閑話 悠斗の努力
閑話です。よってあり得ない程短いです。ご了承ください。
”中立都市リーデル”の一角。リーデルで一番大きな冒険者向けの宿屋、”アドベの宿”の庭にはまだ早朝であるにも関わらず自身の得物である日本刀で素振りをしている凛紅の姿があった。普段は長い髪を後ろでまとめているのだが、今はポニーテールにしている。
「四百九十八、四百九十九、五百!」
地球にいたころは千回以上素振りをしていた凛紅にしては少ない方だが、木刀と真剣の重さは違うためなかなか、数をこなせずにいた。
ふわっと髪が拡がり飛び散った汗が昇り始めた朝日の光を反射して凛紅の周りを輝かせる。構えを解き首に掛けていたタオルで汗を拭く凛紅の耳に声が聞こえてくる。男の声だ。気になって凛紅は声のする方向へ向かう。
「せい!ハア!せや!ふっ!はっ!」
そこにいたのは悠斗だった。少し前に購入した<竜双剣ドラゴネス>を持ち、一心不乱に振り続けていた。それもただ振っているのではない。”スキルアクション”と呼ばれる、技を使っていた。
”スキルアクション”とは”スキル”が肉体を補佐して放つ特別な攻撃である。”スキル”による補佐を受ける為、悠斗の<電撃>や凛紅の<剣舞>といった”攻勢スキル”の様に発動するのに魔力を必要とするが、その分強力な攻撃が放てる。余談だが”スキルアクション”を覚えること事態は簡単である。覚えようと思えば誰かに師事を仰ぐもよし、書物を見て覚えるのよしである。
今、悠斗が放っている”スキルアクション”は<双剣術>の二連撃<双牙>、六連撃<六連双牙>、十連撃<花吹雪>。それらを順番を変えたりして連続で撃つ練習をしている。おそらく”スキルチェイン”と呼ばれる技を練習しているのだろう。
”スキルチェイン”とは名のとうり”スキル”や”スキルアクション”を連続で行う技術である。なかなか高度な技術だが、異世界で、それも冒険者として生きていく以上必要な技術だと悠斗は思っている。ちなみにこの事は悠斗のパーティーメンバーである大輝、凛紅、双葉には教えてあるが白刃や他のクラスメイトには教えていないし、知らない。悠斗は皆この事を知っていると思っているので伝えていないが、いきなり強いステータスやら”スキル”やらを手に入れた他のクラスメイトは、情報収集の大切さを知らない。それどころか、自身の強さを過信して一部を除き鍛練等をせずただ自堕落な生活を送っている。
悠斗は魔力が切れたのか練習を中断し片膝をつきながら呼吸を整える。そして今度はいつ買っていたか分からない、刃が潰された如何にも重そうなロングソードをひたすら素振りし始めた。魔力が切れるととんでもない倦怠感に襲われる筈なのに悠斗はそれでもロングソードを振り続けていた。
凛紅はその様子をどこか嬉しそうに見ていた。”あの日”から悠斗は剣道に対するやる気を失ったのではないか等と思っていたので悠斗の必死な努力を見て思わず凛紅の頬が緩む。凛紅の視線に気付かずある程度の数を振った悠斗はロングソードを”マジックチェスト”に仕舞うとそこまま仰向けに倒れてしまう。
「悠斗!」
倒れた悠斗に急いで駆けつける凛紅。悠斗の方は魔力の枯渇と素振りによる疲労で顔を青くしていた。
「り…んく?」
「ちょっとあなた顔真っ青じゃない!今部屋に運ぶから。」
「ゴメン…見苦しい所を見せてしまって。」
「見苦しくなんかない。あなたは立派よ。だから今だけは休んで。」
「それは良かった」と言って悠斗は気を失う。その顔はどこか安心した様にも見えた。
凛紅はそんな悠斗を微笑ましそうに眺めると急いで部屋に運ぶのであった。
女の子キャラが少ない…。もう少しすれば出てくるのでお待ち下さい。




