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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
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タートルモック

あけおめです。新年よろしくお願いいたします。


※魔物の強さの基準にランクを加えました。

ゴブリンでランク1、上位種はランク2。のような感じです。ランクはあくまで基準値で、個体によって指定ランク以上の強さを持ちます。

「アンギャアアアア!!!」


ダンジョン”修練の魔境”の最初のフロア、俗に”洞窟エリア”と呼ばれているフィールドの最奥。THE・ボス部屋みたいな部屋の扉を開けた悠斗達が見たのはーーーー亀(?)みたいな魔物だった。


亀といっても首は短く、胴から頭にかけて漆黒の甲羅で覆われている。ぱっと見全長五メートル、その巨体を支える太い四本足は他の部位とはどこか違う物々しさを纏っている。棘の付いた尻尾を持っていることから亀というより恐竜に近いだろう。


「アイツがこの部屋のボスだ。警戒して挑め!」


転移組のリーダーである桐生白刃きりゅうはくばが長剣とラウンドシールドを構えて声を張り上げる。クラスメイト達に緊張が走る。蘭藤と村山は自身の得物を構えて余裕そうにしていた。しかし、他のクラスメイト達はそうはいかないようだ。


当然、悠斗達のパーティーも例外ではない。特に悠斗は既にショートソードとバックラーを構えスキル

<虎視>を発動していた。悠斗が冷や汗を流して深く構えている理由はあの魔物を見た瞬間に悠斗の持つ魔導書(みたいな小さい本)に宿る人格、”アルテナ”がかなりの危機感をはらんだ声で警告してきたからだ。


『悠斗さん、あの魔物はランク7のタートルモックです。脅威度は森で戦ったドラゴンには負けますが、あのタートルモックは様子が変です。恐らく亜種だと思います。注意して下さい!』


「タートルモック………亀モドキか……」


アルテナからの警告を聞いた悠斗が静かに呟く。タートルモックのことは以前、リーデルの図書館で見たことがある。亀の様な甲羅に覆われ、恐竜の様な尻尾を持つ、正しく亀モドキと呼ぶに相応しい緑色の魔物だ。


ただし、目の前にいるタートルモックは違った。本来、緑色の皮膚と少し黒混じりの茶色の甲羅は全て真っ黒に染まっており、甲羅には清水が流れるかのごどくあちこちに延びている鮮血の様な赤い線が浮き出ている。

以前、悠斗がミーシアと出会うきっかけとなった戦闘で戦った一角狼を思い起こさせる姿だ。


「双葉、ミーシア、一旦下がって。いつもの陣形でいこう!」


悠斗が呼び掛けると双葉とミーシアが後ろに下がりその前を凛紅が、更にその前を大輝と悠斗が立つ。これがいつもの陣形だ。大輝と悠斗はどちらも壁役タンクとアタッカーを両方こなせるので、最前線に。後衛の双葉とミーシアを後ろに下げて、二人の護衛とチャンス時にいつでも攻撃出来る様に凛紅を真ん中に配置するのだ。


他のパーティーも各々、普段通りの配置に就いて構えている。そしてーーー戦闘が始まる。







まず先に仕掛けたのは白刃パーティーのモブーーーもとい、槍士である蘭藤だった。魔力で肉体を強化し、ショートスピアを持ってタートルモックに向かって突撃する。


「死ねえええええええ!<死突しとつ>!」


スキル<槍術>スキルアクション<死突>。この技は槍に極限まで魔力を込めて、その魔力を槍の先端で圧縮、槍の着弾と同時に放出することで絶大な貫通力を秘めた刺突を放つといったものだ。かなり高レベルの技で普通の魔物なら一撃で体に風穴を開ける事になるはずなのだが、現実は違った。


「ぐあっ、なっ、なんだと………俺の槍が貫通しない!」


ガキイイイイインンと甲高い音が鳴り響き、莫大な貫通力をはらんだ一撃を弾き返す。攻撃した側の蘭藤は自身の攻撃によって自分に帰ってくる反作用により槍を落として、手を痺れさせていた。


「アギャアアア!」


「なんっ、だ……ぐあっ…………………がはっ!」


当然、敵であるタートルモックには蘭藤の手の痺れなど関係ない。その巨体を震わせ、甲羅の隙間から魔力を噴射する。圧倒的な魔力の奔流を至近距離から受けた蘭藤は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。


麻弘まひろ!くそっ、よくも……!」


「白刃、援護する。お前は突っ込め!」


「すまない、広吉ひろき。頼んだ!」


パーティーメンバーを吹き飛ばされ、激怒した白刃がタートルモックに突っ込み、村山が白刃を援護する為にマスケット銃を構える。白刃が魔法技アーツを発動し、光を纏った剣を亀モドキに当ようと動いたその時。


「グウウウ……ウアギャアアア!!!」


再び、タートルモックを中心にとんでもない魔力が荒れ狂う。しかし今度は吹き出すのではなく、魔力が魔方陣に変換されていった。


「な、何が起こるというんだ……」


流石の白刃もなにか恐ろしさを感じたのか足を止め、少し後ろに下がっている。


「アギャアアア!!」


タートルモックの一声を皮切りに魔方陣に更に恐ろしい魔力が収束し、放出される。その一撃はまるで龍の息吹のようだった。魔法というよりはスキルに近い攻撃だが、まるで雷でも伴っていると錯覚する程の純粋な魔力の収束砲は通り道にあるもの全てを呑み込み、あるものは消し飛ばし、またあるものは吹き飛ばした。


無論、それは悠斗たちとて例外ではない。悠斗と大輝が全力の魔力で肉体を強化し、バックラーと大剣で肉壁になり、双葉とミーシアはとっさに自身が最速で使える防御魔法を展開。凛紅は出来る事が殆ど無いので申し訳程度にスキル<剣舞ブレイドダンス>を発動し、魔力によって精製された三本の剣をクロスさせる様に悠斗達の前に飛ばす。


それでも、タートルモックの魔力砲は全ての防御を打ち砕き、悠斗達を吹き飛ばした。悠斗達は致命傷こそ無いものの、圧倒的質量を叩きつけられて体は既に満身創痍だ。他のパーティーも同じ様な様子だ。


”死”の一文字が転移組の脳を過る。戦闘開始より約三分。その間のやり取りの結果、自分たちは満身創痍、対する敵は全くの無傷。文字通り、絶望的な戦況だ。


タートルモックが自身の巨体を震わす。恐らく、また魔力収束砲を撃つつもりだろう。最もタートルモックの近くにいた白刃を意識を失っている。いつもながら、肝心な所で役にたたない勇者だ。


いよいよ、タートルモックを中心に魔力が巡っていく、その時だった。


「あああああああ!!!」


誰もが死を無意識に許容し、動きを止めていた中、諦めの悪い絶叫が響く。皆が声の源を見ると、悠斗がいつの間にか武器を<竜双剣>に変えて、タートルモックに向かって突撃していた。


悠斗はタートルモックの足元に来ると、スキルアクション<双牙>を発動する。狙ったのはガードの薄い喉。切り裂けはしなかったが魔力砲の中止と、一時的なダウンに成功する。


「っ!これなら……」


一旦戻った悠斗はあることに気がついた。そして、戦えるクラスメイト全員に告げる。


「皆、ちょっといい?僕には、アイツを倒す秘策がある。」

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