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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
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動き出す闇

エログロです。

パチパチと薪の燃える音が夜の静寂に響く。そよ風が吹き、それに揺られる木や草の奏でるメロディーを耳にして、悠斗はただ炎を見つめていた。


理由など無い。ただ心を無にしていたかっただけだ。幼くしてファンタジーの世界に憧れ、いつか自分もと思い始めた剣道で培った技術でひたすら無心に炎を見つめる。


しかし、どんなに無心になろうとしても邪念が混じる。あの時の記憶・・・・・・が。最近、剣を振るい過ぎただろうか。いくらかつて憧れていた異世界で生き残る為とはいえ、命を賭けた戦いをし過ぎたのではないか。そう思うようにもなっていった。


悠斗は無心を止め、マジックチェストからスマートフォンを取り出す。自分の中の衝動を振り払う為に。異世界には不釣り合いなブルーライトに照らされた悠斗の顔にはーーーー見た者を震えさせるような冷たい笑みが張り付いていた。


「………まだ起きてたの、悠斗?」


不意に声がかかり、悠斗の顔にいつも通りの穏やかさが戻る。声の主は凛紅である。戦闘後に気を失った悠斗を診ていてくれたらしく、悠斗は起きた時にジト目を頂戴した。


補足するとここはダンジョン”修練の魔境”の第二層、”森林エリア”だ。いや、森林と言うには少々語弊があるだろう。そこはまさしく”魔境”であった。空があり、山があり、森があり、川がある。所々に岩の柱もあり、冒険者であるなら心踊るような興奮に見舞われる様なエリアである。


第一層”洞窟エリア”のボス、タートルモックを倒した悠斗達はある程度全員が回復した所でゲートから”森林エリア”に移動した。森林エリアにはダンジョンなのに昼夜があり、悠斗達が着いたときには既に夜だった。なので、これ以上の戦闘は危険だと判断し、タートルモック戦闘の疲れを取る為にも野営することにしたのだ。


テントを立てて、二人一組で交代で見張りを着けているためそれなりに安全である。今はミーシアと双葉の番なのだが、二人とも疲れて眠っていた為、悠斗が代わりに見張りをしていたのだ。


「うん、眠れなくて。凛紅、君も?」


「まあ、そんなところかしら」


他愛ない会話をしながら、凛紅は悠斗の正面の切り株に腰かける。その顔からは不安が見て取れた。


「悠斗、もうあんな無茶はしないで。いくらピンチとはいえ、あんな戦い方じゃ貴方まで死んでしまうわ」


あんな戦い方とは悠斗の切り札、<電光石火>の事を指しているのだろう。あの魔法は強力だが、術者に対するリスクが高すぎるのだ。


「あはは、なるべく気をつけるよ。でも、今はそうも言ってられない。余裕が無いんだ」


「………」


悠斗が次々とスキルを会得したり、スキルによって強力な技を生み出しているには訳があった。悠斗の総合ランクはCだ。いくら転移ボーナスを得ているとはいえ、他の皆よりステータスが低いのだ。故に、悠斗が強敵と渡り合う為にはスキルで応戦するしかないのだ。スキルであれば巻物スクロールで簡単会得できるから。


少ししんみりした空気の中、今更ながらに悠斗が手にしているスマートフォンの存在に凛紅は気がついた。


「悠斗、今更だけど、今貴方が持っているのってスマホ?」


「うん?そうだけど、それが?」


「ちょっと待って、何で使えるの?ここは異世界よ。充電器なんて無いじゃない」


「ああ、それね。ほら、僕のスキルに電気を流すやつがあるから、それの威力を調整して………」


「電話はっ、電話は出来るの!?」


途端、悠斗の顔が暗くなる。電話等の連絡方法は今誰もが欲しくて止まないものの一つである。そして、悠斗の表情から察するに、凛紅の質問の答えはーーーー


「出来なかった。多少のネット環境は繋がってる見たいだけど、電話はいくらかけても繋がらない」


その言葉を聞いて、微かに落胆する凛紅。しかし、多少のネット環境はあるという謎の状況に少しだけ希望が持てた。


「ネットってユー○ーブとかも?」


「いや、精々ウィキ○ディア位かな」


異世界には似つかわしくない話が、暗い森林にこだました。



☆☆☆☆☆☆


悠斗と凛紅が話し込んでいる頃、森林エリアの奥でも動きがあった。


「クッソ、何なんだよあいつ!」


「パーテ、騒ぐな。見つかる」


「でもどうするの?あの人、凄く強いわ」


「わしらの攻撃も全部避けられるしな」


森林エリアの奥地では、とある四人パーティーが逃げていた。パーテと呼ばれた気性の荒そうな男を宥めるリーダー格の男の装備は中々に立派な物であり、その仲間の術士の女やドワーフの装備もリーダーの男のそれと負けず劣らずの物であることから、彼らが並みの冒険者ではないことが分かる。


実際、彼らは冒険者ギルドの酒場で知り合い、そのままの勢いでパーティーを結成したのだが、予想以上に相性が良く現在はパーティー全員が黒等級の冒険者パーティーなのだ。


そんな彼らは、今たった一人の男に追われている。いくら奇襲したとはいえ、黒等級冒険者を四人相手どって敵うものではない。しかし、男はたった一人で彼らを追い詰めたのだ。


「なあ、直ぐにここを離脱しよう。このままじゃ危険だ」


「んだとぉ!負けっぱなしいろっていうのーーーー」


「みーーーーーーーつっけた」


リーダーの男の提案にパーテが反論しきる前に、耳障りな声が四人の鼓膜を震わした。


「ひっ!」


「て、てめぇ、ぶっ殺してやる」


男の存在に気付いた術士の女は短い悲鳴をあげ、パーテとドワーフ、リーダーの男は武器を構えて突貫する。


「うりゃああああ!」


パーテが一番槍を務め、リーダーの男が二番、ドワーフの男が三番を仕掛ける。数多の魔物をほふってきた実力者の攻撃を男はーーー


「ケヒヒヒヒ」


奇妙な笑い声と動きで全て避けきった。


「キヒッ!」


男が手にしていた剣を振るう。すると、パーテの手足が切り落とされる。


「ッツ!!ぎゃああああ、お、俺の手が、足がああああああああああ」


続いて、リーダーの男が腹部を刺される。即効性の麻痺毒でも塗ってあるのか、リーダーの男はすぐに倒れた。


最後に、ドワーフの男は追撃しようと大槌を振りかぶったところを、首と胴を永久に分断された。


「きひ、キヒヒヒヒ」


男が奇妙な笑い声と出しながら女術士に近づく。


「いや、来ないで………!」


対する女は、腰を抜かしていて逃げることすら出来ない。


男はおもむろに女の衣服を剥ぐ。ここまでくればどうなるかは誰でも想像つくだろう。


「いや、止めて、いや、いやあああああああああ!!!」


「やめろおおおおおおおお!!!!!」


リーダーの男が叫ぶ。恐らく女術士とリーダーの男は恋仲なのだろう。しかし、男はその絶望の叫びすら天使の讃歌の様に聞こえるのか、一段と醜い笑みを浮かべて女術士をーーーーー犯した。


いったいどれ程の精力を持つのか、文字通り穴という穴を犯し、白濁とした液で女術士を汚した。


いったいどれだけの間、女術士を犯しただろうか。男は最早、絶望で何も反応せず、ただ虚ろな目を向けている女術士を殺すと、実に愉快そうに去っていった。


そこに残ったのは恋人を犯され、あらゆる絶望に呑まれた男達だけだった。

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