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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
28/112

決着

「みんな、ちょっといい?アイツを倒す秘策を考えた」


悠斗の言葉に場の殆どの人間は「は?」みたいな表情となる。まあ無理も無いだろう。このメンバーの中でも高い攻撃力を持つ蘭藤の渾身の一撃が全く効かず、最高の火力を持つ白刃はくばも気を失っている。無事なメンバーも満身創痍で精々、逃げるので精一杯だろう。


そんな絶望的な状況下で、クラスメイト中最弱ステータス、最低ランクと呼ばれている奴が打開策があると言うのだ。そう易々と信じられる訳ない。


「おい、桜田。お前が言いたいのは魔法とかで遠距離攻撃すればいいとか言うつもりだろ?残念ながら攻撃系後衛職は大体のびてるぜ?」


悠斗に対してそう言ったのは神川希理かみかわきりのいるパーティーのリーダー、神崎瑛士かんざきえいじだ。総合ランクはBと特別高いステータスを持っているわけでは無いが、悠斗程では無いもののそれなりのゲーム等の知識からくる中々高い指揮力でリーダーを務めている。


異世界転移組の中ではかなり温厚で他者を見下したりせず、自分の力を過信しない良い奴だ。


「違うよ神崎君。根本的的にアイツには魔法や遠距離系スキルは効かないって本で読んだことがある」


「じゃあどうするんだ?」


「今のアイツを見て。上手くダウンさせると甲羅が開いて隙間が増える。その隙間を縫って攻撃して」


悠斗がしれっと言い放った言葉にクラスメイト達は戦慄していた。自分達と同じく圧倒的な力にねじ伏せられていた悠斗が自分達が明確な”死”に怯え、絶望している間にこのピンチを打開するための活路を探していたのだ。まあ、無理も無いだろう。と言っても大輝や凛紅、双葉とミーシアは「当然、当然っ!」みたいな表情だったが。


「さて、この作戦の成功はアイツをダウンさせる僕に懸かっている。どうせ失敗しても憐れな犠牲者が一人になるだけ。最悪、僕が戦っている間に逃げればいい。どうだい、ちょっとこの作戦にのってみないか?」


まだ意識のあるクラスメイトの顔には困惑や唖然といった感情が目に見えた。

普段、大人しく教室の隅で読書をしているイメージしか無い悠斗の豹変ともいえる不敵な笑みに戸惑っているのだろう。

しかしその笑みは、不思議と安心する様なもので、白刃の号令とは違う士気をクラスメイトにもたらした。


クラスメイト達の無言の頷きを肯定と見て悠斗は立ち上がる。いよいよ、最弱(悠斗)による強敵殺しジャイアントキリングの時間だ。


「それじゃあ双葉、『痛覚麻痺ペインパラライズ』を頼む。そのあとは皆僕が合図するまでに出来るだけ回復して」


「悠斗さん、いきますよ。光をもって一時の苦痛をから解き放て、『痛覚麻痺ペインパラライズ』」


淡い光が悠斗を包み、燐光が辺りを舞う。光属性魔法Lv3『痛覚麻痺』、対象に光魔法の魔力で痛覚を一時だけ麻痺させる魔法だ。

ただし、効果が切れると蓄積した苦痛が全て帰ってくるのであまり人気の無い魔法だ。


「ありがとう、双葉。後は皆の回復を手伝ってあげて。いくよ、<電光石火>!!!!!」


瞬間、悠斗を中心に放電が起きた。悠斗が発動させたのはスキルであり技である、一種の魔法技アーツだ。

《電光石火》、悠斗のスキル《電撃スパーク》と雷属性魔法Lv1『魔力変換』を組み合わせたものだ。


『魔力変換』は雷属性魔法だけでなく全ての属性魔法にある魔法で、魔力をその属性に変えるというものだ。

つまり、火属性魔法の使い手がやると魔力が火に変わり、雷属性魔法の使い手がやると魔力が雷や電気に変わるのだ。


こうしてできた二つの電気を悠斗の体に流し込み、魔力を持った電気で肉体を覆い、筋肉を刺激することで敏捷と攻撃力を底上げするのだ。

当然、電気を体に流し込むのだから相応のリスクはある。常時肉体にダメージを受け続けるのだ。

そうなっては肉体の痛みで攻撃どころでは無い。

だからこそ、悠斗は双葉の『痛覚麻痺』に活路を見いだしたのだ。


「さあ、強敵撃破ヒーローショーの時間だ」


悠斗が呟くと同時にタートルモックがダウンから回復した。タートルモックが怒りを叫ぶ様に吠えると床に魔法陣が生まれる。そこから二体のガーゴイルと呼ばれる悪魔が召喚された。


