勝利の代償
とても短いです。すいません
体内を電撃と炎に焼かれ、剣や銃、魔法の圧倒的な数の暴力に打たれて、ついにタートルモックはその命を落とした。
誰もが未だに倒れたタートルモックの死骸を見ていた。その心情は、「本当に倒したのか?」と疑問に思っているのがありありと分かる。
そう長くない戦闘だった。いつも通り、この世界の人間よりも特別な人間である自分達が強力なスキルと凄まじいステータスで敵を圧倒するだけだろうと思い、悠長に構えていた。
しかし、この十四人のクラスメイトの中でもかなりの強さを誇る蘭藤の必殺の一撃が通じず、頼みの白刃もタートルモックの放った魔力砲によってのびていた。
僅かな時間で自分達の身体も、自尊心もボロボロにされたクラスメイト達はただ、足音を起ててやってくる「死」を甘んじて受け入れようとした。誰もが諦めた。悠斗とその仲間以外は……。
実際、自分の身体に電流を流して自身を強くするなどという方法で悠斗は見事に皆を勝利に導いて見せた。
誰もが忘れないだろう。正しく、最悪と呼べる状況の中、最弱ステータスと嘲られてきた悠斗が「奴を倒す案がある」と言ったその時の、普段中性的な顔立ちで特に目立った成績は無く、一人で読書しているイメージしかない悠斗が見せる、まるで肉食獣を思わせる獰猛な笑みを浮かべたその顔を。
クラスメイトの中でも特に自尊心の強い、白刃パーティーの面々は、たまたまダウンしたタートルモックを自分達の強力な一撃で倒したと思っているだろうが間違い無く、今回のMVPは悠斗だ。
その代償は決して小さくは無かったが………。
「悠斗、危ねぇ!」
ダンジョンの親切な大型魔物自動解体システムが発動し、タートルモックの死骸が光の粒子となり素材は皆のマジックチェストに送られる。そして当然、その上にいた悠斗は自由落下を始める。
ただし、意識を失っているのか、頭からだが……
誰よりも速く駆けつけた大輝が、悠斗を受け止める。もちろん、お姫様抱っこで。
腐女子の方には大変喜ばしい光景だろう。実際、クラスメイトの何人かが、ハアハアしている。ついでに、元々中性的な顔立ちの悠斗の寝ている姿はまるで男女の子のようだったため、ボロボロの男の娘を抱き抱えている様子に見えるこの光景を見た男子諸君が前屈みになっていた。
ただ、悠斗の容態はあまり良いものではなかった。プレートアーマーとブラウンのコートという、シンプルな装備の下は、全身に及ぶ火傷と筋繊維及び腱などの断裂を起こし、痙攣していた。
もう、見ていられなくなった双葉が回復魔法を掛ける。誰もが悠斗の回復を祈った。




