第8話 悪意と落ちこぼれ
相変わらず短いですかー。
「んんっ…ん…」
悠斗が目を醒ますと、真っ先に視界に入ったのは若干涙目になっている凛紅だった。何故か凛紅との顔の距離が近いうえに後頭部が柔らかいものの上にあることから察するに、膝枕してくれていたのだろう。悠斗はその事に気付くと慌てて体を動かし、凛紅から距離をとる。
「あ、あの、その…ありがとう凛紅。僕はいったいどれくらい気絶していたの?」
顔を真っ赤にして慌てている悠斗に凛紅は少し不満そうな顔で答える。
「ほんの五分程度よ。いったいなんで急に倒れたのよ」
「あ、たぶんそれはゲームとかで言うところの”魔力切れ”だと思う」
「魔力切れ?」
「うん。オーガとの戦闘中よくわからないけど、頭に浮かんだ魔法を使ったんだ。多分それがかなり魔力を持っていったんだと思う」
「ふーんそう。それによりなによ、せっかく膝枕してたのに慌てて動いちゃって。迷惑だった?」
若干上目遣いで尋ねる凛紅に悠斗は再び顔を真っ赤にして慌てて否定する。
「い、いやそんなことないよ。ただ、凛紅みたいな美少女に膝枕してもらうのは僕にはとんでもない事だから焦っちゃって」
「美少女…ふ、ふーんそう、まあ無事で良かった」
今度は凛紅が顔を真っ赤にした。悠斗が凛紅にありがとう、と言うと凛紅は顔をぼんっ!と言いそうなほど真っ赤にして「うにゃー…」と言いながら倒れた。
大輝が「お、目が醒めたか」と言いながら近付き、双葉がその後ろを追う。
「おう、お目覚めか悠斗?」
「あ、あの、悠斗さん大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だよ、大輝。安木さんもありがとう」
心配して自分の下へきてくれたパーティーメンバーに感謝していると…
「双葉で……」
「どうしたの安木さん?」
悠斗が声を掛けると双葉が意を決したように顔をあげ、悠斗に訴えかける。
「ですから、私の事は双葉と呼んでください!柏村君や秋雨さんは名前なのに私だけ名字ですし、一緒に戦っている仲じゃないですか。他人行儀は止めて下さい」
いつになく真剣で強く出た双葉に驚く悠斗達。双葉はそれを怒りと感じたのかおろおろしながら謝る。
「あ、あの、すいません。私なんかが偉そうな事言っちゃって……」
「ううん。ありがとう、ふ、双葉」
若干戸惑いながらも双葉を名前で呼んだ悠斗を見て大輝と凛紅は────
「なあ、悠斗ってラブコメものの主人公みたいだな」
「………そうね」
遠い目をしていた。
「まあ何はともあれそう言うことなら私達のことも名前でよんで頂戴、双葉」
「り、凛紅ちゃん…ありがとうございます!」
「ふふふ、どういたしまして」
この一件でかなり仲良くなれた四人は取り敢えず少し先で話している白刃達の下へ行くことにした。
白刃の周りは人の輪が出来ており、白刃を中心に内側を女子、外側に男子といった状態だ。これでは話し合いと言うよりヒーローインタビューだ。白刃は悠斗達に気付くとなんとか皆を落ち着かせて話し合いを始めた。
「さて、これからどうするかについて話し合おうと思う。誰か意見のある人はいるかな?」
誰も何も言わない。ただでさえ謎の状況で、さっき死にかけたのだ無理はない。むしろこの状況でまともに戦える悠斗達が異常なのだが……。
仕方ないと、内心ため息をつき手を上げる悠斗。
「悠斗君、何かあるかな?」
「うん。マップ上、森の端にきても何もないんだったら真ん中に行ってみればどうかな。ゲームとかじゃテンプレだし」
悠斗の言葉に何人かのクラスメイトは「ふざけるな」、「これはゲームじゃ無いんだぞ」と批判の声が上がるが、白刃がそれを止める。
