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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
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閑話  ある人物の物語

何か書きたくなったので書きました。短いですが、楽しんで頂けたら幸いです。

 それは、別にどうということもない、平凡な人生ものがたりだ。自分がいて、家族がいて、他にも色んな登場人物ひとびとがいる。



 どこにでもいる、極普通の存在じぶん。唯一周りと違うとすれば、友達いなくて、虐められてた位。だけど、それすらも、大きな地球という世界、社会の中ではありふれた悲劇。



 受けている自分は、こんなにも苦しいのに。こんなにも辛いのに。



ーーー何がいけないの?



「分からない」



ーーー何でこんな目に遭うの?



「知らない」



ーーーどうすればいいの?



「どうしようもない」




 毎日、いつも自問自答を繰り返す。けれど、その答えが自分を救う事はない。もたらすのはどうしようもない寂寥感せきりょうかんだけ。



 もし、救世主がいるのなら、自分を助けてくれるのだろうか? そんなくだらない幻想にすがって、二次元の産物に浸った。



 努力とか、友情とか、そんなご都合主義全開のヒーロー物を見て、自分もこんな風に成れたならと、幾度も憧れた。



 夢とか、未来とか、そんな不確かなモノを嬉々として語り合い、実現していく青春物見て、うらやましいと暗い感情を抱いたりもした。



 それは、自分が持ってないモノだから。心の底から、欲しかったモノだから。



 二次元に浸かれば、一時は辛さを忘れられた。でも、現実に戻れば今まで以上の辛さ。アニメやマンガ、ライトノベルを見れば見るほど、虐めはエスカレートした。



 あるクラスメイトは、自分に向かってこう言った。



「お前、何で生きてるの?」



 自分にとって、そいつはどうでもいい奴だった。虐めの主犯、その取り巻き。虎の威を借る狐のクセに、いつも威張り散らしてた。でも、一番自分に暴行してた奴でもあった。



 弱いクセに、周りに威張り散らすその様は、実に滑稽で。でも、弱い上にそんな奴になされるままの自分には、腹が立って。自嘲気味に浮かべた笑みは相手の怒りを加速させてしまった。



「お前!何笑ってやがる!」



 ただ威張ってるだけのコイツよりも弱い自分は、当然、力では勝てないので、せめて気持ちだけでもと思い、精一杯の勇気を出して、相手を罵った。



「ッハ、自分よりも弱い奴しか相手どれない様な奴が、強者気取りすんなよ」



 予想より、効果はテキメンだったらしい。ソイツは、一瞬ポカンとした後、怒りの形相で殴ってきた。



 口一杯に血の味が広がり、頬が痛んだ。でも、その痛みが一時の恐怖を吹き飛ばしてくれた。ただ殴られるのが嫌で、腹の底から声を出して、目の前のソイツに殴り掛かった。



 反撃されるとは思っていなかったのか、回避もままならず、ソイツは自分の右ストレートを顔面に食らった。



 歯は折れていないようだが、鼻と口から真っ赤な飛沫が飛び散った。良いのを当てれたらしい。でも、ここまで。元より多勢に無勢。他のクラスメイトが一斉に来て、リンチされる。こんな暴行は、先生が駆けつけて来るまで続いた。



 「子供同士の些細なケンカ」として事なきを得た(言いくるめられた)その日の放課後。案の定、アイツがいた。友達であろう奴等もいっぱいいる。



「よう、さっきはよくもやってくれたな。そら、はぁ食いしばれ!」



 言うが早いか、ソイツが拳を振りかぶろうとした直前。声が掛かった。




「ああ、こんな所に居たのか。探したよ。さあ、早く帰ろう?」



 どこか不思議な少年だった。学年は恐らく自分と同じだろう。女の子めいた、少し華奢な少年。でも、自分はこの人の事を知らない。クラスメイトでもない。じゃあ、いったい………。




「な、なんだよ。コイツに何か用があんのか?」



「うん。一緒に帰る約束をしてたんだ。友達だもん」



「ああ?コイツに友達何て………ちっ、まあいいか。しゃあねえ。帰ろうぜ」



 そう言って、アイツは帰った。何でか不思議に思って振り向くと、少年の後ろに三人程人が増えていた。



 デカイ男子と、凛とした可愛い女子と、活発そうなショートの女子。三人とも、助けてくれた少年と仲良さげに会話している。



「ーーーあっ」




 不意に、少年が此方にきた。そのまま、右手をスッと差し出した。




「僕、桜田悠斗さくらだゆうと!君は?」



 一瞬、言葉を理解出来なかった。何せ、今まで自分と友達になってくれる人はいなかったのに。この少年はなってくれるとは、思わなかったから。



 でも嬉しくて、直ぐに差し出された手を取って自分の名前を口に出来た。



「僕の名前はーーーーーーー」




少年ーーー悠斗は、名前を聞くと嬉しそうな、満面の笑みを浮かべて再び、口を開いた。




「よろしくね。ーーーー君」




これが自分と、桜田悠斗との出会いだった。





☆☆☆☆☆☆




 振るわれた戦斧の刃が、銀閃となって駆ける。その一撃は、確かな手応えを主に与え、立ちはだかる敵に明確な死を与えた。



「お疲れ様です」



 戦斧の持ち主はクラスメイトの女子の一人から、渡されたタオルで汗を拭う。その正体は言わずもがな、地球からの異世界転移者だ。



「ーーーさん。ギルドマスターから、呼び出しです」



「そうか。じゃあ、行くとしようか」



 戦斧を担ぎ直した少年が静かに言うと、後ろにいた十名近くの少年少女達も動き出す。



 その場に残ったのは、魔物の無惨な死体だけとなった。



☆までの下りは、小学五年生位の話だと思って下さい。



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