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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
2/112

始まり

この話の主人公は身長160cm

体重52kg

趣味 読書、剣道

補足 ありふれた凡庸系主人公……(意味深)


※都合上、設定を少し変えました。

時期が二月から十一月になっています。

「うわあああ!」


桜田悠斗さくらだゆうとは叫び声をあげてはね起きた。

妙な悪夢のせいか、吹き出る冷や汗を拭う。未だ、ドキドキと心臓が動いている。


しかし残念なことにじっとはしていられない。今の時間は朝の7時20分。そろそろ家を出なければ学校に間に合わないのだから。

朝食を早めに済まし、手早く身だしなみを整え、制服に着替える。

 如何に男子といえど、身だしなみに気を使わない時期はもうとっくに過ぎ去った。最低限の意識くらい気を付けなければ、クラスの影、或いはいじめられっ子確定だ。

 なんやかんやで準備を終わらせた悠斗は足早に家を飛び出し、学校へ向かった。


時期は十一月の後半。一向に暖かくなる気配を見せない寒気は、朝の空気にかなりの寒さをもたらしている。

 秋物とはいえ、防寒着を貫通して肌を刺してくる寒さには、悪態しか出てこない。……せめて雪でも降っていたら、趣があるものだが。


 冬場のかさついた空気を一身に受けて、くだらないことを考えながら学校までの通学路を急ぐ。

 別に冬自体は嫌いではないが冬の朝と風は嫌いだ


 朝はとにかく眠いし、何より寒すぎて布団から出たくなくなる。

 風はとても冷たくて、どんなに足掻いても布で覆えない部分――—――—顔が痛いのだ。

そんな冷えきった学校までの道のりを悠斗は走って火照った体で駆け抜ける。


 とは言え、だ。

 こういう場合、敵は何も眠気とか朝一のだるさとか、貧弱な体力とか、そんなのだけじゃなかったりする。 


「最悪だ……よりによってこのタイミングでなんて……」


 そう、公共交通機関や信号だ。

 悠斗は遅刻しそうな現段階で最も最悪な状況にかち合ってしまった。

 急ぎたい、けど何もできない。どうしようもないもどかしさに無駄に足踏みしてみるが、そんなことしたところで慰めにもならない。


 結局、悠斗が学校に到着したのは二十五分後。

つまり、遅刻ギリギリ五分前であった。



「もっとはやく家出てれば良かった…」と内心悪態を付きながら、登校で疲れきった体を引きずり席へ倒れ込むように座る。

 流石に朝っぱらから全力長距離走はしんどい。

 今朝見た夢のせいで寝つきが悪く、若干の睡眠不足もたたってか、非常に眠い。おそらくちょっと気を抜いただけで即寝落ちしてしまうだろう。

 特にも、悠斗の席は窓側にあるので、焚いてある暖房が直撃したりするのだ。寒い教室に温かい周辺、走って疲れた身体、ここまで条件が揃えば、最早眠ってくださいと言っているようなものだ。


 まあ、ホームルームまでは少し時間があるので、担任教師が来るまでちょいと寝るのも悪くはないかと思い、机に突っ伏して寝る準備をした、その時であった。


ふと廊下側の方に目が行った。もうすぐホームルームだと言うのに喧しく騒いでいる人だかりが、今にも眠ろうとする悠斗視界に入った。

よく見るとその中心にはクラスの人気者、桐生白刃きりゅうはくばの姿があった。


桐生白刃はこのクラス、いやこの学校のスターとも言える存在だ。


容姿端麗、成績優秀、頭脳明晰、高身長……。


そして生徒会長を務めていて、既に引退したとはいえ、未だ後輩から頼られている。

そのうえ、運動も出来て、各部活から助っ人としてひっぱりだこ…となれば、もちろんモテる。


しかも優しい性格のため、そのことを誇示せず告白された際には、やんわりと断り、自分たちの友達グループに引き込み仲良くするなどアフターケアも万全である。

そのため男女問わず人気がある。

 一体どこのアニメ漫画世界の住人だよと突っ込みたくなるほどの高スペックで、しかも嫌味のない性格なのだから当然といえば当然であるが。


ラノベにどハマりし、自分も強くてモテるかっこいいラノベの主人公みたいになりたいと願ってみたりするが、友達は少なく、中学三年生にしては小柄で、ルックスはまあ悪くないのでは程度。

 運動が抜きんでて得意であるわけでもなく、せいぜい少し剣道と格闘技をかじったくらいだ。成績も頭脳も平均並で特に優しいわけでもない自分では、どちらの方が主人公か、なんて一目瞭然であった。


……ここまでくると、最早嫉妬する気すら起きないのだから不思議である。



 まさしく天が二物を与えた存在の化身を見て、現実を思い知った少年はどこか虚ろじみた瞳を彼らから外し、今度こそ眠りに就こうとする。



 波は無く、常に直線。大きな変化も停滞もなく、それでも時はゆったり流れる。

 これから悠斗たちは『あたりまえ』の平凡を生き続け、大きなうねりに見舞われることなく、ほとんどロールプレイと化した人生を歩いていくのだろう。

 悠斗は当たり障りのない会社に就職し、どこにでもいる会社員を、特に何の感慨もなくこなしていくだろう。 

 白刃なら、いい会社に就職して、当然そこでもモテて、最後は可愛い彼女を手に入れて、順風満帆な生活を送るのだろう。


 誰もが簡単に想像つく、ありふれた行く末。

 だからこそ、誰かは心から思ったのだろ。


『ほんと、クソつまんねぇ世界だ……』


 、と。


 そして同時に、こう思うのだろう。


『ああ、なんか面白いこと起きねぇかな』


 、と。


 それは誰でも持ちうるものであり誰にも否定できぬもの。

 だからこそ、彼らにはこう言わざるを得ない。


『本当に、不運だな』


 、と。


……

……

……



それは朝のホームルームが始まる少し前のことだった。


何も変わらない、平和な日常。


ある者は永遠にこのひと時を思い、またある者は退屈な今にスパイスを求める。


この狭い教室で誰かが祈った。


『この幸せが永遠に続きますように…』と。


まるでこのあと何が起こるかを知っているかのように…。


しかしその願いは儚くも幻想となる。


  なにせ、もう賽は投げられたのだから。



……

……

……



その時悠斗は奇妙な感覚に襲われていた。


強い眠気のような、気持ち悪さのような……そんな感覚。


それは他の人にも同様のようで、何人かは既に頭を抑えたり、机に伏したりしている。


そこまで見たところで悠斗もこの奇妙な感覚に耐えきれず、悠斗の意識は闇のなかへと沈んでいった…………。



本格的なファンタジーはもう少ししたら始まります…。

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