「何も意見が無いよりましだよ。それに、オレも行けるのはあと真ん中しかないと思う。皆も他に意見は無いようだし賛成ってことで言いかな?」
まあ白刃の考えならいいか。と言わんばかりにクラスメイトは引き下がる。
「次はこの森から全員で生きて出るために、お互いのステータスを確認しようと思う。まずは俺からだ」
ちなみに白刃、悠斗、大輝、凛紅、双葉のステータスを見るとこうだ。
☆☆☆☆☆
【桜田悠斗】
Lv10
《剣士》(1/10)
称号 【異世界人】
HP:70 MP:60
筋力:80 体力:80
敏捷:70 知力:60
耐久:45 技巧:80
加護:C
スキル
《電撃》《剣術》《雷属性魔法》
魔法
『雷属性魔法』『再製』
補足
《電撃》:中威力の電撃を放つ。確率で相手をスタンさせる。
《剣術》:剣を使う際に補正。また、剣のスキルアクションを使える。
《雷属性魔法》:雷属性魔法を扱える。
『再製』:一度見たもの、構成を知っているものを無から作り出せる。
☆☆☆☆☆
【桐生白刃】
Lv10
《剣士》(1/10)
称号 【光の勇者】【異世界人】
HP:200 MP:200
筋力:140 体力:200
敏捷:140 知力:150
耐久:150 技巧:140
加護:S
スキル
《聖光》《光の勇者》《剣術》《神聖魔法》
魔法
『火属性魔法』『水属性魔法』『土属性魔法』『光属性魔法』『雷属性魔法』『風属性魔法』『神聖魔法』
〇補足
《聖光》:聖なる光の玉を操り、そこからレーザーのように撃ち出す。
《光の勇者》:闇以外の属性魔法に適正。ステータス補正(極大)。対魔物戦闘補正(極大)。経験値補正(極大)。
《神聖魔法》:神性を与えられし聖なる力を操る魔法を扱える。
☆☆☆☆☆
【柏村大輝】
Lv10
《剣士》(1/10)
称号 【異世界人最強の脳筋】
HP:250 MP:100
筋力:130 体力:120
敏捷:70 知力:25
耐久:150 技巧:40
加護:B
スキル
《火炎》《火属性魔法》《剣術》
魔法
『火属性魔法』
補足
《火炎》: 火炎の玉を放出し、対象を燃やし尽くす。
《火属性魔法》: 火属性魔法が扱える。
☆☆☆☆
【安木双葉】
Lv10
《支援術士》(1/10)
称号【癒しの天使】【異世界人】
HP:100 MP:300
力: 30 体力:30
敏捷:40 知力:200
耐久:40 技巧:140
加護:A
スキル
《治癒師》《物理耐性》《魔法耐性》《魔力回復》《杖術》
魔法
《光属性魔法》《神聖魔法》《治癒魔法》
補足
《治癒師》:【光属性魔法】、【神聖魔法】、【治癒魔法】に適正、【魔法行使時の威力、効力の増加】、【魔力自然回復(中)】
《物理耐性》:物理攻撃のダメージを減少。
《魔法耐性》:魔法攻撃のダメージを減少。
《魔力回復》:使用すると一定量の魔力が戻る。連用は不可能。一度使うとクールタイムが必要である。
《杖術》:杖、錫杖、棍などの使用時に補正。スキルアクションが使える。
《光属性魔法》:光属性魔法を行使出来る。
《治癒魔法》:治癒魔法を行使出来る。
☆☆☆☆☆
【秋雨凛紅】
Lv10
《剣士》(1/10)
称号 【大和撫子】【異世界人】
HP:120 MP:80
力:90 体力:100
敏捷:160 知力:80
耐久:50 技巧:160
加護:A
スキル《剣舞》《異世界の剣豪》《剣術》
魔法
なし
補足
《剣舞》:三本の剣を召喚し、自在に操る。
《異世界の剣豪》:【身体能力強化(極)】、【刀剣装備時ステータス強化(極大)】、【格闘術】、【???】