「ギエエエエエエエ!!!」


身のよだつ様な咆哮をあげ、手にしているショートソードを振りかぶり、今だ回復していないクラスメイトにガーゴイルが迫る。


「させてたまるか!!!!」


悠斗が力強く叫ぶと同時に床を蹴り、ガーゴイルに肉薄する。あまりの速さにクラスメイト達には悠斗が一瞬で消えて、一瞬で現れた様に見えただろう。


遅れて悠斗に気付いたガーゴイルが剣を盾にしてガードするが、今の悠斗の膂力は凄まじく、剣ごとガーゴイルの腕を斬り捨てた。


「っ、はあああああ!」


【竜双剣】を振り抜いた悠斗はそのままガーゴイルに回し蹴りを叩き込み、吹き飛ばした。


「次!」


次いで、もう一方のクラスメイト達に近づいていたガーゴイルに肉薄し、剣を振る。

さすがに連続で不意討ちは出来なかったがいくらかの打ち合いの末、両腕を斬り落とし、首を撥ね飛ばした。


力なく倒れるガーゴイルを尻目に悠斗は正しく電光石火のごとき速さでタートルモックに向かう。


「《電撃》、《電撃》、くっそ!」


恐るべき速さでタートルモックの周りを走り、《電撃スパーク》で牽制する。暫くした後クラスメイト達を見ると、皆一様に準備が終わっていた。


「よし、そろそろ良いかな…………」


そう言うと悠斗は床を蹴り、高く飛び上がる。普通は見えないが、タートルモックは甲羅の頂点に隙間があるのだ。それは亜種であっても変わらない。


悠斗はその隙間に向かって飛び上がると、自由落下の勢いに乗せて剣を突き刺す。タートルモックが悲鳴をあげるがこの程度はかすり傷程度だろう。しかし、悠斗にとってはそれで十分だった。


「《電撃》!!!」


悠斗が叫ぶと、剣を伝わり電撃がタートルモックを内側から焼く。それだけでは無い、雷属性の特性は相手を麻痺させるというものである。体を内側から焼かれ、体が痺れたタートルモックは当然、ダウンする。そしてーーーー


「皆、今だーーーーーーー!!!」


悠斗が力の限り叫ぶと回復していたクラスメイト(蘭藤と白刃以外)が自分の全力を出し惜しみ無くぶつける。


「しゃああああらああああ!」


「はあああああ!!」


「うおおおおおおお!!」


クラスメイト達の得物が次々と甲羅の隙間を縫い、肉体を傷つけていく。タートルモックの魔法耐性は甲羅のみなので、甲羅の隙間に当てれば十分なダメージを与えられる。


「おおおおおおおおおっっっ!!!」


「《剣舞ブレイドダンス》!!!!」


「『光ノ刃』!」


「『フレイムレーザー』!」


特に凄いのは大輝たちの攻撃だ。大輝は自身の大剣を突き刺しスキルワード無しで《火炎ブレイズ》を発動。剣から放出された高温の炎がタートルモックを内側から焼き尽くす。凛紅も負けじとスキル《剣舞》で魔力の刀剣を三本精製し、タートルモックの全身に突き刺し、自身も必殺の連続攻撃を見舞う。


双葉は光属性魔法Lv4『光ノ刃』を、ミーシアは火属性魔法Lv3『フレイムレーザー』を無詠唱で発動。

光で形成された巨大な刀剣がタートルモックを刺し貫き、炎のレーザーが的確にタートルモックの急所を穿つ。


更に押し寄せる圧倒的数の暴力を受けたタートルモックは、いよいよもって、数分でその活動を停止させた。


ここに、巨亀は倒れた。

悠斗の機転が、皆の奮起が、このボス戦を制したのだ。


だが、それを成した少年少女達は、その事実をすぐは飲み込めず、硬直したままだった。



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