怪訝そうな表情になるレイラにミリアは緊張の面差しで答える。
「再生や自己回復スキルではこんなに早く治らない。もちろん、魔法もね。どれだけレベルの高いスキルでも骨折を治すのには5分以上かかるし、全身の火傷や打撲、打ち身でもそう簡単には回復しない。この再生能力は人ならざるものの領域よ」
『人ならざるもの』、という言葉を聞いて、レイラの目が驚愕に見開かれる。
「つまり、彼は魔物なのですか?」
「そうとも限らない。獣人族の人達だって、並外れた回復力をもつ人がいるそうよ。そのように、先天性の────つまりは元々の肉体にある回復能力かもしれない」
「スキルではなく、人間の自己回復能力が強力になったもの。ということですか?」
「そういうこと。まあ、これ以上は直接見た方が早いでしょう。この子には申し訳ないけど」
「?っ、まさかっ」
その意味を理解したレイラは一瞬困惑する。この世界では他人のステータスを勝手に観るとこは御法度だ。地球で人の携帯やパソコンのデータを勝手に見るようなものだからだ。
基本的に真面目なレイラは、本当にそんなことをしていいのか悩むが、好奇心には勝てず、意を決して覗き見ることに。
「《鑑定》」
「《解析》」
レイラは《鑑定》スキルを。ミリアは《解析》スキルを使って悠斗のステータスを覗き観る。
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【桜田悠斗】Lv45 男 15歳 《剣士》
称号【異世界人】【殺人者】
【人外】【半竜人】【万喰】
【介錯人】
HP:7500 MP:2500
筋力:1200 体力:4500
敏捷:1500 知力:1000
耐久:1500 技巧:1500
加護:C
スキル
《剣術》《電撃》《雷属性魔法》
《双剣術》《限界加速》《飛燕》
《虎視》《感知》《帯電》《充電》
《竜ノ因子》《???魔法》《体術》《電光石火》《???》
魔法
『雷属性魔法』『再製』『無属性魔法』『???魔法』
捕捉
【殺人者】:理由を問わず、人殺しに贈られる称号。対人においてステータスアップ
【人外】:人を辞めた人間へ贈られる称号。概念を人から【人外】に変更する。
【半竜人】:竜の力を持つ、半端な人間。
【万喰】:物を喰らった者に贈られる称号。喰らったもの次第でステータス変動。
【介錯人】:慈悲によって、苦しむ者を殺した人間へ贈られる称号。対人でステータスアップ。
《虎視》:相手の攻撃に対して自動で反応し反撃する
《感知》:一定範囲内にある全てを感知する。熱源、罠、人、敵等、細かく分類することも可能。
《帯電》:《電撃》を付与出来る。武器でも人でも可能。
《充電》:魔力を充電し、引き出して使うことが出来る。
《竜ノ因子》:半分人間を辞めることで得た竜ノ力。ステータスと成長具合が変化し、竜の特徴を全面的に引き継いだ。
【再生能力】【自己回復】
【???】【???魔法】【???】………etc
《???》:??????????
『???魔法』:????????
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悠斗のステータスを見終わった二人は余りのショックに固まっていた。
「……………これは」
「レイラさん、あなた確か今Lv90ですよね?」
「ええ。それで筋力値は1500。体力は5000。敏捷は1600。技巧が2000。他は全部負けています。これで加護Cというのは………」
戦慄の表情で、ミリアの言わんとしていることを肯定するレイラ。
「はっきり言って、これは異常です。原因はおそらく────」
「《竜ノ因子》でしょうね。人の身を辞めることで得た力。そうしなければいけないほど、多くの修羅場を潜って来たのでしょう。何も知らずにその身ひとつでここまで生きてきたのだから」
「そうですね………」
「とはいえ、それとこれとは話は別です。ユウトくん、起きてください」
「んなっ」
「んんっ、うーん………」
唐突に話を切ると、何のためらいもなく、寝ている悠斗を起こすミリアは唖然とするのであった。
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「はあっ、大まかな事情はわかりました。ですがやり過ぎです。クレド、あなたは今月は減給。ユウトくんは私との稽古です」
言い渡される処罰に、クレドはげんなりとした様子になるが、すぐに取り直す。
「減給か〜って、おいっ、なんで悠斗の処罰はお前との稽古なんだよ!」
「ユウトくんには給料とかありませんし、勇者様のお仲間なのでご飯抜きにも出来ません。なので私との稽古です。とはいえ、私はこれでも騎士団長ですから強いですし、厳しくいきますよ。構いませんね?」
レイラの言葉に悠斗は目を輝かせる。
「いいんですか?僕、無属性魔法も習いたかったけど、前衛の戦いも教えて欲しかったので嬉しいです!」
「そ、そうですか。こ、これからはクレドと交互に魔法と剣、どちらも教えてあげるので期待しておいて下さいね」
悠斗のあまりにもキラキラ輝く視線に、思わず赤くなるレイラ。それを見て、クレドは渾身の嫌がらせを言う。
「レイラ……お前まさかショタコーーーゴヘラッ!?」
レイラの木剣と悠斗の拳が、クレドの肉体を強かに打ったのであった。
少しの間日常編と修行編になります。バトルは………ほどほどにあるので御容赦下さい