☆☆☆☆☆
以上の通りである。アルテナによるとその時のステータスと加護は関係なく、その人のスキルや才能等では決まる。加護は上からS、A、B、Cとなっている。ちなみに他のクラスメイトも全員加護:B以上のために、今のところ悠斗が一番低ランクである。
そこで面白がって突っ掛かってきたのは白刃を除く男子勢であった。
「なんだ~桜田?お前、加護とかいうので一人だけCランクじゃねーか。なあ、落ちこぼれ君?」
「よく見りゃお前のいたパーティー、お前の意外超強ええじゃねーか。秋雨さんや双葉ちゃんみたいに強かったり、特別な人間は俺たちのパーティーで白刃や俺たちと一緒の方がいいに決まってんだろ?足手まといは一人で必死こいていやがれってんだ。」
「しかも何だよ称号が”異世界人”とかマジ受ける」
「ははは、確かに!」
悠斗はあまり人付き合いが上手くなく、クラス内ではいつも孤立していた。
そんな奴が自分達のピンチに学校で天使と崇められている女子二人と学校で喧嘩最強と言われる奴と共に現れ、ある意味主人公属性の白刃より主人公らしく戦い、勝利に貢献したのだ。
普段から悠斗を見下してきた男子たちにとっては屈辱でしかなく、ついかっとなって高圧的になってしまった。
そんな命の恩人に対する余りにもあり得ない態度に白刃が注意しようとし、大輝が先の発言者に対して殴ろうと決意した瞬間、凛紅が大声で怒りを示す。
「あなた達、いい加減にしなさい!悠斗が落ちこぼれ?足手まとい?ふざけてるの?ステータスやランクでは確かに弱いかも知れない。けれどもあなた達と違って悠斗は戦ったわ。本当に強いパーティーに寄生してるだけの奴があんな化け物相手に正面きって戦えると?それに、悠斗は私達のパーティーのリーダーよ。バカにする事は許さない!」
いきなり声をあらげて悠斗を庇いだてする凛紅に場が一瞬硬直する。
なんとか我を取り戻した男子の一人が焦った様に口を開く。
「え、なになにこの空気。何で秋雨さんがあんな落ちこぼれ君の味方をするの?」
「あ、あの、そのこと何ですが、あなた方は私達を特別と言いましたが、それは悠斗さんの方だと思います。確かに私は特別な”スキル”を持っていますが悠斗さんはそれがありません」
「そうだろう!だからあいつは落ちこぼれ………」
双葉の思いもよらない言葉に男子の一人がたじろぐ。
「いえ。むしろ持って無いのに悠斗さんは勇敢に敵に立ち向かい、私達のパーティーのリーダーをつとめてくれています。ですから悠斗さんを落ちこぼれ呼ばわりするのは止めて下さい」
凛紅と双葉、二人の言葉に発言した男子二人は完全立場を失い、我らがリーダー白刃に助けを求める。
「な、なあ白刃。お前からも何か言ってやれよ」
「村山、蘭藤。お前ら、悠斗君に謝れ。ステータスがどんなでも、オレたちを助けてくれた事に変わりは無い。そんな彼を感謝どころか罵倒するお前達にオレたちの友達やパーティーメンバーを名乗る資格はねえぞ」
有無を言わさぬ謎の威圧感に男子二人改め村山と蘭藤は「ひっ」と悲鳴をあげて渋々と言った様に悠斗に謝る。
謝罪を受けた悠斗は今まで伏せていた顔を持ち上げる。そしてその顔を見た場の皆が硬直する。
そこにあったのは怒りでも、辛みでもない、微かな微笑。
その瞳に光はなく、映し出すのは桜田悠斗という人間の闇。
それは明らかに、見た者にある種の恐怖を抱かせるものだった。
「今はこれくらいにしておこう。さあ出発だ」
この空気を何とかしようと、白刃が奮戦し、何とか雰囲気を変えれたが、クラスメイトの脳裏に浮かぶ不安は消えなかった。
間違いなどの指摘をお願いします。




