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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
40/112

お風呂

若干閑話っぽくなります。


今回はタイトル通り、お風呂回!サービスはあるのでしょうか!?


お楽しみください。

「これは、間違いない。彼は………勇者だ」



【中立都市リーデル】の冒険者ギルドで、ある男が唸っていた。


彼はこの冒険者ギルドのギルドマスターだ。そして彼は、誰にも言えない秘密を抱えている。


とは言っても、別に彼がなんかすごい訳ではない。すごい任務を課せられているのだ。


その任務は、ある冒険者パーティーの調査。


その冒険者パーティーは、冒険者になっておよそ三ヶ月で銀等級シルバーになるという、偉業を成し遂げている。


傍から見たら、明らかに異常。しかし、ギルドマスターと四国連合は、ある仮説を立てた。


即ち、彼が召喚された異世界からの勇者なのではないか。というものである。


その真偽を確かめるため、そして、本当に勇者なら保護するために、四国連合の代表としてグワンテ王国総合騎士団長、レイラ・シグルスがやって来て、ステータスの確認、報告の任務と連絡用の魔道具をギルドマスターに渡したのだ。



確認出来たのはつい数十分前。冒険者同士の争いを見ていたある冒険者に<鑑定>スキルを使用したのだ。


「あとはこれを報告するだけだ。………なぜ勇者などが冒険者をやっているのだろうか………?」



物語は、悠斗達の知らないところで進んでいた。




☆☆☆☆☆



「はぁ〜、いい湯だな〜」


「ふぅ〜、いい湯だね〜」



異世界には『風呂』という概念があまり普及していない。


故に、宿屋などに行っても別に風呂がある訳ではなかった。


しかし、幸運な事に中立都市リーデルには、なんと大浴場があった。


風呂に入れる者など、貴族くらいなので、少しは貴族気分を楽しめるだろうと考えた都市が、建てた施設である。


とは言っても、日本の銭湯の様に、手頃な値段で行ける様なものでもないため、悠斗達とて、早々利用しない。


身体を綺麗にするなら、宿屋から、お湯で濡らしたタオルを貰ってそれで身体を拭けば良いし、なんなら、生活魔法と呼ばれるものまである。


生活魔法は、物を綺麗にしたり、少量の水を作ったり、火を熾すなどの、文字通り生活に役立つ魔法だ。


故に、悠斗と大輝は大抵生活魔法で済ませる。因みに、生活魔法を覚えているのは悠斗のみである。何故か悠斗は、沢山のスキルを覚えられるらしい。


だが、流石に女子はそうは行かず、毎日大浴場に通っている。


ミーシアは遠慮するのだが、年頃の女の子を風呂に入れないのもどうかと思うので、悠斗がちゃんとお金を渡して、行かせている。



が、流石の悠斗達も、ダンジョン帰りに風呂に入らないのもどうかと思い、大浴場に来ていた。



特に何も無い、普通の大きい浴槽にお湯が張られているだけだが、お風呂大好き日本人である悠斗達にとって、久しぶりの風呂は、何か来るものがあるらしい。



珍しく、どこか抜けた声を出して、お湯に浸かる悠斗達。心なしかなんかタレている。そのうちアイスの様に溶けるのではないかと心配しそうになる。



「風呂って、いいよなぁ〜」


「風呂って、いいよねぇ〜」



大輝がふわーっと声を出すと、悠斗がふわーっと相槌を打つ。



「あれだな、こーひーぎゅーにゅーが欲しくなるな」


「ふるーつぎゅーにゅーもとってもおいしーよぉー」



もはや呂律すら微妙だが、一応風呂上がりの飲み物を考えているようだ。


大輝はコーヒー牛乳が好きなのだが、悠斗はフルーツ牛乳が好きだったりする。



「このまま寝たらどうしようかなぁー」



「………ぐぅぅぅ………」



あまりの気持ち良さに、眠くなった悠斗が大輝の方を見ると、大輝は既に落ちていた。



「………さて、僕も寝ようかな……」



悠斗は、眠気に抗いこともできず、その意識を闇に落としていった。




☆☆☆☆☆



「………むぅー………」



何日振りに大浴場を訪れたミーシアは、とてもナイスな仕事をしてくれている湯けむりさんに紛れて、目の前の大きな壁に悩まされていた。



悩みの種はもちろんーーー



「ふぅ〜、いいお湯ね〜」


「はぁ〜、いいお湯ですぅ〜」



久しぶりのお風呂に身体を弛緩させている凛紅と双葉、それも、二人のプロポーションである。



凛紅は、剣道をやっているだけあって、とても引き締まった体つきと、なかなか、立派な胸があり、とてもスタイルがいい。


双葉にしたって、凛紅ほどではないにしろ、日々の戦闘で体はしまってきたし、自己主張の激しい双丘は、否応なしに男だけでなく、同性の目も引く。



つまるところ、ミーシアは自分の身体に自信がないのだ。


まあ、成長期真っ盛りなミーシアの身体がまだ未熟なのはしょうがないことなのだが、同じ中学の中でも異様とも言えるスタイルを誇る凛紅達に、たった三つしか違わないのに、どうしてここまで差がつくのかと悩んでしまっているのだ。



「(う〜、どうしましょう………お姉ちゃん達がスタイル良すぎです〜。

このままだと、お兄ちゃん………じゃなかった、ユウト様がお二人に籠絡されてしまいますぅ。お兄ちゃんが構ってくれなくなってしまいますぅ〜)」



悩める乙女、ミーシア。女の子の悩みは異世界でも変わらないらしい。


「(こうなったらお二人に、ユウト様をどう思ってるのか、聞いてみるのです!)」



バシャバシャっと泳ぐ要領で、スイスイ進んで凛紅達に近寄るミーシア。


お湯に浸かって半ば夢心地の女子二人に、パンドラの箱を開ける様に、禁忌の質問をぶつける。



「リンク様、フタバ様、お二人は………ユウト様が好きなのですか?」



『ごぶふぅっっっ!!』


凛紅と双葉は吹いた。文字通り、女の子には少々相応しくない音を上げて、思いっきり。


「ゴホッ、な、何を言っているのかしら、ミーシアちゃん?」



「そ、そうですよ。言っている意味がわかりません」



「………」


あからさまな誤魔化しと、露骨な反応にミーシアは、己の予感を確信する。



「私達が悠斗の事を好きなわけ………好きなわけ………な、な、………ううぅ〜言えるわけないよ〜」


凛としたお姉様キャラを跡形も無くかなぐり捨て、顔を紅潮させてお湯に顔を沈める凛紅。隣を見れば、双葉を似たような状況に………。


そんな二人の様子を気にすることも無く、ミーシアは容赦無く、質問を続ける。



「お二人は、どうしてユウト様と知り合ったのですか?」



その質問にどう答えていいか悩む凛紅と双葉。


ミーシアには、自分達が異世界から来た人間とは伝えていないため、いきなり「異世界で〜」なんて言えない。


なので、ところどころ、掻い摘んで説明する事にした。



「私はただ、悠斗と昔から住んでるところが近くて、よく遊んでただけよ」


凛紅の説明は、とても簡素で素っ気なかったが、その声には、どこか憂いが含まれていた。



「うーん、私はですね、昔はよく友達や色んな方からからかわれたりしていたんですよ」


「え、ちょっと、それ、初めて聞いたんだけど………」


双葉がいじめを受けていたという、衝撃的な事実に、思わず口を挟む凛紅。


「それはそうですよ。初めて言いましたし………………ごほんっ、まあ、そんな訳で少し辛い思いをしていたんですけど、たまたま通りかかった悠斗さんが、助けてくれたんですよ。同じクラスのみんなも、誰も助けてくれなかったのに………。

あとになって、『どうして助けてくれたんですか?』って、聞いたら、『目の前での苦しんでいる人を助けるのに、理由なんている?』って、逆に聞き返されてしまったんですよ」



そう話す双葉の顔は、どこか幸せそうな顔であった。



「まあ、そんな訳で、私と悠斗さんは知り合ったのですよ。………本人は覚えてないと思いますけど」


「………貴女も色々大変だったのね」


「(………むぅ〜、お二人とも、やはり強敵です〜)」



双葉の話を聴き終わった凛紅は、励ましの言葉を。


ミーシアは、己の恋敵(?)に対する決意を新たにするのであった。





☆☆☆☆☆





「ごく、ごく、ごく、ぷはぁー!」



乙女三人衆が恋バナ(?)に花を咲かせていた頃、悠斗達は風呂上がりの一杯を楽しんでいた。


大輝は、ごくごくと一気に。悠斗はちびちびと少しずつ。



「ふいー、やっぱ風呂上がりはコーヒー牛乳に限るぜ!」



「フルーツ牛乳だって負けないよ」



お互いに、好きな飲み物を自慢し合っていると、唐突に大輝が真剣そうな顔で悠斗に提案する。



「よし、悠斗。覗きにいくぞ」


「馬鹿なの?」



真顔でとんでもないことをのたまう大輝。なにを隠そう、彼は覗きの常習犯なのだ!


「お前、中二の時だって、覗きやらかして、凛紅達にボコられてただろうが」


「いいじゃねえか、別に。見つかったらそん時は『若かったってことだ、壁も俺達も』って言えば何とかなる!」


「お前は一体どこのグリ〇ガルの住人だよ………はぁ、僕はのぼせたからここで寝てる。覗きなら一人で行ってこい」


「ちっ、しゃーねーなっ。お前の分まで、しっかり見てきてやるよ」



そう言って、大輝はスタスタと女湯の方へ向かう。


悠斗は、関係ないと言わんばかりに、近くのベンチに横になって瞼を閉じる。



その後悲鳴と、「おま、ちょっ、待てって………ぎゃあああああ!!!」

という断末魔が聞こえてきたが、悠斗の意識は沈んでいった。


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